表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷いの森の魔女  作者: 璃桜
第1章
6/17

魔女

「ラティナ!!飛べ!受け止めてやるから!」

「嫌ですーー!!無理ですよ!無理ですーー!!」


私は今、木の上にいます

何故?それの理由は、簡単です。

少しだけ時間を遡りましょう


「採取?」

「はい。ライオネルも来ますか?」


ライオネルと共同生活を始めてから、2日経ちました

ライオネルは、意外にも、炊事洗濯掃除などができる人でした

家のことを手伝ってもらっています

分担してやっているのですが、大変楽です

私は、普段やっていたことの半分だけをやればいいのですから


そして、私はいつも通り出かけようとした所、どこへ行くのかと問い詰められました

採取、と答えた所です

1人で家にいてもつまらないだろうと思った私の配慮で一緒に行かないか、と誘いました


「…行く」

「そうですか、そうと決まれば早速行きましょう」


ライナを呼んで、ライオネルと共に家を出ます

すると、


「あら?ダニエル…もしかして、ずっといたんですか?」

「うおっ!?なんで、あの時の魔物が…‼︎」


外に出るとそこには、ほんの2日前お世話になった、ダニエルことディールがいました

2日振りに外に出たのですが、どうやらあの後からずっと此処に居たようです

さながら、外飼いの犬のよう


「大丈夫です、ダニエルは安全ですよ」

「なんでそんなに冷静なんだ、お前は…」


ライオネルがボソッと呟いていましたが、気にしないことにします


「ちょうどいいです。ダニエル、少し鱗と爪を分けて頂いてもよろしいですか?」


ディールの鱗は、解毒に効き爪は麻痺に効く薬が作れます

ディールは気性が荒く、危険だと認識していたので、他のもので代用してそれらの薬を作っていましたが、やはり本物に勝るものはありません


「ギィ…」


すると、ダニエルは私に取りやすいように体を縮こめました

…何処と無く、可愛いペットのようです


「ありがとうございます」


お礼と思い、眉間の辺りを撫でます


「ギィギィ」


ダニエルは、尾を犬のように振りまくってます

ちょっと危ないです

さて、そろそろ行きましょう

と…思ったのですが


「おい。ついて来るぞ、あいつ」

「……」


ダニエルがついて来ます

どうやら懐かれてしまったようです

あの巨体でついて来られては、採取がしにくくなります


「あ、そうです。ダニエル、契約しますか?」

「えっ」


一つ、ダニエルに提案をします

魔物の特徴として、人に(この場合私ですね)従うと契約すると、姿を自在に変えることができるようになります

ただ、お互いの任意が必要になります

ダニエルはまだ子供だとはいえ、ディールの一端

やはり、契約は成立しないのでしょうけど


「ギィ!!(略:する!!)」


…と、思っていた時もありました

どうしたんです、ダニエル

誇りは何処に行きました?

プライドは??

まぁ、こちらには都合が良いので別に構いませんが…


「では」

「おいっ‼︎何やってるんだ!?」

「何って…契約ですよ?」


指を軽く切っていると、ライオネルに怒られました

何でしょう?


「ダニエル、舐めて下さい」

「ギィ」


契約には、いくつか手順があります

まずは、主人となる者の血液を魔物の体内に入れます

要するに舐める、または飲ませます

次に名前を与えます

これは、もうすでに付けているのでいいでしょう

最後に、血で魔物に印を書きます


「はい、終了です」

「…」


ライオネルが何か言いたそうにこちらを見ていましたが、気にしません

さて、最初の約束はどうしましょうか

契約の際に、1番初めにした幾つかの約束は、絶対に守られます

どんなことでもです


「ダニエル、まず第1に私やライオネル、ライナには危害を加えない

第2に自分の意思を尊重すること

第3に無闇な殺生はしないこと、それを約束して下さい」


え?ちゃっかり3つ言った?

