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「イジメ」

作者: 沢木キョウ

 これは、とある日の『アオイ』の「イジメ」についての物語


 

 ぜひあとがきまで読んでください。

 感想お待ちしております。





 ああ、キメェ。マジでキメェ。死ねや。


 太陽キモすぎ。カーテン閉めてんのになんで眩しいんだよ。クソ。

 いい夢見てた気がすんのに無理やり起こしやがって。はぁーダル。


 体起こすのめんどくせぇー、筋肉使うのもダルすぎ。もう最悪。朝から筋肉使わせるとか正気ですか? 何様ですか? 救ってもらっていいですか?

 誰も助けてくれないってことは、もうこれ「イジメ」ってことで、おけ? そういう解釈アーユーオーケー?


「アオイーー、起きなさーい! もう朝ごはんできてるわよー!」


 は? ウザ。今起きようと思ってたのに。

 あーあ、やる気削がれた。返事すんのもダリ―。このまま寝てたいけど、どうせ後からめんどくさくなるのは目に見えてますよん♪

 しゃーないから起きてあげますよっと。カーテンは……まあ開けますか。めんどくさいけど。


 うわー、立つの疲れる―、歩くの疲れる――! ドア開けんのもクソダリ―――!!

 とりあえず死ねや。

 てかそうじゃん。階段降りなきゃいけないじゃーん。

 マジだれ?? この家の設計考えたアホは?? 寝ながら飯食わせるくらいの構造考えろや。


 足おっも。階段長すぎ。これ降りるだけで、ウチの足、筋肉ゴリクソダルマになっちまうだろーが。なんでこんなに筋トレさせる? ナニコレ、登山の一種ですか? いや、降りるから下山か?

 これ強要してくる家族って、もしかしてウチのこと「イジメ」たいの? 絶対そうだよね? 間違いない。うん。



 ***



 やっと降りきったー!! じゃあ今日の分のエネルギー使い果たしたから寝るわー。今日も一日、おつかれさっしたー!

 え、寝るためにまた階段上らなきゃいけないじゃーん! 完っ全にはめられた。犯人出てこいやマジで。ぶっつぶす。


「おはよう! ほらさっさと朝ごはん食べなさい! 遅刻するわよ!」


 うわお、びっくりさせんなや。心臓止まるかと思ったー。ていうか半分くらい止まったんですけどー。慰謝料プリーズ。


 んー? ちょっと待てよー……。えーっと……つまりあなたは、ウチがそんなことも理解していないバカだって言いたいのかな? 今の、わざわざ伝える必要ないもんねぇ? それをわかっててねぇ、ここまで来たんだからねぇ、いやはや……おかしいですねぇー。


 怒鳴るのもダリーし、さっさと食って学校、いっちまいますか!


 朝は……食パンか、いちごジャムぶっかけて食おっと。

 外めっちゃ晴れてるなー、今からでも暴風警報出てくれよ。いちごジャム×食パンの日は台風直撃するのが通説だろ!!!!! 知らんけど!!!


 食パン持つの疲れたー。

 なにこの手の形。変じゃん。明らかに。

 スマホの持ちすぎで手の形が変形するってきいたことあるけど、食パン持つのも体に毒じゃん、絶対。

 手をつけなくても勝手に口の中に運ぶ機械つくってくれ、世界。


 てか噛むのも疲れたー。

 ワタクシ……今を生きる現代人ですわよ? 顎の力なんてなくても生きていける世の中なんですわよ? そこらへん、お見知りおきくださいましー?


「あんたー? いつまで食べてるのー? 大丈夫? 間に合う? 送ってあげようか?」


 まーたーきーたーよー……。というか我が母上よ、今の短いセリフの中で何回『?』使うねん。『しゃくり』のプロかよ。カラオケにでも行っとけ。

 ウチ、今めっちゃ疲れてるんだからさー! 首、振らせないでくださる―?

 あらら、お嬢様口調が抜けていませんでしたわね。オホホホホホホ!



