狂女と骸
深夜のテンションと息抜きで書きました
後悔はしている
「α‼︎弾幕薄いぞ‼︎」
時は2×××年
「隊長‼︎弾切れです‼︎」
「何の為の銃剣だ‼︎切り込め‼︎」
食物連鎖の頂点たる人類の前に突如現れたのは
「こちらθ‼︎敵の援軍です‼︎」
「何言ってる‼︎味方がやられれば敵が増えるのは当然だ‼︎・・・ちっ‼︎下がるぞ‼︎」
「ですが‼︎作戦が・・‼︎」
「もう無理だ‼︎責任は俺が取る‼︎おい‼︎α‼︎θ‼︎撤退だ‼︎ここはもう保たない‼︎」
かつて 人類だったもの
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雨が降りしきっている
頭がぼんやりするのは 天気のせいだろうか
足を引きずりながら 周りに浮くモノを振り払う
だがそれはすぐに俺の周りに戻ってきた。
全くもって鬱陶しい
気分を変えようと暫く歩いて来たが廃墟となった街並みと瓦礫しか見当たらない
遠くにはきっと街がある だが俺は其処に辿り着くことは出来ないだろうな
所々擦り切れた軍服を見下ろし 外套のフードを深く被る
俺も堕ちたモノだ
この廃墟も 瓦礫も 擦り切れた軍服も 全ては奴等・・・いや 俺達のやった事だ
最初は単なる内紛だった
いや 単なる? まぁ良い 兎に角 内紛だった
職業軍人同士で戦って まぁ普通だな
・・・平和ボケした国には刺激が強すぎたが、それが歪みの始まりだった
どっかのイカれた科学者か?それとも神の裁きか?俺には分からないが・・・
戦で疲弊していった兵は当然狂ってく
戦争は人を狂わして 人じゃない物にするとは良く言ったものだな・・・
狂った奴等は突如異形の化け物になって 敵味方関係なく襲い出した。
こうなってしまえば内乱なんて起こしている暇は無かった
化け物は異常に強かった 生身の人間では対処出来ない
しかも化け物に殺られたやつは化け物になる
まるでゾンビだ
そこで考えるのは漫画でも現実でも一緒
『化け物』をこちらも作り出してしまえばいい
化け物の特徴は まず人間の身体をベースに
周りに浮く通称「ユニット」
躰に食い込む「リブ」・・・肋骨?だと?
そして心臓部「コア」
このコアを生きた人間に埋め込んだ
コアを埋め込まれた人間は一部は身体が変形したりもしたが 概ね身体能力の上昇、超能力のような何かを手に入れたりした
作戦は成功 人類は化け物連中に反撃を開始した・・・
だがそれと同時に 国は腐っていった
内乱真っ最中の国が無理やり合併したんだ
腐らない方がおかしい・・・そうだな。
俺も躰にコアを埋め込まれた人間だった
気味が悪かったが国を守る為と我慢していた
元々職業軍人だった俺はその身体能力でメキメキと戦果を挙げて出世・・・だがそれがいけなかった らしいな
無茶な作戦に押し込まれ惨敗
責任を取っての大没落
そして気がついたら廃墟を彷徨っていた・・・
あの後何があったのかは判らないが 今ではこんな生活だ
俺が斬った奴等も こんな風に何かを考えてたのか?
・・・まぁ 今となっては全て無意味だな
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「可愛げもない、お前は俺なんて必要ないだろ‼︎」
「私の方がこの人を愛してる‼︎」
・・・で?
