有望技術
日本が現在、国際規格の主導権を握り、ビジネスでの優位性を築こうとしている分野で、特に有望と目されている領域は以下の通りです。
1. 自動運転システム(高速道路での運転交代技術)
2026年4月に発行された国際規格「ISO 23792-1:2026」および「ISO 23792-2:2026」は、日本が主導して策定したものです。
内容: 高速道路における「運転交代」を前提とした自動運転システム(Motorway Chauffeur System)の要件と試験方法を標準化しました。
戦略性: 「システムが運転し、人間が介入できる」という日本が得意とするレベル3自動運転の安全基準を世界ルールにすることで、海外メーカーが日本市場やグローバル市場に参入する際、日本の規格に準拠せざるを得ない状況を作り出しています。
2. ペロブスカイト太陽電池
ご質問いただいた通り、現在もっとも国策として規格化が急がれている分野です。
戦略性: 単なる「発電効率」の競争ではなく、「建材一体型(窓や壁面)」としての設置規格や、日本独自の耐久性試験法を国際標準に組み込むことで、中国勢の「安価なパネル」が簡単には入り込めない高付加価値市場を形成しようとしています。特に、建築基準法との整合性を担保した「設置基準」は、後発の海外メーカーにとっては高いハードルとなります。
3. グリーン・トランスフォーメーション(GX)関連技術
「環境性能」を新たなルールにする動きも活発です。
内容: 炭素排出量の算定方法や、リサイクル性の高い材料の評価基準など。
戦略性: 日本が伝統的に強い「省エネ技術」や「製造プロセス」を評価対象に含める規格を提案しています。これを欧州諸国の環境規制とリンクさせることで、価格競争ではない「環境価値」での差別化を図っています。
4. 未来の有望領域:量子技術・光電融合
現在、政府が国際連携を強化している分野です。
内容: 量子コンピューティングや、光技術を半導体回路に組み込む「光電融合」技術。
戦略性: まだ黎明期にあるため、今から協力体制(例えばシンガポールや欧米との覚書)を築きながら、標準化の議論に初期から関与することで、「技術のルール」を最初から自分たちに有利な形で作ろうと動いています。
「規格を握る」ための日本の変化
かつての日本は、優れた製品を作っても規格を他国に委ねる「ルールテイカー(受容者)」でした。しかし現在は、「研究開発の段階から標準化戦略をプランニングする」という「日本型標準加速化モデル」へ転換しています。
なぜこれらが有望なのか?
これらの共通点は、「単体性能だけでは測れない、社会システム全体への組み込みが必要な技術」であるという点です。
自動運転なら「道路インフラ・法規」
ペロブスカイトなら「建築物」
GX技術なら「環境インフラ」
これら、「製品が使われる『場所』そのものを押さえる」という戦略が、かつての失敗を繰り返さないための今の日本の勝ち筋と言えます。
規格争いという視点で見ると、今の日本は「孤軍奮闘」するのではなく、「欧州など環境価値を重視する陣営」と手を組み、中国の「物量・低価格」に対抗するブロックを形成しつつあるのが、非常に興味深い点です。
日本が規格主導権を握ろうとしている各分野には、それぞれ強力な競争相手や、対立するアプローチを持つ陣営が存在します。
1. 自動運転システム主な競争相手:
テスラ(米国)および欧州メーカーテスラ: 「FSD(Full Self-Driving)」に代表されるカメラベースの画像認識とAIによる「完全自動運転」を追求しています。対して、日本主導のISO規格は、システムが状況を判断しつつ「運転交代」を安全に行うことを重視しており、アプローチが異なります。
争点:
「AIの判断に全てを委ねる(テスラ方式)」か、
「システムと人間の責任分担を明確化してインフラ協調を図る(日本方式)」か
の覇権争いです。
2. ペロブスカイト太陽電池主な競争相手:
中国メーカー(GCL、邁為科技など)中国の戦略:
圧倒的な資金力で「GW級の巨大工場」を建設し、低価格・短納期で世界シェアを一気に奪い取る戦略です。すでに一部企業は海外納入実績も持っています。
争点:
日本が「高耐久性・建材一体型・日本品質」というニッチかつ高付加価値な土俵で勝負するのに対し、
中国は「汎用的なパネルの量産と価格競争」で土俵を支配しようとしています。
3. グリーン・トランスフォーメーション(GX)
主な競争相手:
欧州連合(EU)および米国EU:
「炭素国境調整措置(CBAM)」などを導入し、環境規制を世界ルール化することで、自国の基準を強制力のあるものにしようとしています。
米国:
インフレ抑制法(IRA)などを通じ、巨大な補助金政策を背景にした自国優先のエコシステムを構築中です。
争点:
日本は「省エネ技術の積み上げ」という強みを規格に盛り込もうとしていますが、環境ルールそのものの主導権は欧州の環境政策が強く、いかに日本的技術を国際ルールに統合させるかが鍵です。
4. 光電融合技術(量子・AIインフラ)
主な競争相手:
NVIDIA(米国)、TSMC(台湾)、インテル(米国)NVIDIA:
AI演算処理の効率を最大化するために、光電融合(光でデータを送る技術)をGPU周辺の高速通信に活用する戦略。
NTT(日本):
通信キャリアの立場から、社会インフラ全体を光技術(IOWN構想)で作り変えようとしています。
争点:
「データセンター内のAI演算スピードを最速にする(NVIDIA)」か、
「都市や社会全体を低消費電力・低遅延な光ネットワークで結ぶ(NTT)」か
という、アプリケーションの目的の違いが規格争いの裏にあります。
まとめ:
日本が戦っている「相手の強み」分野
日本の戦略相手の武器自動運転安全性と協調システム
圧倒的なAIデータ収集力と普及速度ペロブスカイト品質と設置場所の開拓莫大な投資と量産スピード
GX製造プロセスの効率性環境政策による法的な強制力光電融合社会
インフラへの統合データセンター・
AI市場の独占力日本企業はこれまでのように
「一社単独」ではなく、今回は「政府・研究機関・大手企業」が一体となってブロックを組むことで、これらの巨大なライバルに対抗しようとしています。この戦いは、技術そのものの優劣だけでなく、「どれだけ多くの国々を自陣営(自分たちの規格を使う側)に引き込めるか」という政治的・外交的な根回しが勝敗を分けると言っても過言ではありません
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