 ***



 くぁーー! やっと食い終わったー! 満足満足! んじゃ……おやすみー……って違うだろー!! このハゲー!!

 あれ……ウチの家族、だれもハゲてないのに、なんか知らんけど、ハゲー!って……なんだこれ。


 じゃあ、これからするべきことをまとめてみますか! えーっとー……

 その一、椅子を立つ。は?ダル。

 その二、歩く。は?ダル。

 その三、洗面台へ。は?ダル。

 その四、あ……ああああああああああああああああ!

 考えんのもめんどくさくなってきた、とーにーかーくーダルルルルルル(巻き舌)!!


 はい! 切り替えろ! ウチはやればできる子、YDK! 他とはちげぇんだ! まずは顔洗う!


 ……えー、なにこの行為。なんで顔面に水ぶっかけてるの? こんなんで効果あるの?甚だ疑問であるぞい。

 水を浴びるっていう点では、学校のトイレで上から水ぶっかける行為とほとんど変わらんやん。つまりこれは、ニアリーイコール「イジメ」ってことじゃな、QED。


 てかさー、気づいちゃったんだけど……歯も磨かなきゃいけないじゃーん。

 これこそマジで自動でできるようにしてくれー?? 手、疲れるんだからさー!

 そもそも、ウチみたいに毎日歯磨いてても、周り見たら虫歯になってる人けっこうおるんですけど。一回くらい手抜いてても、大して変わらんやろなー。

 まあ、ウチは磨きますけどね。バレたらあとでめんどくさいし。



 ***



 ほいじゃ着替えますか……はい……あのー……なんとですねー……階段を上らないと、学校の制服にありつけないんですよねー。クソですねー。

 制服マジで着づらいんよな。毎日ジャージでよくね? 選ぶ高校、ミスったかもなー。って、この辺にそんな学校ないやろがーい! っておいぃ“ぃ”ぃ“ぃ”!!!


 我はこの運命に、決して逆らえないのだな……。

 ならば仕方ない! 制服着るぞーーーーー!!!

 どりゃーーーー(全力階段ダッシュ)!!

 そりゃーーーー(全力スカート)!!

 ありゃーーーー(全力上半身)!!

 こりゃーーーー(こそあどコンプリート)!!


 思い知ったか、こーにゃろうめ。


 よっしゃーこれで学校に行く準備が終わったー!

 ウチ頑張りすぎじゃない!? 朝からこんな活発に動けるなんて、普通じゃありえないでしょ。友達の話きいてても、みんな朝は弱いって言ってた!!


 ……あっ、ウチなんかに友達いないんだった。


 てへっ☆ 友達に憧れるあまり、ついつい夢を見てしまっていたようだね☆

 学校で青春するのって憧れるーー! 友達と放課後に遊んだり、部活動したり、いろんな学校行事を楽しんだり、あとはやっぱり……恋……とか……。


 なーんてね!


 そんなのは高望みしすぎなんだわ。身の程を知れっての!

 ヘイ! マイヒップ!

 Q, この中でウチは何個達成できてますか?

 A, スミマセン。ヨクワカリマセン。


 ほら見たことか。ウチはなんにも達成できていませんよ。

 言うなれば、『アオイ』という存在は、青春とは真反対に生きる存在なのである!!

 友達? いません。

 部活動? 入っていません。

 学校行事? 全部ぼっちですが。

 恋? ナニソレオイシイノ?


 こんなんだから「イジメ」られるんだよねー。


 おっと、もうそろそろ家を出ないと、本当に遅刻しちゃうな。

 遅れて教室に入ってしまったあかつきには、もっと「イジメ」られるに違いない!


 急げ―!!


「アオイ、はいこれ弁当。気を付けていくのよ!」


 よしっ……じゃあ学校に向けて出発進行……!!



