第4話
長らくお待たせいたしました。
部屋に入るとアキはすぐさまベッドにダイブした。
最近、父はケモノ狩りのことしか考えていない。先代までの功績に比べて、自分が結果を出せていないからなのだろう。
「だからって…俺を巻き込むなよ…」
と、ドアが開いて、カイが入ってきたようだ。
「アキ?さっきの音なに…?」
「んー…」
アキとカイの部屋は同じだ。
だからこの部屋にはベッドがふたつ並んでいる。
カイがアキの隣、自分のベッドに転がってきた。
「ほっぺた、赤くなってる…」
そう指摘され、慌てて頬を隠すが、もう遅い。
「それ、どうしたの?さっきの音と関係ある?」
ちょうど好奇心旺盛な年頃だ。
「誰に叩かれた?いつ?」
アキは沈黙を決め込むが、質問は止まらない。
「………………」
「ねぇ、どうしたの?」
アキが背中を向けても、弟は回り込んでくる。そしてまた追求の繰り返し。
「アーキー」
「……………うるさい」
「うるさくないし!答えてよ」
背中をぺしぺし叩かれる。
普通だったらこのへんで怒りが頂点に達して、カイを部屋から追い出していただろう。
しかし今はそんな気分にもならなかった。
「はぁ…。カイには関係ないだろ」
「あるもん!僕もう10歳なんだよ」
「もう10歳?それなら、その子供っぽいしゃべり方やめろ」
ガツンと言ってやると、カイは自分のベッドに戻っていき、やっと静かになった。
と、思いきや、枕を持って再びやって来た。当たり前、と言うように、アキの隣にうつ伏せに転がる。
「アキが言うまで、僕は寝ないからなっ」
語尾を「ねっ」から「なっ」に換えたのは、子供っぽくならないよう、カイなりに気を付けたつもりなのだろうか。
「…じゃ、俺はカイが起きてる間は言わない」
「なにそれ!そんなの!~っ」
足をバタバタされると、それに合わせてベッドが揺れた。
「こら、壊れる」
それに音を立てたら父さんが見に来るだろ。そう言いかけてアキは慌てて口を閉じた。
そんなこと言ったら、カイが連れてくるに決まっている。
今はもう父とは顔を合わせたくないのだ。
「言ってくれないと、やめないんだからな!」
「言葉遣い、不自然」
「うるさい!」
本当にそろそろ静かにしてくれ。
「意地悪!」
父さんが来るだろ。
「鬼!」
「そこまで言うか?」
「なんで教えてくれないの―――!」
足をバタバタする音は、もはや騒音と言ってもいいほどうるさい。
「…あーもー…わかったよ」
「やったぁ!なんでなんでっ?」
「カイが小さいから」
「……………それ、答えになってない!アキのバカ!」
また暴れだすカイを、今度はしっかりと捕まえた。
「いや、なってるし。カイがもっと大きかったら、俺はこんなことにならなかったの」
カイはきょとんとした表情になっている。
「どーゆうこと?」
小さな溜め息をつくと、アキはこれまた小さな声で言った。
「明日…父さんとケモノ狩りに行くことになった。で…行かないって行ったら…殴られた」
「え――?なんで行かないって言うの?」
僕だったら絶対ついて行くのに、と予想通りの反応。
「…さあ、な。とにかく、明日はいないから」
「僕も行きたい!」
「……楽しくないと思うけど?」
つ、次こそ1週間以内に…っ