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三章 第九回

『…、食物は作らねば、と云われますか?』

『そうよ。それが本来、そなた達が生前、経済と呼びおるもといよ! 分かるか!』

 霊界番人の荘厳な声に、さとすような優しさが加わった。とはいえ、幽霊平林にしては、霊界番人が云ったことが余りに抽象的で、さっぱり分からなかった。禅問答ではなく、霊界番人は飽くまでヒントとなる暗示を幽霊平林に与えたのだった。

『ではのう…。励めよ!』

 霊界番人の声が途絶えると、光輪は導きの光線上を静かに昇っていった。そして、その光線は下方より少しずつ消え失せた。

『人は武力では食べられないか…』

 食べられなければ、生活は出来ない。それは道理にかなった話で、ちっとも間違っているようには思えない。しかし、そうだとして、自分と上山がどうすればいいのか、までは幽霊平林には分からない。そうだ! ともかく、この話を課長に報告して、今後の策を練ろう…と、幽霊平林は考えた。

 人間界へパッ! と現れた幽霊平林が辺りを見回すと、外は、薄っすらと早暁のきざしが空を染め始めた頃で、人々は、まだ寝静まっていた。あわてたためか、幽霊平林が現われたのは上山の家の屋根上で、ギコギコと自転車を繰る新聞配達の少年が垣間見えた。幽霊平林は一瞬、しまった! と思った。慌てて現れたのが運のきで、うっかり、霊水瓶がめの計測を怠っていたからだ。当然、人間界の時間は想定出来るはずもない。そんなことで、幽霊平林は上山の家の屋根づたいをプカリプカリと漂いながら、上山を起こすべきか、はたと迷った。上山に熟睡中の真夜中は困るぞ、とは釘を刺されてはいたが、今はもう、白々と夜が明け染める早暁だった。

『思い切って、起こそうかな…』

 ひとりごちて、幽霊平林はスゥ~っと家の中へと透過していった。

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