 ***



 暑すぎんだろ。


 なんか今日、太陽近くね? あそこのワンちゃんも舌だして草臥れてるわ。

 なにもしてなくても、汗びっしょり。こっから歩かなきゃいけないのー? こりゃ、この夏、死ぬかもしれんから今日帰ってきたら遺言とか書いといたほうが、よさげのアキコ。


 はやく……はやく、学校に……ついて……少しでも……涼しく……なり……た……い。

 やっばいわ……これ……。汗かきすぎて……歩くたびに……足元ネチャってる……。

 んあ? なんだ、あそこの、二つの歩くランドセルは……


「アイスうんめー!!」


「ショーくんちのママ、優しすぎるー! 今日の放課後も……行って……いい、かな?」


「おうよ!、もちろんだ! くぅー! 生き返るわー!」


 なんだ、あのガキども! 高校生の姉ちゃんが根性だけで学校行こうとしてるときに、アイス食うところを見せびらかすなんて。

 まさか……わざとか!? わざとなのか!?


「……ねぇ、ショーくん、あっちからいこ?」


「なんで?」


「……あっちのほうが日陰多いから!」


 あっ! ああーー!! 目から摂取するタイプの冷涼材がぁあああ!

 今さ、完全にウチのこと避けたよね、あの女! こっちに気づいてから向こう側に行ったよね!? ねぇ!? 君もそう思うよね!? まあ共感してくれるような友達いないんだけどさー!!


 これはアレです、みなさん。世間一般で言うところの『仲間外れ』っていうやつではないですか!? つまりこれは「イジメ」って、こちょ!?

 ウチレベルのクソ雑魚女子高生になれば、小学生にもペロられる(舐められる)んですねー。君たちは、ウチなんかより、ジャリジャリ君を舐めとけって話よ、ほんまに。


 はぁー……


 あっ、これは決して心に傷を負ったとかではなくてね、あのー、そのー、えーと、どーも、体内に溜まった熱を放出しようっていう、いわば生理現象なんですよ。はい。

 そうでもしないと、学校まで持ちませんからねー、えぇ、えぇ。



 ***



「昨日の『アレ』みたー?」

「見た見たー! めっちゃキュンキュンしたー!」


「お前、ちゃんと宿題やってきたか??」

「うわっ! やべ! やってねぇ! 生徒指導のマツタケに怒られるー!!」

「この学校に、そんな高級先生はいねぇよ。『アレ』の名前は、タケマツな!」


「ねぇねぇ、今日、いい日になりそうじゃない!?」

「それなー! 朝から『アレ』を見れたのはでかすぎる!」


 学校に入る直前の、学生だらけの道、しんど……。

 ほとんどが友達同士で登校してる……。そのせいでウチのぼっち感マシマシなんですけど。大丈夫かな、寝ぐせとかついてないかな? 制服にクソでけぇカメムシとかついてないかな?


 うぅー、意識したらなにかが背中を這ってるような感覚が……。もしかして、だれかに襟の隙間から虫入れられた!?

 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。

 周りでみんな楽しそうに笑ってるのって……まさか、ウチのことを嘲笑ってるから……。


「やっぱりめっちゃおもろいわー……『アレ』」


 おもろい『アレ』ってなに!?


「いちいちめんどくせぇから、俺はあんま好きじゃないわー……『アレ』」


 好いてない『アレ』ってなに!?!?


「あまり人のこと『アレ』って言っちゃダメだよ?」

「んー……あの子、ワタシたちとは住んでる世界が違いすぎて、ついね……?」


 『アレ』の正体は人?

 おもろくて、好かれてなくて、他の人たちとは住んでる世界が違う『アレ』――絶対ウチのことじゃん!

 ってことは、やっぱり背中にはバカデカカメムシが……ひぃぇぇぇ。

 もうこうなりゃ、気づいてないふりして一日過ごすか……。


 はぁー……どうしてこうなっちゃったんだろうなー……。



 ***



 学校の中、すずしぃーーーーーーー!

