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オリガミ  作者: 雷川 雷蔵
巡りまわりて春夏秋冬
4/4

春はあけぼの夢心地・其の弍

 アタシは荷物もそのままに学校を飛び出す。まだ学校が終わってそれほど時間も過ぎてない、近くにいるはずだ。

 とりあえず、アタシは近くの大通りへ向かう。人通りの多い場所であれば、必然的に出会う可能性も高い。私の住む街、彩市(いろどりし)は少し大きな地方都市。そこまで主要ではないものの交通がきちんと整備されているおかげなのか、人通りだけはなかなかのものだ。そこを重点的に調べれば、私の靴を履いていった犯人に繋がるかもしれないのだ。まだ午後2時頃となると人はまばらかも知れないが、これが一番効率がいいのだ。

 ふと、折り紙のうちの1枚が私のところに近づいてくるのを感知した。アタシのペーパーノイズは、作った折り紙たちが今どこにいるのかも把握できる。折り紙もまた、私と他の折り紙に対して同じことができるのだ。このうねりながら動いてくる印象は……


「神奈川くんかな?」


 神奈川くんは、オレンジ色の蛇をモチーフとした子だ。あの蛇行しながら近づいてくる進み方は彼しかいないだろうと予想したのだ。しかし、今回は動き方が少し妙で、どこを探してもあの目立つオレンジ色が見当らない。まさか勘違いだったのだろうか。


「姫ちゃ~、探してるっぽい子みつけたわ~。」


 その声は驚いたことに上からした。声の方を見上げると、そこにあるのは電線で、神奈川くんはその電線のまわりを回転するようなかたちで移動していた。


「……アナタも器用なことするよね……」

「うぃーす!あ、キャッチしてくんね、姫ちゃー。」


 そういうと彼は電線から抜け出し、ヒラヒラと落ちてくる。ここでスルーしても仕方ないので、アタシは神奈川くんを両手で包み込む。


「だから何なの、姫ちゃ、って……それより、本当に見つけたの?」

「もちろん。駅見張ってたら案の定みつけちった。通達通りの緑色の長い髪で、姫ちゃーと同じ制服来てる女の子って言ったらそんな迷わないっしょ。」

「それで、今はどこに?」

「それが撒かれたんよ。おれっちが話しかけた途端に意味不明なこと口走って、電車にも乗らずにホーム出てったわ。」

「それじゃあ、走っていった方向くらいは絞れないかな?」

「ん~、西地区のほうっぽい。あっち小道入り組んでて追跡しにくいってのもあるし。」

「了解、みんなにもこのこと教えてあげて。」

「うぃ~。」


 蛇の細長い体を折り曲げてお辞儀をすると、アタシの手から飛び降りて、足早に……正確に言うと足は無いのだが、瞬く間に去って行った。方向からして神奈川くんは北地区を捜索している折り紙たちに伝えに行ったみたいだ。それならアタシは西を重点的に回っていこう。

 ネズミの、白い折り紙が私に迫り来る。


「姫、例のターゲットらしき人物を観測しました!」

「三重さん!姫って外では呼ばないで!それで、例の子が見つかったの?」

「はい、ここから南西に500m程進んだ商店街で発見しました。現在群馬と鹿児島がこちらへ逃げるよう誘導しております。」


 なんと優秀な折り紙たちだ。


「アナタたち、ホントに最高だよ。ありがとう。」

「い、いえ、姫にそのようなお言葉を頂けるなど滅相もないことで……とにかくご案内致します。」


 その言葉が言い終わるか終わらないうちに、その少女はアタシたちの目の前に現れる。


「アナタだったの……」


 宮崎君の言う通り、長い緑色の髪の女の子だった。青々とした葉のような光の射したビリジアン色の髪はとても魅力的だ。印象としては大人しめで真面目そうな見てくれである。しかもうちの制服が似合っておりかわいらしい。……羨ましい限りだ。しかし、顔つきはそれとは裏腹に目を釣り上げて睨んできている。


