第17話
銀華オオカミを探してきょろきょろしているミナトを横目で見ながら数歩歩いた時、ぽとり、と肩に何かが落ちた。
その何かが首の辺りをくすぐる。
「ひ…っ」
堪らず手で払い落とすと、ミナトに背中に軽く蹴りを入れられた。
「アキ!なにすんだよ、かわいそうだろ!」
「かわいそうって、何が!」
くすぐられた首を押さえて言い返す。するとミナトは頬を膨らませて地面を指差した。
「あいつがっ!」
指差した先には、特徴的な尾をした生き物。
チチッ、どうやら小さな鳴き声の主はこれまた小さな身体のリスだ。 薄い桜色の身体、桜氷リスだろうか。
鳴き声がどこか不機嫌に聞こえる。
「ふざけんなよ、二本足!…だってよ」
「ミナト、わかるのか?」
「え?そんなわけないじゃん」
「…………」
こういう時、下手に反論するとミナトは調子に乗るということにアキは気づき始めていた。だから無言で、先を行くリオを追うことにした。
チチッ
先ほどのリスが木を駆け登っていった。
それを何気なく視線で追って、アキは愕然とすることになる。
「…な゛」
桜氷リスが増えていた。いくつにも分かれた枝を埋め尽くすほどのリス。それも1本の木にだけではなく、アキたちを囲むように四方の木に集まっている。
「アキがあいつのこと苛めたから、集まって来たんだろ!」
数分前まで銀華オオカミを蹴り飛ばすとか言っていたミナトも、あまりに異常な光景に後退りしている。
「…それほんとか?リオ?」
有り得ない数のリスに苦笑いしながら聞くと、リオも苦笑いしながら答えた。
「久々の訪問者だからな。警戒しているらしい」
だれが?と尋ねる前に行ってしまったリオ、少し足早になっている。
仕方なく首を傾げて彼女に続く。
――前方には、小屋が見え始めていた。
流れ的に、短いですが切りたいと思います。