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三章 第五十四回

とても夕方まで待てないな…と、幽霊平林は上山の社屋を目指してフワリフワリと漂い始め、やがて、スゥ~っと加速した。もう昼が近づいていた。瞬時にパッ! と消え、上山がいる社屋内へパッ! と現れることも出来たのだが、心地よい陽気の中を、スゥ~っと流れるのも乙なものだ…と、幽霊平林には思えていた。

 幽霊平林が田丸工業の社屋内へ透過したのは、それから二十分ほど経っていた。上山が食堂へエレベーターで昇ったときである。その上山の姿を幽霊平林は、すぐ声をかけようとしたが、周りには社員が数人いたから、こりゃ駄目だ…とはばかられたのだ。当然、上山の周りに人がいないタイミングを探らねばならない。今までの経験からすれば、食堂の賄い場で、上山がB定をトレーに乗せて席に着く直後までの、ほんの束の間以外、上山の近くに人物がいないという機会は、ないようだった。そこで、幽霊平林は、その数少ないチャンスを待つことにした。上山は前方を進んでいるから、振り返らない限り幽霊平林がいることに気づかない。

 上山は賄い係の江藤吹恵に食券を渡してB定を注文している風に遠目に見えた。幽霊平林はB定がトレーに乗る瞬間まで、じぃ~っとタイミングのいい瞬間を探った。過去にも、このシチュエーションは、あったぞ…と幽霊平林は思いながら、トレーを持ってテーブルへ移動する上山を後方からスゥ~っと追った。運よく、上山は誰もいないテーブルへ近づき、椅子チェアーを机の下から引き出して座った。むろん、その前にトレーはテーブル上へとおいている。

『課長!』

 上山はギクッ! として一瞬、後方を振り返ったが、何もなかったような素振りで姿勢を元に戻した。そして、視線をトレーに向けながら、割り箸を手にした。

「君か…。ここは目立つから、屋上で…」

 語尾をぼかしながら、小声で上山はつぶやいた。

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