 なにこれ、天国? 昇降口えっぎぃな、マジで。

 あとは階段上って四階までいけば、一年一組の教室に……


 ……夢ならそう言ってほしい。ドッキリなら今すぐ、あの看板みたいなやつ持ってきてネタバラシしてほしいんだが。

 暑いなか、ぼっちで頑張って登校してきて天国だーって思ったら、目的地は四階でしたー!!っていう企画なんだよね??

 そうじゃないんだったら、ウチはこの学校の構造について批判しなければならなくなるぞ! 引きこもりクソキモニートを殺す気かー!!ってなぁ!


 どこに訴えればいいんだ!? 教育委員会か!? もうめんどくせぇからいいやー! このぉー!! 覚えとけよー!



 ***



 うぅー……校舎の中に入ったのはいいものの、けっきょくぼっちが目立ってるんですけど。

 ウチが階段の内側を歩いてたら、すれ違う他の生徒とか先生とかが、ウチのこと避けて外側に行くんですけど。

 あれ? 全校に告げたっけ? 『アオイが通るから道を開けろ』って。ッスゥ―……多分、言ってないんですけど。

 ついでに、背中がずっとむず痒いんですけど。


 ……あのー、みなしゃまー(孤立無援)!! ウチの後ろでヒソヒソしないでもらえますか? カメムシくさいのはわかってるんで! 本当に申し訳ないとは思ってるんで! 何卒ぉ“ぉ”ぉ“!!



 ***



 ふぅー、階段長かったー! 家の階段の一兆倍くらい疲れたー! エレベーターとかあればいいのにー、もう! クソ! ゴミ! カス! う〇ちぶりぶり!


 それにしても、男子どもは朝っぱらからほんまに元気やなー。廊下で追いかけっこしてやがる。

 友達がいて、こんな風にバカやって……くぅー!! これこそが、ザ・青春! 青い、青すぎる! ウチの人生で追いかけっこしたことなんて――近所の犬に追いかけられたくらいなもんですよ。


 あ、ちょっ! あぶね!


「いってて……。すみません、大丈夫で…す……か………」


 いってぇなー! クソ、尻もちついたー!

 てめぇらが輝きすぎて、避けられなかっただろうがよい! 陽キャは眩しくて見にくいんだよ! まあ、ウチは醜いけど……あざす。


 それに、なんだコイツの呆けた面は? ぶつかった対象がウチだったから、そんな顔してんだろ? 知り合いじゃなくて、ウチみたいなぼっちとぶつかったから、めっちゃ気まずいんだよな………………………………ちな、それウチも。超絶気まずい。


「……あっ、大丈夫ですか!? すいません、前見てなくて!」


 おい! そんな申し訳なさそうな顔すんな! コイツ……まさかウチのこと悪役にさせようとしてんのか?

 やべ、教室の中から何人か様子見に来ちゃった。こんな状況見られたら、ウチの「イジメ」られゲージが天元突破してまうわ。


 なんか適当に(へりくだ)って、さっさと教室の中入ろう。他の生徒に注目されんのもダルいし。

 ほら、手貸してやるから早く立て!


「……ありがとう」


 やめろ! お礼を言うな! どこまでウチのこと悪役にしたいんだよ。うーわー、コイツ、ニヤけてやがる。打算確定!!!!!! キュインキュインキュイーン!!


 ということで……退散!!



 ***



「それではホームルームを始めます」


 はぁー、もう精神的疲労がやばいんですけど。

 背中ムズムズするせいで、気軽に背もたれも使えん。


 バイザうぇーい↑↑(笑)、クラスメイトよ。なぜウチのことを見ているのだ? おいそこ! 口元隠してても、目元がニヤけてるせいで笑ってるのバレバレだぞ! あらまぁ、あなたの目、美しいアーチだこと。


 君たちはバレていないとでも思っているのだろうが、残念。常日頃から他人の視線にビクビクしまくっている、ウチのアホ毛センサーが反応しまくっているのだよ。


 みんなはウチじゃなくて、先生の方を見ていなさい……って先生もこっちチラチラしてんじゃねーか!

