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86.確かな繋がり

大変お待たせ致しました!

ブクマ登録・評価・感想ありがとうございます(〃艸〃)

大変励みになっていますヾ(*≧∀≦)ノ゛

これからも頑張ります(´p・ω・q`)♪

 



「ルフト・シエル アスル ユニ・フェルト メド・リヴァディ エル・フムス リェスルスト カリセルモス エンルーナ インズ」


 自身の足下に伸びる影へ創造魔法を発動する。

 七色に揺らめく魔法陣が展開され、聖属性魔法陣とはあちこち異なっていた。

 読めない神界文字が円に沿って記されているのは同じだけれど、大小様々な魔法陣が幾重にも重なり、層となって互い違いに回転している。

 創造するのは大地、大気、天空、太陽、月、星空、草原、水源、森、そよ風、気温。自然そのものだ。範囲はふたりが昼夜駆けても飛翔しても最果てには辿り着けないほどの広さ。ふたりが快適に過ごせる環境。魔力から生み出される水を飲むことで魔力供給が出来るよう川まで創った。

 三分の二近く回復していた魔力をごっそりと根刮ぎ搾り取られた気がして、貧血に似た立ち眩みを覚えた。ふらりと傾いだ身体をウルが支えてくれる。


『主……』

「ええ……大丈夫よ。まだ、大丈夫」


 小規模と言えど天地を創造したのだ。この程度で済んでいるなら御の字だろう。回復中だった魔力がもう少し少なかったら、下手すると喀血していた可能性もある。目眩を起こしてふらつくくらいはまだマシだ。

 それでも、いま五歳の姿に戻るのは大変危険だということは分かる。この状態は五歳児の肉体では耐えられない。内臓の機能が悉く著しく低下し、昏睡状態に陥るだろう。何事もなく回復できるとは断言できない。


「さあ、ウル、リオン。影の中に入ってみて。中の具合を確かめてちょうだい」

『わ~い! ぼくいっちば~ん!』


 何の躊躇いもなくリオンが影に飛び込み、吸い込まれて消えた。ウルは一度頬擦りで労ってくれてから、影にするりと入り込んだ。


 残念ながら自分の影の中を確認することは出来ないので、ふたりの検証頼りになってしまう。たぶん問題ないとは思うけど……。


『ママ! すごいよ! ひろくてあったかくていっぱいあそべる!』


 影からひょこっと頭だけ出したリオンが楽しそうにキュルルルルと歌った。同じくウルも顔を出し、リオンの言に同意する。


『春のような陽気なので、とても快適です。充分すぎる生活圏に仕上がっています』

「そう、よかったわ。必要に応じて増やすことも出来るみたいだから、何か不便な部分を見つけたら遠慮なく言ってね」

『わかった~!』

『はい。ありがとうございます。それで、主。今しばらくはお側に寄り添っていた方がよろしいですか? 魔力が枯渇しかけています。心配でなりません』


 ああ、と思わず苦笑した。ふたりとは繋がっているからか、こちらの状態が筒抜けらしい。リオンが気にしていないのは、まあ偏に経験値の差と言うか、年齢の差だろう。ウルは本当に気遣いが細やかだな。


「ありがとう。また少し休んで回復に専念するから大丈夫よ。あなたも酷い怪我を負っていたのだから、影で休んでいて」

『御意。何かあればすぐにお呼びを。まあ言わずとも伝わりますから、必要な時は勝手に駆けつけますが』

「ふふっ。そうね、その時はお願いするわ」

『はい、お任せを』


 目礼してから影に沈んだ。ウルは紳士だな。


「まったくお前は、毎度毎度とんでもないことを仕出かすな」


 呆れた様子でお爺様が腰を抱き寄せる。


「あまり無理を重ねてくれるな。一人で立っているのもやっとではないか」


 心配げに頬を撫でてくれるその温かい手に知らずほっと息を吐き、ついお爺様に甘えてしまう。

 どうしたことか。時を重ねる毎に乙女思考になっている気がする。甘えるなんて芸当ができたのかと内心びっくり仰天だ。


「暫しこの場に野営を張る。誰か騎士館へ戻り準備して参れ」

「「「はっ!」」」

「お爺様、そこまでされなくても大丈夫ですわ」

「何が大丈夫なものか。真っ青な顔色をして強がるでないわ。支度が整うまで私が抱いていよう。ゆっくり休め」


 そう言って軽々と抱き上げると、木陰に移動して腰を下ろした。戦闘の後なので埃や汗、乾いた血など様々なにおいが混じっているけど、お爺様愛用のコロンの香りも残っていて、それが酷く心の拠り所となっていた。膝に横抱きにされたままトントンと規則的に背中を叩かれ、ほっと力が抜けていく。


「今は何も考えずに眠れ。こうしてお爺様がお前を守っていよう。側にいるから安心しなさい」


 ほう、と細く長い息を吐き、意識はすぐに混濁していった。






「お前たち。森での経緯を詳細に話せ」

「「「はっ」」」


 眠るレインリリーを中心に守るように三角形に起立していたノエル、アレン、ザカリーだったが、前領主アラステアに命じられ、見張りを騎士団に託して跪いた。






 ◆◆◆


「―――――以上が、我がグレンヴィル領からもたらされた情報です」


 緊急御前会議に召集された主要な面々の、それぞれの表情は皆一様に硬かった。


「一つよろしいか」

「ええ、なんでしょう、チェノウェス大将軍」


 六公爵家の一角で、唯一の無属性防護魔法を扱える一族の当主が、厳つい顔をさらに渋っ面にして発言した。大規模戦闘が発生した非常事態に派兵されることになる、大所帯の国軍騎士団を束ねる国の守護神だ。三十代半ばの脂の乗ったチェノウェス公爵は、一度陛下に目礼してから私に視線を戻した。


