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第百十八回

「その意味では、上昇によって余計な体エネルギーが消費されたことは、むしろいい結果といえた。だが、話はそう単純には終結せず、泥沼化する方向へと進んでいった。泥沼化する状況は、幽霊平林ばかりではなく上山にも云えることだった。ただ、その事実をこの時の二人は知らなかった。

「おお…、ずっと天まで昇って行くもんだから、どうなるんだ! って心配したぜ」

『いやあ…、僕も冷や汗ものでしたよ。こんなことって最初で最後に願いますよ!』

「そんなこと云われても、私のせいじゃないぞ」

『…ああ、そうでした。課長のせいじゃないんでした。すべてはゴーステンか…』

「そう、そのゴーステンさ」

『魔のゴーステン…。こりゃ、これを消滅させないと駄目ですね、なにがなんでも…』

 幽霊平林は真剣な声で、そう云った。

「ああ…、私にもそう思えてきた」

 上山も幽霊平林に同調した。二人は少し急ぎ加減で歩いたりスゥ~っと流れた。前方に駅舎が近づいてきた。

「ゴーステンの配合のとき、どうのこうの…と、教授は云ってたなあ」

『ええ…。教授も、つまらないことを考えたものです。結果、僕も今のようなことですから、いい迷惑ですよ!』

 少し怒り口調で幽霊平林は云った。

「まあ、そう云うなよ。なにもそうなると教授も考えてのことじゃないんだから」

『はあ、それはまあそうですけどねえ…』

 上山の言葉で、仕方なく幽霊平林は溜飲を下げた。

 二人は駅で別れ、それから何事も起こらない二日が流れた。もちろん、上山もその二日の間、手をこまねいていた訳ではない。あれこれと、ゴーステンそのものの詳細なデータを探りはしたのである。上山は幽霊平林と約束した午後六時に駅を出た所にある前広場で待っていた。六時にぐるりと首を一回転し、それを合図にスゥ~っと幽霊平林が現われる、という手筈てはずになっていた。


             第一章  終


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