第十四回
車を飛ばして十分前後だから、すぐ家には着く。上山が車を裏のガレージに入れて表へ迂回すると、玄関には幽霊平林が蒼白い顔の笑顔に例の三角頭巾を纏い、白装束で立っていた。
「おお…、もう来てたのか。今、開けるからな」
『ふふっ…。僕は入ろうと思えば、どこからでも入れますよ、嫌だなあ…』
「ああ、そうだった。平林は幽霊だったな」
『その幽霊っていう云い方、やめてもらえません?』
「じゃあ、どう呼べばいいんだ」
『…そうですね。平さんとか、なんとか』
「平さんか…。偉く軽いな。まあ、いいだろう」
上山は鍵を開けると家の中へ入った。そして、外に待たせた幽霊平林を入れようと呼ぼうとした。
『私なら、もう入ってますよ、課長』
上山が振り向くと、幽霊平林は、すでに上がっていて、廊下に立っていた。ただ、踝の下は透けて見えなかった。
「なんだ…。もう上がっていたのか…」
上山は少し慌てぎみに靴を脱ぐとフロアへ上がった。
夕暮れにはまだ少しある時間帯で、辺りは明るかったから、ライトは必要なかった。ダイニングルームは採光が豊富で、日中はもちろんだが、夜も辺りが暗闇に閉ざされた頃、ようやくライトのスイッチが必要なほどの明るさに恵まれていた。上山は図書館で借りた『霊視体験』の本を無造作にテーブルへ置いた。それを幽霊平林は目敏く見ていた。
『霊視体験ですか…。確かに、僕が見えている課長は、そうですよねぇ…』
幽霊平林は意味もなく納得した。