「いくつか腑に落ちない点がある。いや、貴殿の情報網を侮っての発言ではない。それを前提で聞いていただきたいのだが」

「構いません。お続けに」

「うむ。まずは情報伝達手段だ。今の話が本当であるならば、貴殿の治める領から情報が降りるには速すぎる。二つ目はドラゴン討伐の真偽。私の防護魔法であってもドラゴンを二頭相手取る自信はない。その上討伐だ。物理・魔法共に高い耐性を持つ魔物の王者をどうやって仕留めることが出来たのか。三つ目は魔素不在の森の踏破。魔法なくして剣一本で、果たして広大かつ強力な魔物の蔓延るヴァルツァトラウムの森に、本当に踏み込めたのか否か」


 それは当然指摘されることだろうと予測済みだ。寧ろ不審に思わない方が問題である。


「四つ目に、森内部での異変。呪いと申されたが、そもそも呪いなどというものは目に見えるものではない。更にその媒体である虫を捕獲したとは、どうやってだ? どう見極め、どう捕獲した? 森が汚染されているならば、広域浄化に貴殿の所属する魔導師が少なくとも一中隊は派遣されていなければおかしい。だが部隊を編成している様子はないし、もとより貴殿がこの場に残っているなどあり得ないだろう」


 帰属する組織が違うというのに、相変わらず広い目と耳をお持ちのようだ。さて、今回はどこに誰を送り込んでいるのやら。


「最後に、いずれかの国が監視していたという証左だ。そうと断じるからには明確な証拠を握ったということなのだろうが、貴殿はそのことに触れていない。つまりは、貴殿のもたらされた報告には穴がありすぎる、ということなのだが、お答え頂けるのか」


 他の方々も思い至っていたのか、同じ疑問を抱く視線が向けられる。

 詳細には語っていない。語っても問題ない部分だけを並べた、チェノウェス大将軍の指摘通り穴だらけの報告だ。

 無駄なことをやっている自覚はある。ただ今少し引き延ばしたかっただけの、ささやかな抵抗だ。


「グレンヴィル副師団長。潮時だ」


 国王の勧告にそっと溜め息を飲み込んだ。

 守るということが、ただそれだけのことがこれ程までに困難で、己の無力を再確認するだけの、実に虚無感に苛まれるものなのだと痛感していた。

 今回の件は仕方なかった。どうしようもなかった。あの子があの場に居合わせたのは僥倖だったと父上が仰っていたように、被害者も被害の拡大もなく、驚異的でこの上なく理想的な形で終息した。

 グレンヴィル領主として、国に従事する役人の一人として、これが最善だったと言える。

 だが父親としては、これ以上の悪手はなく、これ以上の最悪な終息もなかった。


 邸の奥深くに隠し、家の者以外の誰の目にも触れさせず、ただただ静かに、穏やかに過ごさせる。それが最善であったように思えてならない。それは私が安心できるだけという理由の、リリーや家族にとって一番の悪手であることは間違いない。

 ベラに知れたら半殺しにされる暗い思考だろう。

 あの子の身の安全のためにあの子の自由を奪い、覆い隠してしまいたいと、そう思っているのだから。


 私は怖いのだ。恐ろしいのだ。

 リリーを守れない自分が。

 リリーが手の届かない場所へ行ってしまうことが。


 神の使徒である以上、国王が仰ったようにあの子を秘匿したままではいられない。

 いずれは国が、世界が、あの子の存在に、価値に気づいてしまう。

 その時私はあの子を守りきれるのか。この手からすり抜け、こぼれ落ちてしまうのではないか。


 ベラが言っていた。なるようにしかならない、と。

 リリーが神の使徒に選ばれたように、リリーの人生はなるようにしかならない。大切なのはその流れに切り離されないよう、あの子から離れることなどないよう、家族が一丸となって守り続けなければならないということだ。


 あの子は賢い子だ。たくさんのことを理解し、呑み込み、しっかりと立つ強さを持っている。

 父親である私がこの体たらくでは合わせる顔がないではないか。


 リリーが生まれた日に守ると決めた。心に誓った。

 ならば私のやることなど一つしかない。


 身体の中心に極太な芯が一本通った気がした。

 陛下に一礼してから、一同を見渡す。


「……お答えしましょう。ですが、私の言葉だけでは答えの根拠にはならないでしょう。最も、言葉のみで信じられるとも思えません」


 訝る面々から視線をはずし、天井を見上げた。

 声が届くかはわからない。それでも出来るのではないかと、そんな確信めいた繋がりを感じる。


「あの子を―――リリーを呼んで頂けませぬか」


 ほんわりと温かい何かが頬を撫でた気がした、露の間。


 リン、と涼やかな音が響き、突如として虹色の魔法陣が床に顕現したかと思えば、目の前に妻によく似た、私と同じ瞳を持った美しい女性が顕れた。





寒暖差が激しくて体がついていけましぇ~ん。

寒暖差アレルギーで鼻炎酷いし、微熱は続くし、水状の鼻水のせいでかみすぎて鼻の穴の周りが赤くなって、カピカピでかゆかゆですΣ( ̄ロ ̄lll)

まあ食欲は普通にあるのでがっつり食べてますけど~

今晩はチキン南蛮~

むふふ~(〃 ̄ー ̄〃)

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― 新着の感想 ―
[一言] 創造魔法ホントに万能ですね。リリーが生まれたのがグレンヴィル家でよかったと思います。別の家に生まれていたら化け物扱いされて絶望したりその力を使って物を創りだせと強要されそうですね…  多く…
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