当然です、これは外せませんので


「では、ダニエル。姿をライナくらいにして下さい。少し大きいくらいがいいです

デフォルメっぽくなって構いません」


すると、ダニエルは黒い靄に包まれ晴れた時には、ちんまりとした可愛らしいものに変わりました

小さな翼に大きなくりくりとした目

とても可愛いです


「あら、可愛いですね」

「ぴゃあ!」


鳴き声も可愛らしく変化しているようです

さて、そろそろ行きましょう

今度こそ



「ラティナ」


暫く歩いているとずっと黙っていたライオネルが私を呼び止めました

何処か、真剣な顔でした


「お前、もしかしてまーー…」

「あっ!!!」


ライオネルの声を遮って私は、声をあげました

木の上に、小さな怪我をしたキクルがいたのです

天敵であるノーズ(大きな鳥の形を模した魔物のことです)に襲われて逃げてきたのでしょう

咄嗟のことで、木の上に登ってしまったけれど、降りれなくなったみたいです


「今、行きます」

「はっ!?待て、あそこに行くのか!?高すぎる!危ないだろ!!」


ライオネルの言葉は無視して木に登り始めます

キクルが怯えてしまわないようにゆっくり上へ進むます


「あと、少し…」


私の横では、ライナとダニエルが心配そうに飛んでいます

いざとなったら助ける気でしょうが、2匹ともこの大きさですので助けは期待できません

手を伸ばして、キクルに声をかけます


「キクル、大丈夫です

傷の手当てをしましょう?」


怯えているキクルは、恐る恐る確かに私の方へやってきました

すると、


「ピィ!!」

「ぴゃー!!」


ライナとダニエルが声をあげました

そして、すぐにノーズの鳴き声

これは…まずいですね

ノーズはまだ、この子を狙っていたようです


「ラティナ!!」

「…っ」


キクルを引き寄せ、木の陰に隠れます

ノーズは、きっと狙っています

今出て行くとこの子諸共、食べられてしまうでしょう

ではどうするか、です

ノーズは最悪なことに、会話ができる相手ではありません

本能のまま、食事をする魔物です

森を住処にしていますが、森の外にも行く行動派です


ならば


「…すぅ……ピィーーーーー」


指で音を鳴らします

コレは、知能のない魔物の嫌う音

ノーズ対策です

ただ、問題は


「ピィ!!ピィー!!!」


ライナが、怒ることです

どうやら、この音はライナの声と似ているらしく真似するなということらしいです

先程の対策が上手くいったのか、ノーズは何処かへ行きました

良かったです

で、次の問題は……


「グルル…」


私の腕の中で威嚇している、キクルです

いきなり引き寄せたのですから驚いて当然です

キクルは、私の腕の中から抜け出して凄く威嚇してます

本当にノーズ様々ですね(皮肉ですよ)

どうしましょう

…仕方ありません

ライオネルから見えないように背を向け、宙に文字を書きます


「貴方に今だけ、魔法をかけます

意思疎通を図る為のものですので、害はありません。安心して下さい」


優しく、キクルの頭を撫でます


ーー貴方の怪我を手当てさせてね


ーー…わかった


キクルは、ゆっくりとこちらに戻ってきました

よかった、これで大丈夫そうです


「ライナ、ダニエル

この子を下に降ろしてあげて」


2匹にキクルを頼み、一息つきます

さて


どうしましょう


「ラティナ…お前、まさか」

「降りれません」

「お前ーー!?」


先程のキクル同然に、木の上から降りれなくなりました

どうしましょうね


「ラティナ!!飛べ!受け止めてやるから!」

「嫌ですーー!!無理ですよ!無理ですーー!!」


そして、冒頭に戻ります


「お前、森に住んでるのに木登りできないのか!?」

「高いところのことは、全部ライナがやってくれてたんですよ!」


ここまで高い木には登ったことありません

これは、本当にライオネルの言う通り飛ぶしかないのかもしれません

ですが、怖いものは怖いのですよ


「ライオネルっ……貴方をクッションにしてしまいますよ!!」

「あぁ、もう!!それでいい!それでいいから来いっ!」


さすが、男性です

頼りになりますね

なんて思いながら、深呼吸をします

心の準備は必要なのです


「ーーーっ」

「………くっ……」


ライオネルの胸に飛び込む形で、どうにか降りられました

勢いが良かったので、今私はライオネルを押し倒している姿になります

下敷きにしてしまいました、宣言通りに


「ライオネル、怪我に響いてないですか?」

「まずは無事か確認させろ、馬鹿…」

「…痛いです」


コツンと、軽く小突かれてしまいました

私よりもライオネルを心配するのは当たり前なのですよ

先日の怪我はまだ治っていないのですから


「怪我は、ない…な

よし、そこに座れ。説教してやる」

「えっ」


そのあと、ライオネルからこってりと説教を受けました

どうして怒られなければいけないのでしょう

やはり、下敷きにしたのが悪かったのでしょうか


「はい、できました」

「クゥ」


キクルの怪我の手当てを終え、代わりにキクルの毛を頂きました

幸い、キクルの傷は浅く、炎症もありませんでした


「ノーズに食べられてしまわないようにですよ」


もう1度だけキクルの頭を撫で、逃がします



「ライオネル、先程の話の続きをしましょう」

「…え、あぁ……

やっぱ、いい」


ライオネルは、そっぽを向いてそのまま黙ってしまいました

本当はね

ライオネル


貴方が言った言葉、聞こえていましたよ




『お前、もしかして“魔女”なのか?』




「…そうだったら、どうしますか?」


私は、小さく呟きました


「…?何か言ったか?」

「いいえ、なにも」



私は、一体なんなんでしょうね



「ピィ!(略:よろしくな!後輩!)」

「ぴゃあ?(略:ラティナ様どこ?)」

「ピィーー!!(略:無視するなよー!!)」


ライオネル

「なんだアレ」

ラティナ

「会話してるんですよ、多分」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