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二章 第八十七回

これは、鉄砲や弓矢のまとに当てる競技精度を高める練習に似通っていた。幽霊平林だけでも、ある程度は空間移動して現れることは出来る。しかし、国外、特に紛争が起こっているアフリカのソマリアともなれば、これはもう、かなりの距離にあり、如意の筆の偉大な神通力を借らねば、瞬時に空間移動するのは不可能なのだ。さらに、上山という人体も加えて移動するとなれば並大抵のことではない。国内で試した青木ヶ原樹海とは訳が違った。幽霊平林は最初、近隣諸国から練習を始め、次第にその距離を延ばしていった。無論、現れる位置は、霊界万よろず集というあらゆる情報を入手できる本を弔文屋ちょうもんやで筆記具とともに買い求め、十分に調べた挙句の実行である。

 綿密に地のりを調べるといっても、具体的には、よく知られたその国の建造物や地理的に名を知られた場所がターゲットになる。最近、撮られた写真やビデオなども参考になるのだが生憎あいにく、霊界にはそれらの世俗的なものがなかったし、第一、電気などという俗物は存在していなかったから、人間界での情報入手を余儀なくされ、幽霊平林は何度か人間界へ出かける破目になってしまった。まあそれでも、情報さえ得られれば、ほぼ正確に他国のその場へ現れることは可能となっていったのである。その間、約半月を要した。半月もしの飛礫つぶての音信不通では、さすがに上山も気が気ではない。しかし、非常手段の左手首をグルリ! と回すアノ行為以外、自分からコンタクトは取りようもなく、ただただ幽霊平林の出現を待つしかない上山は、今一つ落ちつかなかった。

 幽霊平林が上山の前へ現れたのは、そうした半月後のある日である。上山としては、もう限界だ…とばかりに、左手首をグルリと回し、非常手段で呼び出そうとしていた矢先である。それも勤務日で、場所は会社のトイレだった。

『課長! OKです。もう完璧そのもの! 現れるターゲットは正確に捕捉できます』

「君なあ! 現れて、すぐ、それはないだろ。それよか私も待っていたんだよ。今、呼び出そうとしてたところさ」

 上山は左手首を幽霊平林に示して云った。

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