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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
プロローグ、裏切りの少女
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裏切りの少女、エビルニア

書きたいことが多すぎるため、ひとまず投下することにしました。

今回の主人公はかなり臆病な性格ではありますが、時間と共に大きく変っていく主人公です。

臆病な自分に負け、愛する人を自らの手で葬ってしまった魔王の娘は

人として、新たな人生を歩み、人として成長していく物語…と、なっております。

かなり完結まで時間が掛りそうですが、どうぞお楽しみに。

視界が赤く染まった…ほんの一瞬で。

全て、私がこの手で行なった事だ。

目の前に転がっているのは、かつて…私が愛していた勇者様。

その周りに倒れているのは、その仲間達。


そんな死体の真ん中に立ち、返り血で真っ赤になり

小さく俯いているのが…彼らの仲間として同行し

勇者様を愛し…自らの死を恐れ、自分だけを選んだ愚かな娘。

魔王の娘…エビルニア・ヒルガーデン…

愛を信じたいと嘯きながら、死の恐怖に屈した裏切り者。


「ふ、我が娘よ…そう落ち込むな。お前は正しい選択をしたんだ」

「……」

「愛など、死の恐怖の前では無力よ」


魔王が死ねば…私も消えてしまう。

その事実を知っておきながら、私は勇者様に付いていった。

魔王の娘だと気付きながらも、寄り添い…共に進んでくれた仲間達。

その仲間達を…私は裏切った…死の恐怖に屈した。

そして…この手で仲間達を全て…屠った。


「さぁ、我が元へ戻れ、エビルニア、本来なら罰を与えるところだが

 お前は良い活躍をしてくれた。姉妹達を一時的に屠ったのは怒るべき所だが

 敗北した者が悪いのだ。奴らにも私が話をしておいてやろう」

「……はい、お父様」


倒れている勇者様達の死体を見ながら、私は父の元へ進んだ。

そう、私はただの裏切り者…臆病で恥知らずの臆病者だ。

ただの気まぐれで冒険して、一目惚れして、愛を信じたいと嘯いて

結局は恐怖に屈した、ただの魔物…私はもう人に憧れる資格は無い。

私は魔物…ただ自分自身の為だけに生きる…魔物。


「勇者の死亡は人間共には強烈だったようね。

 本当、良くやってくれたわね、エビルニア。

 1人じゃ何も出来ない、姉妹の中で最も弱いあなたがね。

 ま、良くやったわよ。愚かな勇者に取り入って裏切り殺すなんて

 力の無いあなたが出来る、最善の手ですもんねぇ?」


私が勇者様を殺して、1年の時が過ぎた。

人類は1年前よりも私達のお父様の手により追い込まれている。

魔物を生み出し、ひたすらに国を滅ぼしている。


必死に戦って、死んでいった人間を何度も見た。

必死に逃げ惑う人間達を殺している魔物の姿も見た。

そんな人達を貶し、足蹴にして居る私達…私は


「……」


私は魔王の娘、5人の中で私は最も魔力が少ない。

攻撃も満足にこなせない落ちこぼれ。

最も魔力が高い次女のテイルドールお姉様は私を嫌っていた。


私達にはそれぞれ特性が存在していたけど、私には目立つ特性は無い。

テイルドールお姉様は無尽蔵に魔力を作り出す無限性の特性があった。


「チ! むかつくよなぁ!」

「うぅ!」


三女のミルレールお姉様も私の事を嫌っていた。

力の弱い四女の私の事を嫌っている。


ミルレールお姉様は魔法を殆ど使えない代わりに

異常な程に高い身体能力を持っているし

一定数の魔力を消費する魔法攻撃以外を無効化できる。


魔力精製の分を全て身体強化に回しているんだと思う。

ちょっとした未来も見えるほどに五感も第六感も鋭い。

流石に未来予知は連続では見れないみたいだけど…


「もう1発行くぞゴラ!」

「止めなさい!」


長女のブレイズお姉様は私の事を庇ってくれる。

姉妹の仲で2番目に私の事を大事にしてくれてるお姉さんだった。