 この学校では生徒だけじゃなくて、先生もウチのことを……。


 いつもなら、まだマシだったよ? 適当に斜め下向いとけばいいし。

 けど、今は心当たりがありすぎる!


 もしかして、臭いかな?? カメムシか?? はっ! 今朝、男子とぶつかって悪い噂が流れて……ギャアアアアアアアアアアアア!

 想像するだけで吐き気が……まあしないんだけどさ。


 まっずーい。そんなにクスクスしないでよぉ、みんなぁ~。いつも元気なアホ毛センサーも萎びちゃうよぉ。


 やっぱり最近の「イジメ」って陰湿なものが多いんだね。

 みんな陰でコソコソしてるだけで、ウチに直接言ってくる人はいない。現代っ子はきっと口じゃなくて、板で会話するもんだし。

 だからコミュニティに入れていない、バカで、アホで、マヌケな、耳クソゴミカスボケナスハッピー法被(はっぴ)は世界についていけなくなって、いつしか孤独になるってわけよなー。ほんとウケる。


 まるで板の中に二つ目の世界があるみたいだな。

 リアルで動くウチらはRPGの中の存在で、本当の『自我』は板の中の文字。

 まぁ、頭の悪いクソガキの考えだから筋が通ってるかも、よくわっかんねぇけど、みんなが真に本音で話せるのは、いったいどっちなんだって話。


 はぁー……ダル。



 ***



「では授業を始める」


 きました。ついにきました。授業ってやつが!!


 国語かぁー、ウチ苦手なんだよなー。

 文字多すぎ。この教科書つくった人、読ませる気ある? ウチらってねぇ、マンガとかアニメとかで育ってきたのぉ。文字を読むだけで一苦労なんですわ。


 なんかよくさぁ、

 本を読むときはあまり顔を近づけないでね。目が悪くなっちゃうから☆

 って指導されるけど、こんなちっせぇ文字を読ませてるの、目悪くさせる気満々だろ。


 数学の授業とかならまだいいわ。一人で黙々と頭の中で計算するだけで、先生にあてられても答えだけ言うことがほとんど。

 でも、国語ってそれだけじゃなくて……


「じゃあ、ここの部分を……今日は26日だから、26番、春海(はるみ)。起立して音読してくれ」


 うわキター。

 国語といえば音読ですわ。26日だから26番って……その出席番号の人かわいそー! 同情するぜよ。

 ……まあウチなんですけどね。


 わざとだろーこれー、昨日はなんか別の理由であてられたってばー。先生ひどすぎるって。マジで今日、クソ日すぎるんだが。

 ただでさえ注目されたくないのにー! ここで音読したら、クラスメイトに「イジメ」のネタを提供しちまうだろ!


 あそこで嚙んでたよねー。とか、抑揚バグってて草w。とか、あんな簡単な漢字も読めないんだってー、プププー……とか。


 あーもうほら、周りでみんなヒソヒソし始めた。こりゃ、ウチの予想はあたっちゃいそうですな。


 あの、先生ごめん。教科書読みながらで悪いんだけど、心の中で叫んでもいいっすか? いいですね? あいざいます。では……すぅー



 どう“し”て“だ”よ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”!!!

 ウチの背筋……キンッキンに冷えてやがる……!!



 ふぅー……少しは落ち着いたかな。


「はい春海(はるみ)、さすがだ。座っていいぞ」


 よぉーし、山場超えたー……。うまく音読できてたかな……。

 まあみんなの反応を見るに、ウチの音読はゴミだったっぽいっすね。

 てか、さすがってなに!? さすがバカにしてるやん!!


 ウチの右斜め前に座ってる一軍女子四人! こっち見ながらニヤけてやがる。

 ウチの左斜め後ろの一軍男子三人組! わかるぞ……見ずともわかるぞ……キサマらもウチのこと見てるだろ。背中の感覚だけでわかっちゃう自分もキモくてすまんけど、見てるだろぉー!!