「あ、あなた、やっぱりこの1日10個限定、鉄道おじさんの特製シュークリームが狙いですね!」

「「……へ?」」


 そのセリフにアタシたちはポカンとほうけてしまう。


「ふんっ、どうせそんな事だろって思っていたんですよ!今日は不気味な折り紙に追いかけ回されるし、まさかとは思ってたけど……残念でしたね!この私、(あおい)はこのシュークリームのためにHR時間をサボって一時間かけて苦労の末に購入し、これからじっくりと我が家に帰って至高の甘さを味わうんです!」


 いや、HRサボるのはダメでしょ。


「う、うむ、其方(そなた)、何か誤解をーーー」

「問答無用です!私のスイーツタイムを邪魔させやしません!」


 そう口走ったかと思うと、葵と言う少女はアタシ達に背を向けてパタパタと駆けていく。


「あっ、逃げましたぞ、姫君!」

「うーん、悪い子ではないんだろうけど……仕方ないね、将軍、みんな、あの子と話し合える環境を整えて。」

「つまり、包囲するのですな?」

「ケガさせないように気をつけて……作戦開始!」


 逃げようとするも続々と到着する折り紙たちに退路を阻まれている。


「へっ、そいつは姫ちゃんのもんだっ、大人しく渡しな!」


 やめなさい埼玉君、今の彼女にはさらに誤解を与えかねない、というか確実に与える。


「ふざけないで下さい!自分のイクスを恐喝に利用するなんて酷すぎますよ!?こうなったら……」


 葵さんはおもむろに手に持っていた紙袋を開けてシュークリームを1つ取り出す。


「家で食べたかったけど、背に腹は替えられません!いただきます!」


 そしてあろうことか、追い詰められてる状況の中、その美味しそうなシュークリームに(かじ)り付いたのだ。


「ほいっふほっふ!」


 口にクリームを詰め込んだままわけのわからないことを叫ぶ。そして身をかがめてジャンプする体勢になる。次の瞬間葵さんは空の彼方に跳躍していた。普通じゃ考えられない跳躍力。視認できるだけで米粒程の高さまで頭上に飛び上がっている。


「あの子娘(こむすめ)……もしやイグジスト……」

「は、早く追いかけて!見失うかも知れない!」


 ここで誤解を解かないと後々になって厄介なことになりそうなのだ。絶対に逃がさない。呆然としている折り紙たちにアタシは指示を出す。


「将軍はアタシと来て。空を飛べる子たちはそのまま空中から追跡。他の子は散らばってあの子の落下地点を予測して追尾して。以上、解散!」

「「「承知しました!」」」


 折り紙たちが一斉に散らばって視界から消えてゆく。


「アタシたちも行くよ。」

「分かっておりますとも。」


 空に舞った葵さんを再度確認すると、少しずつ高度を下げていき、小さいマンションの屋上に着地する。


「我が家臣たちが包囲網を作っておりますぞ。我らは先回りして参りましょう。」

「うん、分かってる。」


 しかし、ふと、ある事に気がつく。アタシの折り紙の位置が分かる能力に、一つ奇妙な点がある事を。


「まって、将軍。」

「む、どうなされたか。」

「これなら……いけるかもしれないよ。」




 私、葵のイクスは「ホイップホップ」、甘味を感じることで自分へかかる重力を変えることができる能力。そのためどこまででも高くジャンプができるのだ。ただし、継続時間は最後に甘味を感じてから5分間のみ。ネーミングを家族に相談した際、語感が良いと言う理由でこの名前になった。