数日前まで恋人だった婚約者と 親友だった女を見る
彼等の親から手渡されたのは何枚あるか数えるのも億劫な札束
「・・・はぁ」
昇進したてで真新しい軍服を見下ろし 部屋で取った軍帽を被り直す
人は斬りたくない
例えもう人じゃないモノだったとしても
人は撃ちたくない
でも斬るよりマシ 殺したって感覚が無いから
まだ抜いたことも無い大太刀を腰に提げる
何時もは背負ってるんだけどね
「これよりエリアIIIΔの奪還作戦を実行する‼︎α班はAルートより索敵と駆逐β班は南の旧ーー駅より支援銃撃‼︎私とθ班はBルートより突撃する‼︎最前線だ‼︎」
「突撃とはいい趣味だ‼︎」
「奴等のランクは平均幾つでしょうか」
「俺がエースだな‼︎」
「予言する こいつの近くに居ると死ぬ ソースは歴史上の戦死者3分の1」
「静粛に‼︎」
軽口が止む
「本作戦は我が軍最大の汚点を払拭する作戦だ‼︎・・・だが‼︎」
隊長が銃を床に打ち付ける
「戦果・状況に関わらず撤退命令には従う事‼︎今回の作戦は非常に重要だ」
カツ カツ カツ 軍靴の音が響く
「それ故失敗時の兵の消耗は禁物だ‼︎前回の本作戦はそれにより多くの『堕落者』を出し、再実行に多くの年月がかかった・・・」
「ようするに 命大事に ってか?」
「・・・諸君等の健闘を祈る」
「八柱上等兵‼︎」
「・・・」
「聞こえて無いのか?八柱上等兵‼︎」
「・・・あぁ 申し訳ありません小隊長・・・少々ぼんやりしていたもので」
顔を上げると先程まで演説していた美貌の小隊長サマ
若くして少尉にまで登り詰めた、私達女兵にも大人気 確かお偉いさんの孫だとか
最近漸く上等兵になった私とは大違いだ
「・・・あの件、大丈夫なのか」
あの件 とは 元恋人と親友だった衛生兵のスキャンダルの話
自然と広まってしまって どうしたものか
「・・・正直 よく分かりません・・・失礼します」
略式敬礼をして適当にあしらって足早にその場を離れた
本当に よく分からないのだ
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ダダダダダッ ダダダダダッ
銃声鳴り響く戦場
「ここいらは思ったより少ないな‼︎」
筋肉ダルマのナイスガイ 通称ジャックが叫ぶ
「八柱上等兵 何時もは前に出ないじゃないか慣れない動きは控えておけ」
分隊長・・・通称キングが呼びかけてくる
「ジョオウサマは虫の居所が悪いんだろ‼︎男取られてお怒りか?キングに慰めてもらいな‼︎」
口の悪い自信家 通称ジョーカー
戦場でのみ使うコールネーム
「今日は・・・もう少し前に出る ジョーカー は私に首を差し出すの?」
あぁそうだ 虫の居所が悪い
目を閉じて 胸元のコアに手を置く
改造された私の能力
感覚を一つ消す事で察知能力を上昇させる
今の私には視力さえ要らない
この察知能力は塞がれた目より仕事をするのだ
さぁ 女王様に首を差し出せ
・・・どれだけ敵を屠ったか 辺りがいやに静かだ
「八柱上等兵 作戦は終了だ‼︎」
トランシーバーから声 終わった か
本営に帰還する・・・何人か 居ない
どうやら敵が少なかったようだ 被害はそんなに大きくない
ジャックとジョーカーは居る
見た事のある顔が運ばれてく 頭だけで。
床に座り込んで治療を受けるけど
この時間は正直嫌い 戦果を報告する声が虚しい明るさを孕んでいた
「八柱上等兵」
目を開き 顔を上げる
分隊長だ
「何か」
「今日はよくやった、本気を出せばやれるじゃないか」
・・・私がいつも怠けているかのような口ぶりだ
不機嫌さが伝わったのか 少し慌てた顔をして
「あー そんな事より・・・明日は空いているか」
「・・・?まぁ」
「あー 何だ その し・・・食事でも どう・・・だ?」
・・・戦時中に何を言っているのやら
怪訝な顔をする
「えっと・・・あれだ 大きな作戦が終わったからな 士気を保つ為にも息抜きは必要だろう」
「はぁ、・・・分かりました 参加させていただきます」
気分転換にもまぁ 息抜きは大事 だよね?