ブレイズお姉様は姉妹の中で最も高い不死性を持っていて

防御力が非常に高いという特性がある。

物理的攻撃も魔法攻撃にも高い防御力がある。

それに攻撃を反射するから、本当に強い。

だから、ミルレールお姉様とテイルドールお姉様もブレイズお姉様に従う。


「ミルレールお姉様…よくもエビルニアお姉様を…」

「うげ…」

「レイラード、止めて」

「…エビルニアお姉様がそう言うなら」


末っ子のレイラード、彼女はどういうわけか私の事を異様な程に慕っている。

彼女は姉妹の中で最も才能に溢れているのに、何故落ちこぼれの私を慕うのか

それはあまり良く分からなかった。


レイラードの特性は欲望を満たせば満たすほど増大し続ける潜在能力だった。

欲望が満たされ、満足する度に魔法、魔力、身体能力が永続的に増え続ける。

将来性が恐ろしいから、私達姉妹はレイラードを警戒していた。


だって、私達は基本的に成長という概念がないから。

それなのに、レイラードだけは成長という概念が存在してる

将来性が恐ろしいと言うのは珍しいタイプだと思う。

そんな彼女が、何故私を慕うのかというのは本当に謎だった。


「……」

「エビルニアお姉様?」

「あ、何でも無いよ」


……あの日以降、私はどうしてもずっと割り切れないで居た。

仕方ない事だって…もう終わったことで、変えられない事って分かってるのに。

それなのに…私は…私はずっと…ずっと悩んでいる。


ずっと後悔してる。どうして…私は勇者様を裏切ってしまったんだろう。

あの人はあんなに優しくて…でも、私は死の恐怖には抗えなかった。

色々な人の死を、勇者様と冒険している間に見ていた。


恐怖に怯え、惨めに命乞いをしながらも魔物に殺された人も見た。

勇敢に仲間の為に魔物に挑み、命を落とした人も見た。

色々な死を見ている内に、私は死に対し、どうしようも無い恐怖を覚えるようになった。

消滅…消えると言う事が恐ろしかった。


「雑魚共がまた湧いてきたようだぞ?」

「あ」


お父様が私達の城に攻め込んできている人間達を映し出した。

だけど、人間達は城を守る魔物達に手も足も出ず全員倒される。

それでも人間達はひたすらに城へ向って突っ込んできている。

目の前で死んでいく仲間達の姿を見て…更に泣きながらも突っ込んでくる人間も。


「ふ、人間共は無駄な足掻きが好きなようね。大人しく震えていれば良い物を。

 何故奴らは自ら命を散らしに来るのでしょうね? 理解に苦しむわ。

 そんな行動、全て無意味だというのに」

「全くだ、他者の為に戦おうなど、実に愚かで無意味な行動だ」


……愚かで無意味な行動…本当に…無意味…全部無意味?

あの勇者様がして居たことも愚かな行動だったの?

誰かの為に戦おうとしてた…あの勇者様の行動も。


(皆! ここは俺に任せてくれ!)

(で、でも! 数が! いくら勇者様でも無茶よ!)

(そんなの、やってみないと分からないだろ? 

 俺は魔王に怯えてる人達を守る! それが俺が戦ってる理由!

 仲間も守れないんじゃ、勇者の名折れだしな!)

(そんな事をして…勇者様が死んじゃったら!)

(そん時は、お前らの内、誰かが魔王倒してくれよな!

 辛い思いしてる人達、絶対助けようぜ!)


……私が本気で勇者様に惚れたのはこの瞬間だったのかもしれない。

最初は一目惚れで、見た目だけで惚れて…でも、あの時

魔物達に包囲されたときに…私は本気で勇者様に惚れたんだと思う。


(…駄目だよ、魔王を…倒すのは…勇者様の役目だから!)

(な、お前、その姿…)

(今まで黙っててごめんなさい、私は魔王の娘…エビルニア・ヒルガーデン。

 この戦いの後…私は死ぬ覚悟だってあるけど、今はあなた達を助けさせて!)


……自分自身の正体を見せて、その時は皆を助けた。

最初、勇者様以外は私の事を敵対視していたけど

いつか勇者様の意思に押されて仲間達も私の事を受入れてくれてた。

それなのに、それなのに私はあの時…あの時、勇者様を…皆を裏切った。

そして今も、のうのうと生きてる…あんな大罪を犯したのに、私は!


