それは、しゅちゅちゅちゅ
「たっくろー!」
病室に入ると、弥紀の声が聞こえ、躰にドシリとした重みが走る。
目の前にはいつも通りニコニコしながら俺に笑い掛けてくる弥紀がいた。
「お、お前は飼い主に忠実な犬か!」
おーおーおー、ビビった。
いやはや、まさかこっちに迷わず走ってくるとは俺でも予想できなかったと言うかーんー、まぁ、ビックリした。
「あー、もう、アンタ早すぎー……って、何してんの…」
後ろを見ると、目を丸くしながらこちらを見ている胡桃がいた。
…ああ、そう、そうだった。
今日は胡桃と一緒に弥紀の見舞いでも行こうかと提案したのが俺だった。んで胡桃は弥紀と初めて会うんだっけ。…どうだったっけなあ?
「まー、仲がよろしくてー?」と言って胡桃はニヤつきながらクスクス笑ってやがる。
「あー、まぁ、そー、だ、なー…」
俺は弥紀の肩を掴み、ベッドの方へと連れて行く。
そして弥紀をベッドに座らせてから、弥紀の手にスーパーで買ってきたお菓子の詰め合わせセットを置く。
「…お菓子?」
「そうだよ、弥紀ちゃんの為に買ってきたの」胡桃はそう言い、弥紀の頭を優しく撫でる。何つーかこんな胡桃みたの初めて…。小さい子には優しいんだな、俺にはいっつも厳しく当たるくせに。
「えへへ、ありがとー。開けてー」持っていた袋を手に持ち、音を出しながら袋を開けた。
「はい。弥紀ちゃん」小分けされたお菓子を手渡され、そのまま口に放り込んだ。
「あ、俺には?」
「あ、り、ま、せ、ん、よ?」
胡桃は笑顔のまま俺に笑い掛ける。てか、それ買ったの俺なんだけどなー、マジかよ。
「ねぇ、たくろー」弥紀は俺のジャージの裾を掴み、こちらに来て、と催促する。
「なーんだ、み」
頬に何か? あ、何か?
あれ? 何か物凄く、あ?
「えへへ、ちゅーちゅっちゅー」
は?
え、ちょ? あ? ちゅー?
「…………………………………………………………………………………………は?」
ちゅー?
「きゃー、頬チュー」
胡桃、お前は棒読みで言うな。
てか、あれ?
ん?
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴が病室から病院内へと、すりぬけるように只響いて行った。…てか、これ、異性の方からされた、初ちゅーっていうか、い、は、ど、どうすれば、はぅううぎっぎぎぎ。
あ、多分、今、俺の人生が終わったんじゃ? うふふ、おっけー。
全くおっけーじゃねーよ!!!! なんだよ、この、うああああああああああああああああ!!!!!
物凄く、きょうはゆううつなきぶん。
いや、ゆううつを通り越して、あ? なに、これ?
あああああああああ!!!!!!!!!
いっみわっかんねーー!!!!