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翌日、待ち合わせの場所に着くと 既に分隊長が
そういえば他に誰が来るのか聞いていない
「分隊長」
「‼︎ や・・・八柱上等兵 いや 柘榴 か 非番でまで分隊長は止めてくれ」
「あ はい 明石さん」
「あぁ 少し待ってくれ」
何かを取り出す分隊長
「これを・・・君に」
手渡されたのは青い石のペンダント
雫の形をした石が美しい
これを 私に?
「良いんでしょうか」
「あ えっと・・・女性を食事に誘うなら贈り物の一つはしなくてはらならない決まりだと ジャック・・・太郎に聞いたものでな」
太郎はジャックの本名だ
・・・ん?
「私達の他に誰が来るんです?」
「えっ?」
きょとん とした顔をした分隊長
「・・・私と 2人・・・だが?」
「・・・え」
沈黙が降りる
「そ・・・そろそろ予約の時間だ」
「あ はい」
そうして着いた先は高級レストラン
正直緊張と混乱で味がよく分からなかったが、話術に長けた分隊長との会話は自分でも驚く程に穏やかな時間だった
そのあと、全額払うと申しだされたが 流石に申し訳ない と必死で断った
「ざ・・・柘榴 あの・・・すまなかった な 騙すような形になってしまって」
「い・・・いえ 勘違いしていたのは私の方ですから」
気まずい
「・・・君さえよかったら 今日贈ったペンダント・・・俺につけさせてくれないか」
「俺?」
「え? っ‼︎ すまない 気が抜けていた」
・・・気が抜けると 俺 になるのか
この情報は価値が高そうだ
「それで・・・構わないか?」
箱を分隊長に渡すと 顔を輝かせ ペンダントを取り出して私の首に手を回し・・・
「柘榴‼︎」
振り向くと あぁ
元恋人が居る 隣には元親友
「少尉‼︎」
元恋人と組んでいた腕を解いて分隊長の腕に擦り寄る元親友
ばちん
頬が少し痛む 元恋人に殴られたようだ
「お前‼︎その男に浮気してたのか‼︎俺という婚約者が居たというのに‼︎」
何を言っているんだ?浮気していたのはあちらで 分隊長はなんら関係がないでしょう?
しかも今は他人でしょ?
「少尉‼︎騙されちゃダメです‼︎柘榴は自分を男に取り合わせたり人の彼氏を奪うのが趣味なんですよ‼︎」
2人言ってる事破綻してるよ?ねぇ何で関わってきたの? もうやめて
「・・・」
「おい‼︎何か言ったらどうだ‼︎」
「良い返せないんでしょ‼︎この・・・」
「それ以上彼女を侮辱すると許さんぞ‼︎この下種共め‼︎」
分隊長が怒鳴る 激しい 怒りに満ちた顔だ
・・・厳しくも優しい 分隊長にこんな顔させたくなかった
こんなことに巻き込みたくなかった‼︎
「何だと⁉︎」
「止めて」
私が呟くと三人は止まる
「帰ります・・・ペンダント ありがとうございました」
「柘榴‼︎」
分隊長が私を呼び止めるが 私は止まらない
親友と婚約者の裏切り 案外心にキてたみたい
・・・雨が 降り出した
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雨が降る中をひたすら歩く
瓦礫の中に同族・・・ 元人類の亡骸が混じりはじめた
まだ新しい 最近戦闘があったようだ
また暫く歩くと増える亡骸
人間のもあるな
まだ真新しい軍服に身を包んだ新兵
悲哀と苦悶に満ちた顔で重なり合うように倒れた2人の軍人 片方の遺体にはユニットが纏わり付くように落ちている
階級はどちらも上等兵の38期・・・大分後輩だ
戦友だったものを屠るのは苦痛だ。
更に進む
ふと見れば同族が歩き回っている
この戦いで死んだ奴らだろうな 街の方向へ向かっているのか 全員同じ方向に向かっている
「・・・なぁ」
「痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ」
「血血血血血血血血が血がああああああ」
・・・駄目 か
すこし回り道をしてまた戦場に戻る
偶には俺みたいに理性が残っている奴がいるかもしれない から
「・・・ん?」
さっき俺が声を掛けた奴の首と胴体が綺麗にわかれている
さっきやられたばかりだな 誰が人が居るのか?
