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三章 第六十一回

「今日は首尾よく土曜だし、平林を呼び出すにゃ丁度、いいや」

 一人悦に入り、上山は両腕を伸ばすと欠伸をした。時の余裕があるから、取り分けて急ぐ必要もない。家のことも食事も、そして幽霊平林を呼ぶことも適当なタイミングで行えばいいからだった。上山は朝刊をキッチンへ持って行き、軽い食事をしながら記事に目を走らせた。記事の詳細は、ユネスコ内に設置された特別部会の構成や、予想される各国の主だった言語学者の名前が表で列記されていた。そして、別の欄には、今後二ヶ年に及ぶ地球(世界)語開発の大まかなる時期のスケジュールが掲載されていた。上山は作っておいたフレンチトーストを軽く温めながら記事を読みふけった。上山がふと、腕を見ると、すでに九時近くになっていた。

「まずまずだな…。やはり二日で効果が出たか…。しかし問題は、二年後にどうなっているかだが、これだけは、どうしようもない…」

 上山は暗に、待つ以外はないか…とあきらめかけた。

━ いや、待てよ! 如意の筆の霊力なら、すぐとはいかないまでも、短期間に完成するはずだ… ━

 上山の脳裡を駆け巡る考えは、今後の可能性を探っていた。

 この頃、霊界の幽霊平林に異変が起こっていた。そのことに気づいたのは、他ならぬ幽霊平林自身だった。それまで見えていた自らの姿が消えているのである。御霊みたまになっているのなら、それはそれでいいのだが、どうもそうではないのだ。幽霊の姿のまま透明になっている自分に、住処すみかの中で気づいたのである。ただ、消えていないのは胸元に挿した如意の筆と白い三角頭巾で、唯一これが、一抹の不安とともに幽霊平林の存在を示していた。上山なら、あたふたと自らを見失うところだが、死んでいる幽霊平林にとって、別に驚きとか不安感とかは、まったくおきない。ただただ、今の現実を受け入れるのみなのだ。だから、この場合、幽霊平林は単に、あっ! 姿が消えている…と、自分の姿を漠然と捉えているだけだった。

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