自動小説書き上げ装置
萩原は巷の流行りや人気なことについて研究している。萩原は今までのノウハウを生かして何か、本か、商品が作れないか考えた。しかし、なかなか思いつかず、気分転換に小説投稿サイトを見ていた。お気に入りの作者が皆、今何が書きたいのか分からないという。
「そうだ、これだ!」
萩原は閃いた。
「人気な題材や、これから人気になる題材を推測し、著者に提示する装置。これがあれば作者たちは執筆に困ることはない」
萩原は早速制作に取りかかった。
人気順などから、現在の人気なジャンル・人物設定を特定し、作者にそれを提示する。さらに楽に書けるように、おおまかなストーリーを装置内で構築して提示する機能を追加した。
かなり順調に開発が進み、もうすぐ完成というところで、研究室にある男性が入ってきた。
「聞いたぜ。あんた小説を自動で書く機械をつくっているんだってな。」
彼は同じ棟で別の研究をしている山崎だ。山崎は中世の歴史を研究している。
「俺、小説サイトに小説を投稿しているけど、なかなか人気にならないんだ。だからその装置、よかったらくれないかな?金なら払うし、研究成果も分かるだろ?」
萩原と山崎は何度か会う機会はあったが、やたら話しかけてくる山崎のことが萩原は嫌いだった。しかし、今被験者がいなくて困っているところだった。
「分かった。では、2週間後くらいに結果を知らせにきてくれ」
山崎は金を払い、萩原は装置を完成させて貸した。
2週間後、山崎が研究室に入ってきた。随分怒っているように見えた。
「おい!どういうことだ!解析できないぞ!」
「そんなことないはずです。このスイッチを押して、数秒待てば……」
機械にはしっかりと「異世界転生」の文字が表示された。
「ほら解析できるじゃないですか」
だが山崎はまだ不満そうだった。
「それだよ!何回やっても同じような文字ばかり表示されるんだよ!転生とか!チートとか!結婚とか!そういう文字しか表示しないように設定しているんじゃないのか!」
萩原も小説投稿サイトを見ていたので原因はすぐに分かった。
「なるほど。機械にはちゃんと 解析するプログラムが組み込まれています。ですが、今の状況だとどうしてもこのような結果になるのでしょう。この状況を打破するには、こんな機械に頼らずに自分で話を考えることでしょうね。この機械は失敗作です」