その後も点々と落ちる先程見た奴らの亡骸を辿る
その先に居たのは1人の軍服の女
雨が降ってるにも関わらず地面に突き立った大太刀を支えに座り込んでいる
ふと 女が顔を上げた
目には包帯が巻かれ 雨に打たれた肌は青い
だが
「綺麗だ・・・」
心臓が跳ねる 何だこれは
「・・・人?」
女が口を開いた 声まで綺麗なのか‼︎
「・・・君は」
「私は八柱柘榴 上等兵。貴方も残党狩り?ここらの敵はもうやっちゃったの」
「・・・俺は・・・時雨、曹長だ」
「こ・・・これは失礼を」
階級が上と分かった瞬間慌てて立ち上がり 敬礼する柘榴
「やめてくれ、柘榴 堅苦しいのは好きじゃない それに1人で街の外に出るのは規律違反だろう」
「・・・処罰は 覚悟しています」
「俺も似たような物だからな・・・お互い秘密にしよう」
「そ・・・そうですね」
「その目はどうした」
「能力の関係で隠しています 見えてはいませんが 気配は分かります故・・・あ 見苦しいですね 外します」
「いや‼︎そのままにしてくれ」
だから俺が近付いて分かりはするが攻撃してこなかったのか
また俯く柘榴
顔が暗い 分隊長時代の御節介心が湧いてきた
「所で柘榴 そんな悲痛な顔してどうした?どうせお互い初対面だ いっその事話してみろ」
「え・・・でも」
「いいから ほら」
「・・・実は」
彼女は全て話してくれた
軍人なのに人の形をした物を壊すのが苦手な事、人の感情の起伏がよく分からない事 わからないなりに慕っていた婚約者の裏切り 自分を捨てないでいた親友は男目当てで・・・
「そうか 辛かったな」
そっと 抱きしめる 柔らかい お互いのコアが胸に当たった うなじを指でなぞると
「ぁぅっ⁉︎」
顔が真っ赤だ
「明日も 会えるか?」
規律違反を無理にさせるのは心苦しいがそんな物でこの高揚感とまた彼女に会いたいという欲望は抑えられない
「・・・はい」
「この場所で待ってる 次は明るい話も聞かせてくれ」
それから俺達は何度か会った
そしてお互いの部隊の仲間の事
家族 友人 兎に角色々話した。
そうしてるうちに 自らの気持ちに気付く
あぁ 俺は彼女・・・柘榴が好きだ
今日はもう帰る といった彼女に自らの外套を被せた 寒いだろうから
そういうと彼女は恥ずかしそうに礼を言い、洗って返すと言って立ち去る
俺は化け物 彼女はまだ人類だ
彼女を殺す訳には いかない
今は
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街の外で会った時雨曹長
彼は優しかった 初対面の私の悩みを聞いて、優しく抱きしめてくれた
それからも私は曹長に会いに行った
ジャックやジョーカーの事、死んだ両親の事
兎に角色々話した
曹長は私によく触れる 手袋をしているのかざらついた手だった
寒い日だった 私は曹長の所に行った帰りで。
「八柱上等兵」
分隊長だ あれから会っていなかったな
「分隊長 先日は申し訳ありませんでした」
「いや・・・あれは運が悪かった 誰も君を責めることは出来ない」
そのまま歩を進め目の前に立つ
「・・・本当に申し訳ありませんでした」
「大丈夫だよ・・・あぁ そういえば」
分隊長があのペンダントの入った箱を取り出す
「これを」
分隊長が私の首に手を回し今度こそ付ける
「ありがとうございます・・・申し訳ない です」
「代わりと言ってはなんだが、それを出来る限りつけていてくれると嬉しい」