 だが今こうして、私のシュークリームを狙う不良が立ちふさがる。


「まてや嬢ちゃん!はよ姫にわたさんかい!」


 あの折り紙たちは間違いなくあの桜色の髪の先輩のイクス。さすがはかの有名な四季兄弟の長女、私のジャンプについてこれるイクスは久しぶりにみる。


「でも、このままじゃマズいですね……」


 そろそろホイップホップの跳躍も切れてくる頃だ。私は近くにあるマンションの上に飛び降りる。イクスの関係もあり、能力発揮時は体が軽いので地面に接したときもあまり衝撃がかからない。しかし、着地時に重力を戻さないと、反動でまた空に飛ばされかねない。今回も上手くいき、無事にその場に留まる。

 後ろを見ると、2羽の鳥型の折り紙が近づいてくる。屋外で彼らと鬼ごっこするのは得策とはいえない。私は備え付けの扉のドアノブに手を伸ばす。鍵は閉まっていなかった。素早く建物内に入ると、扉の鍵を施錠する。


「どこへ逃げる気かのう?」


 初老の男性のような声が投げかけられる。勢いよく後ろを振り向くと、そこには茶色の、クマの形をした折り紙が陣取っていた。


「空を飛ぶ者達も確かに有利じゃて。しかしながら、お前さんは跳べば必ずまた地に着かねばならぬのだろう?」


 この短い間にここまで正確に予想を立てて来るのは想定外だ。これは、形としては嵌められたことになるのか。


「さすがですね。ですが、あなたの見解は少々語弊があります。」

「なんじゃと?」


 私は、胸ポケットに残して置いた酢昆布の包みを開けて、その一本を口に放り込む。私のイクスには続きがある。それは、甘味以外の味を感じた時にも能力は発揮される!


「私の本領は、地上でこそ発揮されるのです!」

「き、消えたじゃと!?まさか、高速移動系のイクスかのう……」


 と、古風な話し方をするクマの背後から新しい折り紙が現れる


「栃木、あの緑女どこいった!」

「鹿児島か、すまんのう、逃げられてしもうたわ……あの若いの、跳躍以外にも芸を持っておるようじゃ。」

「分かった、おっちゃんはそのまま継続して探してくれ。緑の女も遠くにゃ言ってねーはずよう。オイラは他のやつらに連絡する!」

「うむ!」

 そんなやり取りを残し、2枚の折り紙は去っていく。


「上手く、いったようですね。」


 息を殺していた私はホッと空気を吐き出す。私は酸味を感じると透明になる。口の中の酢昆布をよく噛んで食べる。シュークリームで口の中が甘くなったところに酸味を加えると、後味がさっぱりしてまた奥ゆかしい。でも甘味とは違い、透明化これは3分しかもたないのだ。


「でもさすが、四季兄弟の長女であることはありますね。」


 四季兄弟、2男2女の四人兄弟であり、極めて稀ながらその全員がそれぞれ強力なイクスをもったイグジストの兄弟がいるという、そんな都市伝説がある。その長女は折り紙に命を吹き込み、忠実な部下として使役すると言われている。確かに噂では高校生と聞いていたが、まさか実在していて、ウチの高校の先輩だったなんて夢にも思わなかった事実である。

 細木 葵には崇高なる夢があった。それは、至高の甘味を味わうこと。これまで学校からの帰り道、駄菓子屋に寄った回数は数しれず。お菓子同士の相性まで研究していた私にとって、甘味を味わうことだらけでお菓子な人生だったとも言える。そして今日は、行きつけのケーキ屋さん「ルミリエール」にて新商品が発売される日でもあった。それもケーキ一徹であった鉄道おじさんこと店主・鉄道(てつどう) (とおる)さんのオリジナルシュークリーム、しかもその日限定の特別なシュークリームだ。始業式をサボるのは気が引けたが、一日限定、というシュークリームの売り文句は私の判断を動かす材料として十分すぎた。


「ここまで苦労して手に入れたシュークリーム、絶対に渡しません、先輩……」


 私は袋に戻しておいたシュークリームのカスタードをひと舐めし、甘味に酔いしれる。やはり素晴らしい出来です、鉄道おじさん!先程施錠した屋上の鍵をまた解錠して、また外に戻る。


「お、待っとったで、嬢ちゃん。」


 さっき私を追ってきた、これは……鳩だろうか。鳥の姿をした白い折り紙が首を前後に揺らしながらにじり寄る。オーソドックスな関西弁が特徴的だが、この際それはどうでもよい。軽くなった我が身を利用し、足場のコンクリートを蹴り上げて一気に空へ跳びたつ。白い鳩も遅れることなく私を追走してくる。空を追ってくる相手は厄介であると改めて思い知らされる。でも、私の動きは普通の鳥程単純じゃない!


