第一章:ハプニング・バースデー
すみません、前話ラスト訂正しました。
ようやく第一章始まります。
暇つぶしにでもお付き合い頂けるだけで嬉しいです。
「またこの夢…」
まだ少し重たい瞼をこすりながら体を起こす。一つ伸びをしてから、二段ベッドの階段を降りた。
最近、孤児院にいた頃に出会った彼の夢をよく見る。孤児院の院長にその話をしたせいでひどくぶたれて以来、誰にも話していないけれど、わたしにはあれがただの幻、白昼夢とは到底思えなかった。
「…よし、行くかー」
軽く身なりを整え、鞄を手に取り、アパートを出た。
わたしの名前は十六夜優羽。このアパートで一人暮らしをしている16歳だ。
12歳のとき、収容されていた孤児院での不正経営・児童虐待の事実が発覚したせいでつぶれて以来、アルバイトをしながら学校に通いつつ何とか生活している。
通っている学校は普通の公立高校。偏差値が結構高く、進学率もいいのにかなり自由な校風でなかなか人気が高い学校だ。
ただ。一つ問題がある。
「おっ、十六夜さんじゃーん」
声をかけてきたのは茶髪にピアスが目立つ女の子一人と目つきの悪い二人の男子。
「…沢さん、新垣くん、加藤くん」
「なんだよ、あいさつはしてくんねーのかよ」
そう言いながら新垣くんが肩を小突いてくる。
そう。この高校は偏差値が高い分一年生の時から授業がキツい。必然と生徒には鬱憤がたまるわけで…
「相変わらず気味悪い目ェしてるくせに、生意気だろ、てめー」
「普通ありえないでしょ、その目。よくそんなので学校来ようとか思うよねー」
変わった目の色を持ったわたしは、格好のストレスの刷毛口だった。
まぁでもたぶん、みんなにストレスが溜まってなくてもわたしは注目されていただろう。
…金色の目は。さすがになかなかありえない。
「…おはよ」
慣れって恐ろしい。毎日のように絡まれていたら、こんなことでは動じなくなってしまった。
軽く微笑んでみてから彼らを素通り、校門へ。
「あーびびった」
「あそこで笑うかよフツー」
「てかあの目さえなければものすごい美人じゃね?」
「逆に目立って売れそうじゃない?アイドルとかなれば」
「あーいえてる」
後ろで何かしゃべってるけど聞かない聞こえない。どうせ悪口だろうし。
沢さんと新垣くんと加藤くんは完全なるモブ。名前はあるけど本編には絡まない子です。