(そん時は、お前らの内、誰かが魔王倒してくれよな!)


……死ぬのは…恐い、凄く怖い、自分自身が消えてしまうなんて恐すぎる。

でも…それでも…それよりも恐い事…今、気付いた。

このまま何もしないで生き続けることだ。勇者様に心を救われたのに。


何も感じなかった私の心に、こんな思いを与えてくれた。

後悔という感情だって、きっと前の私には出て来なかったはずだった。

辛いって思う事も楽しいって思う事も無かった私の心に光りを与えてくれた

私はそんな勇者様を裏切った…そして、そのまま生きていくなんて…私には無理だ。


それなら、死んだ方がマシだ! 罪滅ぼしじゃない。

ただ…勇者様の意思を継ぎたい…その意志を断ち切った私が言うのも変だけど

私は勇者様の意志を継ぐ……もう、逃げない。


「……お父様」

「ん? 何だエビルニア」


お父様が1人の時を狙うしかない…姉妹達とお父様と同時に戦うのは無理だ。

そもそも、1対1で戦っても勝てる見込みはまず無い…だけど、やるしかない。


「……」

「その目…反抗的な目だ、その瞳の奥にある決意…前までのお前にはなかったな」

「私は、勇者様と接して、人間の行動が無駄じゃないって信じたいと思った」

「その勇者を殺したのはお前だ」

「そう、あの時、私は恐怖に屈した…でも、もう屈しない!」


お父様相手に手加減なんてしたら、すぐに殺されてしまう。

だから、最初から私自身の最高の技を叩き込むしか無い。

一切の加減無しに…最大火力を! 勇者様の…願いを叶えるために!


「エビルニア、そんな事をしたところで、お前には何の得もない。

 人間達に称賛されることもない。ただ姉妹共々消えるだけだ」

「……それでも!」

「そもそも、お前程度に私を倒せると思うのか? エビルニア。

 姉妹の中で最も力が無いお前が私に敵うと?」

「そんなの、やってみないと分からない!」


私が行使出来る全ての魔力を解放。

自分自身の背後に過去最大の魔法陣を呼び出した。


私は自分が倒した相手の魔力を吸収して自分の物に出来る。

勇者様達を殺したことで勇者様達の魔力を吸収していた。

それが理由で、私はこれだけの魔法陣を呼び出せた。

だから、この力は勇者様達の力だ。


「な…お前の何処にそれ程の力が!」

「勇者様達の力を込めて! ワールド・エンド!」

「やめ!」


私が放った最大の技はお父様に直撃した…

でも、やっぱり私はこの土壇場でも…何処か根性無しなんだ。

姉妹共々消えるだけ…その言葉を聞いた瞬間に少しだけ決意が鈍った気がした。


「……そんな…」

「見事…だ、我が娘よ…だが、少し手を抜いてしまったな?」

「……」


お父様を瀕死まで追い込んだ…けど、私が放った最大の技は

少しだけ照準がズレ、お父様を完全に倒すことは出来なかった。

お父様は高い再生能力を持つ。これ程の重傷を負ったとすれば完治まで

早く見積もっても200年は掛ると思う…けど。


「あ…ぅ…」

「もう、身体を動かす魔力も無いのか。最悪の技だな。

 どうやら、私はお前を過小評価していただけだったらしい。

 お前は姉妹の中でもトップクラスの実力を持つ。

 魔力量が少ないと言う弱点がなければだがな」


もう…身体を動かす魔力も…意識を保つだけの力も無い。

身体も少しずつ消えて行ってる…そう、私は死ぬんだ。

結局、勇者様の意志を継ぐことは出来なかった…


「私の魔力を渡してやろう。そうすればお前は他の姉妹達を超えられる。

 死ぬのは恐いだろう? さぁ、私を受入れるのだ。

 そうすれば魔力を与えられる。これ程の傷、治癒まで200年は掛るからな。

 これ程の重症は今まで受けたことがない。

 私の傷が癒えるまで私を守ってくれ。お前は評価に値するからな

 私が回復力した後にお前に相応しい評価と褒美をやる…」

「……へ、へへ…お父様…最後の最後で私を侮るの…?