「ホイップホップ!」


 甘味でできるのは軽くなることだけではない、その逆もできるのだ。つまり、言葉にすると少し嫌だが重くなることもできるのである。それに意識を向けると、私の体は鉛のように重くなるのが分かる。急速に勢いを失った私はほぼ垂直に近い角度で落下する。


「な、なんやこの嬢ちゃん!?」


 不規則な動きに反応が遅れた鳩は驚きの声を漏らして私からかなり離れたとんでもない速さで落下する私はあとコンビニの屋根に直撃しそうになる。しかし何も問題はない。私はホイップホップの能力で私の質量を限りなくゼロに近い数値まで下げる。急に軽くなった私の勢いは風圧とともに相殺され、ふわっとした無重力感を味わう。この感覚は、甘味を感じた時の感覚にとてもよくにている。無事に着地した私は、屋根からコンビニの駐車場へと飛び降りる。さっきので鳩は私を見失ったはず、これで追手は誰もいないはずだ。


「見つけたわよ!さあ、観念しなさいミドリムシ!」


 また、ですか……しかも呼び名がミドリムシ、なかなか失礼な折り紙に思わず顔が曇る。声は女の人のようだ。反対方向へ向かおうとするも、そこにも新たな折り紙が、2枚も……そこから様々な所から続々と折り紙が集まってきて、完璧に包囲される形になる。



「嬢ちゃんも、よう逃げたほうや。ワイらここまで手こずらされたん久しぶりなんやで。」


 この関西弁は、さっき撒いたはずの鳩。

 こうなれば……塩味が必要になりそうです。ブレザーの内ポケットに隠し持ったうまい棒サラダ味の包装を破り、一口かじりつく。コンビニ店員さんが口を大きく開けて、手に持っていた肉まんを落としてしまっている。もったいない!


「すみません、お邪魔しますね。」


 肉まんのお詫びも兼ねて一礼すると、私は商品の陳列棚を突っ切ってコンビニの外に脱出する。本来は失礼に当たるのだろうが、私の塩味による透過はなんと一分しか持たないのだ。悪いも何も言ってられないのである。コンビニの先には何やら会社のものらしきビルがある。その壁に向かって飛び込み、会社内に侵入。1階は受付のようで人は少ない。目立たないように素早く酢昆布を口にくわえて透明になる。ほんの一瞬だったので見られてはいないだろう。

 このまま透明になったまま、折り紙たちの密集地帯から緩やかに離れるのだ。そうしなければ、逃げきれない……




「はぁ……はぁ……もう、大丈夫……」


 ホイップホップの甘味を使わずに、ずっと酸味を使って逃げてきた。いつも甘味に頼っていた戒めだろう、この疲れは……こんなことになるのであれば、真面目に運動しておけばよかった。過呼吸になりながら、薄暗いトンネルに入る。


「でも残念だったね。アナタはそれでも、アタシのペーパーノイズからは逃れきれなかった。」


 トンネルの中には、桜髪の先輩と、その両肩にはそれぞれ、青と赤の鳥型の折り紙がチョコんと止まっていた。何故なのだ、今度こそ完璧に察知されていなかったはずなのに!何故……どんなに必死に逃げても、いくら逃げても先回りされてしまう。


「そんな!私はーーー」

「嘘じゃないよ。アナタのイクスはとても凄かったから、アタシたちもホントに苦労したよ。まあ、最初からアナタが逃げきれないのは分かっていたけどね。そうでしょ、京都さん?」

