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二章 第四十四回

 そうなれば早速、上山のところへ…とは思えたが、よく考えれば、今の時刻が分からない。霊界には時の流れがない。だから異次元空間ともいえるこの世界では、人間界と似通ったところがあるものの根本的な点で差異が見られた。だから、上山の人間界が今、いつなのかが幽霊平林には分からなかった。むろん、少し前、上山に呼び出されたのが夜だったから、そこから辿れば真夜中から早朝だとは推測出来た。で、かなり遅らそうと判断した。

「え~~、…で、ありまして、まことにお目出たい媒酌人の栄誉に浴し、恐悦至極でございます…」

 岬と亜沙美の結婚披露宴が、ここ照天ホテルの松の間で華やかに催されていた。このことを幽霊平林は知らない。

 ひと通りの挨拶と乾杯の音頭をとり終えると、上山は前に立つスタンドマイクを左手で持ち、そして話す寸前、なにげなくグルリと左手首を回した。当然、幽霊平林の記憶にインプットされた端末回路は反応し、幽霊平林は引き寄せられるように霊界から人間界へ瞬間移動した。

『あっ! 課長。今、行こうと思っていた矢先だったんですよ』

「…」

 披露宴会場の大勢の招待客を前にしていては、さすがに上山も返せない。仕方なく、右手に持った原稿を軽く振り払う仕草で来賓客へ一礼して檀を降りた。そして上山は、足早に部屋裾へと姿を隠した。そんな上山を当然、幽霊平林はスゥ~っと追った。メイン司会は照天ホテル側が任されているから、ホッ! っとした上山なのだが、まさかの幽霊平林の出現で、ふたたびドギマギさせられたのだ。

「なんだい君! こんなお目出度い席に…」

 上山は早く席に戻らねばならないから、無愛想な迷惑顔で云った。面白くないのは幽霊平林である。

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