Merry Christmas☆~前島さんの場合~
「よしユーヤ今日はクリスマスだ何か寄越せさあ早く」
「……何で誰も彼も僕にプレゼントを要求するのでしょうか」佐々木さんといい田中さんといい花笑ちゃんといい加賀さんといい……というか花笑ちゃんはともかく田中さんはグレーとして、後の人たちはどっちかというと僕にプレゼントをくれる側なのでは? まだ僕、誰にもプレゼントもらってないんですけど。……まあ確かに、もうプレゼントを誰かに要求するような歳でもないんですけどもね。
もうプレゼントを誰かに要求するような歳でもないんですけどもね!!
……思わず力んでしまった。
「あー、はいはい、それで? 前島さんは何が欲しいんですか」
「何をやさぐれてんだよ」
「いえ別に」
いいぜ、もう何でもくれてやるぜ。オレのできる範囲でな!
という気分。残念ながら僕は神龍ではないので、何でもとはいかない。限界ありまくり。
やさぐれる僕に、前島さんは鼻で息を吹いて、
「冗談だよ。さすがにこの歳になってクリスマスプレゼントなんてたからないって……お年玉はたかる予定だけどな」おい「まつげがな、うちでクリスマスパーティやるんだと。んで、その下準備の買い出しに行ってきてくれって」
「へえ、パーティですか」
「そ。これが買い物のリスト」
メモ用紙、かと思ったらなんとUSBだった。え、何でこんなところでハイテク。
携帯端末に差し込んでデータを開いてみる。
「……うわ、多いですね……」
っていうか店の指定まであるんですけど。
「材料の取り置きとか取り寄せとかしてるらしくてな。あいつ商店街じゃ妙に顔利くから。だからまあ、半分くらいはそいつの回収らしいぜ」
「回収ったって……僕は商店街の方はあんまり行かないので、店の位置とかわからないんですけど」
「ああ、その辺は大丈夫。水戸ちゃんも一緒に行くことになってるから」
「水戸さんも?」
「おう。多分今部屋にいるから、行くときは呼びな」
「はあ……」
まあ、水戸さんと一緒なら安心かな……まつげさんと一緒に商店街によく行ってたはずだし、目利きも利くはずだし。
「それじゃあ……まあ、行ってきます」
「おう。――あ、ユーヤ、ちょっと待ちな」
はい? と振り返ると、顔面めがけて豪速で何かが飛んできた。直線に。すんでのところで受け止める。
「危な……なんですか、これ?」
「ん、クリスマスプレゼント」
「…………!!」
「何だよその顔は」
絶句だ。仰天だ。言葉もないとはこのことだ。
ま、まさか前島さんが! あの前島さんが誰かにプレゼントを! ましてやあろうことかこの僕に、く、クリスマスプレゼントを!?
感動だ……
「泣きそうだ……」
「何だよ、そんなに嬉しいのかよ」
「ちなみに、これは」
「ん、ああ、財布。お前、この間新しい財布が欲しいって言ってたろ」
それは本当だ。
う、う……あれ、何だろう、目から煮汁が。
「あ、有り難うございます……」
「おう。泣くほど喜んでもらえるとはな。あたしも満足だ」
「前島さんって……」
「うん?」
僕は目尻の涙を拭って、思わず言った。
「前島さんって、意外と大人だったんですね」
「おいコラお前ちょっと表に出ろ」