「そうとも姫っ!アタイが見逃す訳ないだろっ!」


 元気のいい少女の声が私の袖の方から聞こえる。そこにはとても小さい、アリの折り紙が張り付いていた。


「だから姫って呼ばないで……」

「い、いつから……」

「京都さんは私がピンセットで作ったアリをモデルにした最小のオリガミ。アナタを一度包囲したときに、既に付いて貰ってたの。」

「そんなに前から、ですか。」

「そうとも、葵とやら。そなたは姫君に包囲された刻より我等が手中で逃げ回っておったのだ。」

「先輩の熱意には感服しました。いいでしょう、シュークリームはお譲りします。」


 私だってスウィーツに魅了された一人であることには変わりない。それだけこのシュークリームを欲していた先輩になら、食べられるのもやぶさかじゃない。それが人の道というもの。


「あ、あの、だからね。誤解があるっていうか……そもそもアナタ、それ食べかけだし……」




「す、すみませんでした!」

「分かってくれたなら大丈夫。」


 誤解は無事に解け、その後は葵さんの平謝りが繰り返された。こうも一生懸命に謝られると、怒るに怒れず、頭をあげるように促す。やはり根は良い子で自分の過失をすぐに認めたので、アタシたちとしても一安心だった。


「いえ、そんな!私の不注意で先輩にご迷惑をおかけしましたし、せめて何か埋め合わせをさせて下さい!」


 そんなことを言われても……必死な形相になにも言い返せない。アタシは困って将軍に助けを求める。


「なに、姫君よ。ここは遠慮なく申し付けるのが礼儀というものですぞ。」

「将軍まで!でも、そんな急に言われてもなぁ……」


 そこまでいいかけて私は名案を思いつく。


「ねえ、葵さん。」

「は、はいっ。」

「私に、美味しいケーキ屋さんを教えてくれない?」


 予想外の内容だったのか拍子抜け、というような表情だ。


「……そんなことで、いいんですか?」

「うん、実は私、そういう話題に疎くってさ。教えて貰えるとすごく嬉しいよ!」


 そういうと、葵さんの表情は、曇りから晴れに変わるような笑顔になって敬礼のポーズを取る。


「分かりました……まっかせてください!不肖の(わたくし)、細木 葵が責任を持って案内させていただきます!」


 新学期早々、後輩兼友人の細木 葵さんができたのは一番の出来事だった。




「つっかれた~。」


 私は家に帰ると、すぐに自分のベッドに倒れ込む。2年生の初日から、内容の濃い日となったのは間違いないだろう。鞄から這い出してきた赤い折り鶴も、私の顔の横にちょこんと座っている。こうして見るとカワイイものだ。


「いやはや、一時はどうなることかと。」


 その貫禄のあるおっさん声を聞くと、そんな思いもたちまち消え失せてしまいから不思議なものだ。


「そうだね。この出来事で、葵さんとも仲良くなれてよかったよ。」

「ふむ、それにしても……」

「どうかした、将軍?」


 歯切れの悪い将軍に私は少し心配になる。何かまずいことでもあったのだろうか。


「有無であるぞ、あの葵という少女、名字が確か……」

「もしかして、忘れちゃった?細木さんだよ、細木 葵っていう……あっ……!」


 葵さんは確か最後に……ずっと下の名前が多く飛び交っていたため、あまり名字に注目していなかった。


「姫君も気付かれたか?」

「うん、あの子、まさか……」


 まさかまさかの、細木 翠君の妹さんかも知れないのだ。それに気付いた瞬間、アタシは吹き出してしまう。なんて、世間は狭いとよくいったものだ。こんなおかしなことが今まであっただろうか。




 ペーパーノイズ、紙切れの囁き。当時、中学生だった少女は母親に会える日を望んで、ただ一人で折り鶴を折っていた。私がイグジストになった時の話は、また別の機会にしよう。

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