「?はい」
そう言って分隊長は私の着ていた外套を見て怪訝な顔をする
「八柱上等兵 それは・・・?君のではないだろう」
「あ その・・・知り合いに借りまして」
曹長の事がばれたらまずい
が
「・・・その外套 士官の物だな、しかも旧式だ 誰に借りた」
途端に険しい顔をする分隊長
「え・・・き 旧式?」
「言え‼︎この外套を誰に借りた‼︎」
怒りと狂気に引きつった顔で怒鳴る分隊長
「そ・・・曹長殿 です‼︎上官の名前は言えません‼︎」
我が軍の本営に居る曹長の数は多い 簡単にはばれないはず
「曹長だと⁉︎・・・確かにこれは曹長クラスの外套だろうな 何故旧式の物を持っているんだ‼︎」
「帰りは寒いだろうから と恐らく身につけていたものをお借りしました‼︎」
「・・・八柱柘榴上等兵」
「はい?」
「まさかとは思うが 目を塞いでいたのか?」
「はい」
「・・・・・・」
分隊長は何か考え込むような動作をして
「八柱柘榴上等兵 命令だ その曹長には二度と会うな」
「ですが」
「いいか これは命令だ そしてそのペンダントを絶対に外すな‼︎分かったな‼︎」
私が着ていた外套を引っぺがし 分隊長は走っていく
「ペンダント 関係ないよね」
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何故だ何故だ何故だ
彼女の言う曹長なんぞこの軍には存在しない
中尉クラスまでは最前線で戦う者も多い
それ故入れ替わりも早い 即ちこんな旧式の外套を着るもの何ぞ居ないのだ
ましてや彼女は改造人間というだけで上等兵に居られる程度のキャリアしかない(実力は折り紙付きだが)
支給品があるのに態々旧式を入手するようなマニアでもなく 嘘が苦手な柘榴がこれを手に入れるには本当に誰か 旧式の外套を身につけた人間から借りるしかないだろう
だが それは・・・
「少将‼︎」
「ん? 睦月か どうした君の祖父なら・・・」
「これを」
俺は外套を机に投げ出した
「これはまた随分と古いやつだな 懐かしい」
「これを私の部下が」
「・・・ほう」
明るい場所で広げられた外套は所々穴が開いていて 血に染まっている
「部下曰く 曹長を名乗る人物に渡された と 部下は能力上 視力を絶っていたようだが・・・」
「・・・この外套は・・・」
顔を伏せた少将
士官以上にしか知らされていない情報だが、改造人間はその身にコアを宿すという都合上精神が不安定な状態で『堕落者』と長時間過ごすだけで『堕落者』に近付いていく
原因はコアの共鳴 なるものらしい
勿論改善策はあるにはある
柘榴に渡したペンダントがそうだ
あの青い石はコア同士の共鳴を阻害する磁波を放っている
「君の部下はナニと会話したんだ?」
「分かりません ですが・・・この外套は」
明らかに 弾丸が 貫通している
「その部下 監視が必要だね」
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また彼女が来た しょんぼりとした雰囲気を漂わせている
「どうした」
「ごめんなさい・・・上官にあの外套 取られちゃいました」
「・・・そうか 気にするな」
彼女の隣に座り 片腕で抱き寄せる
『欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ』
あぁ 鬱陶しいな
彼女に触れていない方の手で纏わり付くソレを振り払う