 そんな物、要らない! 欲しいのは、あなたの命!」

「な!」


最後の力を振り絞る。自分の形を残している魔力も

最悪、自分自身を形作ってる魂も消えるかもしれないけど

ここまで来て…こんな事までして、負ける訳にはいかないから!


「ぐごぉお…か、身体がかき消え…」

「さぁ、一緒に…」

「死ぬのはテメェだけだよ裏切り者がよ!」

「あ…」


そんな…あと少しでお父様を倒せたのに…何でこんなに早く

どうして…ミルレールお姉様が…ここに…


「ミルレール…助かったぞ」

「へ、雑魚に消され書けるとは、親父も衰えたか? えぇ?」

「ふ…最後の最後にも驚かされたが、エビルニア…これでお別れだな」

「……勇者…様…ごめん…なさい……」


私の意思は暗闇に飲み込まれた…結局私は…何も出来なかった。

裏切り者だった…ただの臆病者で…愚かな存在だった。

何も貫けないで…ブレてばかりで…決めることが出来なくて…

ようやく決めても、すぐに意思が傾く…愚か者…


(魔王の娘、エビルニア・ヒルガーデン)

(……)


暗い意識の中でも、一応、声は聞えるのかな…

何だか身体がふわふわしているような…気がする。


(あなたは自分がどれだけ重い罪を犯したか、理解していますか?)

(……はい)


問い掛けられた質問に私は答えた。

無意識に…口が勝手に動いたような気がした。


(もし、罪を償えるチャンスがあるとすれば、あなたは罪を償いたい?)

(…私が犯した罪を…償えるわけはない…でも、少しでも罪滅ぼしが出来るなら

 私は…喜んで罰を受けます…)

(……)


口は勝手に動いていた、考えて話していると言う事は無い。

無意識に…自分が思っている言葉が出ているように感じた。


(……よろしい、ではエビルニア・ヒルガーデン。あなたに罰を与えます)


どんな罰だろうと、私は受入れる覚悟が出来ていた。

きっとこれは審判だ、話し掛けて来ているのは神様なのだろうか。


(あなたに与える罰は、今のまま人の姿に転生し、その力で魔王を倒す事。

 魔王を倒せば、あなたの遺志は消えるでしょう。ですが、必ずやり遂げなさい)

(……)

(あなたは今、世界が嵌まった抜け出せぬ不運な輪廻を破壊する機会を作った。

 その機会を必ず物とし、恵まれぬ世界のルールを破壊してください)


私にとって…またとない機会だった…でも、意思が消えてしまう…

それは結局、死ぬと言うことなのかもしれない。

でも、やらないと…やらないと駄目だ! 勇者様の意思を…私は必ず…!


(はい、必ず…やり遂げます…今度こそ…必ず…お父様を!)

(では、目覚めなさい。これより、あなたの名はエビルニア・ヒルガーデンではない)


視界が明るくなった…目覚めと共に、私は自分自身の姿を見た。


「……私は……魔王の娘、エビルニア・ヒルガーデンじゃない。

 …ただの人間、エリエル・ガーデン……これが、新しい私」


小さな少女が映っていた。エビルニアとしての私の姿は

白い長髪で、瞳の色も白かった。

どうやら、この姿でも白髪で、瞳の色も白いみたい。

でも、私の…エビルニアとしての姿とは違った。


悪魔の翼も尻尾も生えていない、ただの人間。

顔付きはまだ幼いから分からないかな。

大きくなったらきっと分かると思う。

…でも、この間でも鍛えないと…お父様には勝てない。


エビルニアの時に使える魔法も少しは使えるみたいだけど

あの時よりも魔力が少ないし、使える魔法も少ない。

魔法陣を召喚出来ない…もっと強くならないと、私はまたお父様を倒せない!

まずは魔法陣を組めるように練習を始めないと!

因みに、タイトルは未だに迷っておりまして、途中で変ってしまう可能性があります。

タイトルを決めるときにいつも悩んで悩んで…こう言うの、得意になりたいですが

経験あるのみと言うことで。どうぞ、ご理解くださいますようお願いします…


それと今作ですが、序盤はシリアスな場面が多いのですが

回を進めて行く程に緩い場面も増えてきます。

終始シリアスというわけではありませんのでご安心ください

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