「苦労してプロットを組み、キャラクターを造形し、文章を推敲するプロセスそのものに価値を見いだす作家が多くいます。」――それは作り手側でしょ? 読む人には関係ないじゃん?
「苦労してプロットを組み、キャラクターを造形し、文章を推敲するプロセスそのものに価値を見いだす作家が多くいます。」――それは作り手側でしょ? 読む人には関係ないじゃん?
確かに、読者側からすれば「面白ければ、プロセスがどうであれ関係ない(作り手の苦労なんて買う側には関係ない)」という意見はもっともな視点です。
実際、エンタメの歴史を振り返っても、消費者が楽しむうえで「裏でどれだけ苦労したか」よりも「目の前の作品が面白いか」を重視するのはごく自然なことです。
では、なぜ「読む人」の立場からもAI小説に対して反発が生まれるのかというと、作り手の苦労への同情というよりも、「読書体験そのものの質」や「面白い作品に出会うエコシステム」が脅かされるという実利的な懸念があるからです。
1. 「玉石混交」どころではないスパム的な質の低下
「なろう」のような投稿サイトは、プロからアマまでが自由に投稿できる反面、もともと玉石混交の状態です。そこにAIによる低クオリティな量産テキストが加わると、検索やランキングが中身の薄いテンプレ文章で埋め尽くされ、本当に面白い作品を探し出すのが困難(ノイズが増える)になります。読者にとってこれは単純な被害(時間のロス)です。
2. 「人間を描いたもの」が読みたいという心理的欲求
物語を読むとき、読者は無意識のうちに「これを書いた人間の意図、悪意、熱量、あるいは歪んだ情熱」といった人間臭い気配を探しています。
AIの文章は、統計的に「それっぽい言葉」を並べているだけで、背後に意志や体験がありません。そのため、少しでも読み進めると「あ、これ中身が空っぽだな(人間が考えていないな)」と冷めてしまい、読書への没入感が損なわれてしまいます。
3. 「続きが読めなくなる」という長期的なリスク
もしAI小説がランキングを牛耳るようになると、人間であるプロやアマチュアの書き手が「こんな環境で書いても意味がない」と創作をやめてしまったり、サイトから去ったりする可能性があります。結果として、読者が本当に読みたい「人間の手による面白い作品」の供給自体が枯渇してしまうという懸念が、読者側にもあります。
このように、「作り手の苦労」そのものというよりは、「結果として面白い作品に出会えなくなる」「読書体験の質が落ちる」という実害を読者が恐れている面が、反発の大きな理由になっています。