「・・・?何かいる?ユニットか?」
柘榴が立ち上がる
「ただの蝿だ 鬱陶しいな 移動するか・・・ん?」
彼女の首に下がる青い石
軽く手に取る これは・・・
「これ どうした?」
「外套を取り上げた上官に貰った・・・外すな って」
「へぇ」
邪魔だ
俺は彼女の髪をかきあげ ペンダントの鎖を口に含んだ
「え ちょ 何して」
パキッ
鎖を噛みちぎり ペンダントを地面に吐き出す
「要らないだろう こんな物は」
「何言ってる?の?一応貰い物なんだけど⁉︎」
「これは良くない物だ 捨てた方が良い」
「良くないって・・・だからって急に・・・」
「頼む 信じてくれ」
必死な声で頼めば 言葉に詰まる柘榴
「すまない 確かに急すぎた」
柘榴を抱きしめる
「・・・?」
「どうした」
「何でもない」
そのまま身をまかせる柘榴
とんとんと背中を叩く
「・・・曹長 私曹長と本営でお会いしてみたいです」
「・・・何故だ?」
「曹長殿と居ると 不思議と落ち着きます もっと長くお側に居たい・・・なんて つい考えてしまいます だから 本営でもお会いしてみたいな・・・なん て」
恥ずかしげに話す柘榴
嬉しい
「ああ 俺もだ」
そっと彼女の唇に自分の唇を重ねる
最初は優しく穏やかな口付けで留まるつもりだったが 気付けば 深く貪るような口付けになっていた
幸せだ この上ない至福
この時ほど顔に唇が残っていた事に感謝した事は無い‼︎
「柘榴‼︎」
・・・何だ 邪魔だな
ユニットで声の主を確認する
上等な軍服の青年 こいつが上官か?
名残惜しいが口を離す
「分隊長⁉︎どうして・・・むぐっ」
柘榴を胸に押し込め 嗤う
「何だ?邪魔をするな」
「・・・‼︎人の言葉を解するか『堕落者』め‼︎部下を離せ‼︎」
「それは出来んな・・・それにもう 手遅れだ」
「分隊長⁉︎曹長⁉︎何がドウナッテ」
「柘榴‼︎そいつから離れろ‼︎・・・ッ‼︎」
ユニットを軽く薙ぎ払われる 少しは やるのか
「明石に似てるな 親族か?」
「・・・‼︎」
「あの作戦は酷かった・・・最大の汚点だった な 明石も山野も俺が処刑されるのを回避させてくれようとしてたが まぁ結果はこうだ 」
「・・・貴方が時雨曹長か祖父から話は聞いていた 貴方は全ての責任負い処刑された筈だ」
「何故だろうな 俺にもわからないさ 気付いたらこう だからな」
「あ・・・アア・・・何これ 」
「・・・柘榴‼︎」
「やっぱり知らないか・・・あんな物まで持たせる位なら 報せれば良いのにな」
「ぐっ」
「なにガ・・・起キて・・ワカらな・・・モ・・・ワタ・ナ・・殺セ・・・」
「あぁ 漸く堕ちた」
柘榴の体に何処からともなくユニットが纏わり付き 体にリブが刺さる
その様はさながら拘束されている様で背徳感が漂う
『欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ』
ユニットが囁きかける
何を言ってる
もう手に入れた
「・・・化け物め‼︎」
青年が切りかかってくるが ユニットで受け止め 軍靴で蹴り飛ばすも直ぐに態勢を整える男
太刀筋が明石と全く同じだ 軽く避けて次はもっと重く
他の化け物は知能が無い こんな動きには対応が遅れるだろう?
「ガハッ⁉︎」
「さぁ 柘榴 これでずっと一緒に居れる
」
「・・・」
柘榴・・・だったモノを連れ 俺はまた荒野を彷徨う
次は独りじゃない 愛する人と一緒なのだ
一番かわいそうなのは少尉