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ぼく その22

「……分裂?」とぼくは訊きかえした。なにが「分裂」しているのだ、と思った。コハクさんはぼくが「分裂」していると言った。ぼくにはその「分裂」の意味がわからなかった。「分裂」という言葉を、ぼくは理解できそうにないと思った。まるで見当もつかなかったのだ。

「あなたは今、「分裂」しているのよ。ぱっくりとね。目隠しされて周りの声だけを頼りにして、ようやく振りかぶった棒が西瓜をたたいて二つに割れる。その片方があなたなの。それも綺麗に割れたわけじゃない。桃太郎の絵本みたいに綺麗な断面をみせるような切断ではない。棒で叩いたの。その力任せにふりきったことで二つになったの。とても歪に」

「それが今のぼくということですか」

「そう、その片方が今のあなた。それだけよ。あなたはとても歪に割れた。ひき裂かれた境目はとても出鱈目な形をして、噛み千切ったあとみたいになっている。だからそれにピッタリ合致するのは一つしかないのよ。もう片方の、おなじように出鱈目な割れかたをした方。それ以外はどれもしっくりこないものばかりよ。うまく補えない。つまり、そういうことなのよ。私にはあなたに必要最低限のことしかできないわ。逃げこんできた場所の、逃げこめる場所を提供させたりするくらいしか。私からはこれくらいしか言えないわ。だって私はすべてを知らないもの。あなたが「分裂」しているということしか知らない。だからこれだけしか正確なことは言えない。ヒントを出すこともできない。だからコウトくん、自分自身でやりなさい。これはあなた自身の物語よ。断片的に散ってしまった瓦礫を、あなたの歩みで紡いでいくの。縫合させるの。下手くそで構わない。不器用でかまわない。あなたの物語に、計算されたプロットや伏線なんてなくていいの」私もあなたと同じなのよ、と彼女は言った。

「わからないよ」とぼくは言った。

「雨に耳をたてなさい。耳を欹てなさい。雨はなにかを言っている」


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