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太陽-Beast Friends-   作者: 黒井 夕
第1幕 ウサギ跳ねたその朝に
10/30

第10話

そんな中、アキの父だけが笑っている。


「泊まるところがないんだろう?それなら、うちにおいで。ここに泊まるのは危険だから。怖い動物が出るかもしれないぞ」


別に亜人にとって野性の獣は危険の対象ではない。しかし、今まで暮らしていたと言っても、洞窟で寝るのは体には良くないだろう。

ミナトとアキは顔を見合わせた。


「ど、どうする」

「んなことオレに聞くなよ」

「お前のことだろ」


―――と、不意に父がミナトのほうへ手を伸ばした。


「なっ?」


どうやらミナトの頭のほうへのようだ。帽子を取られてしまうともうどうしようもない。

もしかして最初からばれていたのか?


「なっ、なんだよ…」


じりっと地面が重い音を立てる。


「なんで逃げるんだ?」

「別に…」


父はにっこりしているから余計に怖い。


「父さん、何して…」


そろそろ本当に不味いと、アキが止めようとしたが―――――遅かった。

迫る恐怖に目を閉じたミナト。

頭に、帽子に触れる手。


「よろしく、ミナト君」


「は?」


その言葉に、ふたり同時に脱力した。

父はミナトの頭に優しく手を置いただけだったからだ。


「へ…は、はは……よろしく、お願いします…?」


それでいいのか不安だったが、ミナトが大嫌いなヒトになでられ、ぼーっとしているのを見て、ついつい笑ってしまった。


「帰るか」


やることは全てしたと、さっさと歩き出す父。


「アキー…オレどうしよ…」

「そんなこと言ったって来るしかないだろ…。でも、先に教えとくけど―――――」

「ああ、あのヒト、ハンターなんだろ」

「ハンター…か。ま、そうだけど」


「おーい、遅れると帰れなくなるぞー」と、遠くから呆れ声の父が二人を呼ぶ。

アキはたたっと走ってミナトを肩越しに見た。

ミナトはしばらく戸惑っていたようだが、やがてぴょんと跳ねて追いついてきた。


「こら。ばれてもいいのか」

「あ、やべ…」






「ただいまー」


アキは一度我が家へ駆け込んでからミナトのことを思い出して、顔だけひょこっと覗かせた。


「ほら、入れよ」

「でもよー」


いざとなってみると怖くなったのか、玄関への一歩をなかなか踏み出そうとしない。


「頑張ってここまで来たんだから」


アキの家に着くまでには、街の大通りを通り抜けてこなければならない。裏道を通る近道も知ってはいたが、おかしな行動をして父に怪しまれてはたまらない。

帰り道の間中ミナトはアキにしがみついて、「アキ、ヒトだ、ヒトがいっぱいいる…っ」と震えていたのだが、なんとかここまで来たのだった。


「ミナト君?どうぞ、遠慮はいらないよ」


いきなりドアが大きく開き、バランスを崩したアキを無視して、父はミナトを家の中へ引っ張り込んだ。


「ここは今日からミナト君の家なんだから」


玄関をまっすぐ行ったところにあるダイニングから、カイが出てきた。


「お父さん、アキ、おかえり!……あれ?」

「な…なんだよ…」


カイに見つめられ、ミナトはまたしてもアキの後ろに隠れた。


「誰?」

「ミナト、だよ」


いくら経っても顔を出そうとしないミナトの代わりにアキが答える。


「アキの友達?遊びに来たの?それなら僕に部屋に行こうよっ」

「待てこら、勝手に話を進めるな。この時間に遊びに来るとかおかしいだろ。それにあの部屋は、僕の部屋じゃなくて、僕達ふたりの部屋だろ」

「じゃあ、僕たちの部屋行こっ」

「なあ…俺の話聞いてたか?」

「え?」


そんなコントのようなふたりの会話を聞いていたミナトは恐る恐る顔を出した。


「あっ、ミナト!行こー?」

「何でもう呼び捨てなんだよ…。悪い、ミナト。こいつ俺の弟、カイ」

「よろしくね」

「馬鹿なだけで、危害は加えないと思うから」


なんだよーとふて腐れるカイ。

危害は加えない?うそだ。

今はいいけど、オレの耳を見たら、豹変するに違いない。

両親を殺したあいつのように。あいつは血の中で笑ってた。遠目でよく見えなかったけど、ふたりを殺して狂ったように笑ってた。


「ミナト?」


ぺしっとでこピンされてミナトは我に返った。顔のすぐ前でアキがにやっとしていた。


「いってぇなぁ…」


そんなことをしているうちにダイニングから父がふたりの名前を呼んだ。

ミナトをくっつけたままダイニングに向かうと父と母が並んでテーブルについていた。


「話は聞いたわ。ミナト君」


母にうながされて、向かいに座る。

カイは椅子が足りないため、ぶつぶつ言いながら立っている。今度もうひとつ椅子を買わなきゃね。と母が笑っていた。


「……で、ミナト君はこれからここに住むってことでいいのよね?」

「ああ。…なんか、そうなった」


帽子に触れる。

不安になった時のくせなのだろう。


「私は賛成だから、安心して。もうふたりもいるんだもの、ひとりくらい増えたってかまわないわ」


ミナトの不安な表情を読み取ったのか、母はそう言った。


「やったな、ミナト」

「これは…喜ぶべきなのか?」


ミナトがつぶやいたのをどういう意味にとったのかは知らないが、父は豪快に笑った。





またお気に入りが増えてる…っ


そんなわけで調子に乗って更新してみました。


夏休みの課題は放置です。

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