 っくぅー! またしても「イジメ」ネタを与えてしまったのか。今日、バスケ部と、サッカー部と、野球部と、バレーボール部と、テニス部と、バドミントン部、あとは帰宅部で、笑いものにされるんだああああ!


 はぁー……。



 ***



「はい、連絡は以上です。今日も一日お疲れさまでした。また明日会いましょう」


 だぁーーーーー! 終わったーーーー!! ついでにオワターーーー!!


 今日も今日とて、周囲にネタ三千個くらい提供しちゃったー! 需要と供給のバランスあってませんよー! ウチにもなにか、くださるとうれしいのですけどー? あるわけないですよねー、はーい。


 けっきょく今日もずっとぼっちだったな。

 視線もずっと感じるし、ウチはなに? 動物園の動物? 水族館の魚?

 そういうタイプの「イジメ」ね? ハイハイ理解。


 で、どうせみんなはホームルームが終わっても、教室で駄弁(だべ)るんでしょ? 仲がよろしいこと。ウチみたいなカースト圏外はさっさと失せますよ。



 ***



 もう、疲れた。

 階段も、靴を履く作業も、キッツイわ。今日だけで寿命、三十分くらい縮んだかも。


 校舎出たくねー。まだ太陽えっぎぃんだけど、朝から何か変わったかー?

 勇気出して外に出ないと天国(自宅)に帰れないしなー。

 ほいじゃ行きますか……あっ。


 最悪だぁ……弁当箱、教室に置きっぱだ……。



 ***



 弁当箱……忘れて……るんだったら……誰か……教えて……くれても……いい……じゃまいか……。


 そうじゃないと……こうやって……また……階段を……上らなきゃ……いけなく……なる……じゃまいか……。


 やめろ……お前ら……こっちを……見るな……なんでコイツ帰んねーの?っていう目で……見るな……恥ずかしい……じゃまいか……。


 こんなときに今朝のアイスのガキを思い出しちまった。あークソ。アイス食いたくなってきたじゃまいか!



 ***



 やっと、教室に、ついた…。まだ何人か残ってるやんけ。


 弁当箱は……あれ?

 机の横に……あれ?

 机の中は……あれ?


 あっ……なんということでしょう。

 どうやらウチは無駄足というものを踏んでしまったようです。

 カバンの中に、ちゃんと入れてた……。周囲の顔色を伺うことに夢中になりすぎて、入れた記憶がスッポリ抜けてた……。マジかー。ハハハハ。


 なにやってんだか、本当に。「イジメ」の原因、だれが見ても明らかだわ。自分でも超絶ウルトラスーパーデラックスベリベリブリブリ納得っすわ。


 やばい、教室の端で、まだ残ってるクラスメイトがこっち見てる! ガン見はやめてー!

 これはクソまずい!

 弁当箱を忘れたと思って戻ってきたのに、全然そんなことなかったことを知られた日には……ぐがぁああああぐごがぁぁぁごごごぉぉぉぉ!


 逃げろー!!



 ***



 ハァー、ハァー……疲れた……。

 階段ダッシュに、高速靴履きの術。ウチのエネルギー残量はもうゼロよ!


 しゃあないか。「イジメ」ネタ提供も、弁当箱忘れも、なにもかも全部、自分のせいだし。


 こうなりゃ自らへの罰として炎天下の中を歩きますか。



 ***



「おい! 今のはいけるだろぉ!! ちゃんとボール取れよー!」


「すみません!」


 はぁあ、こんなバカ暑い日にも、運動部は元気に声出していらっしゃる……。

 もう声きいてるだけで、熱中症になるわ。

 ほんまにお疲れさんです。自分にはできません。頑張ってくださいね。

 じゃあ自分はさっさと帰らせていただきます。


 …………


「すみませーん。ボール取ってくださーい」


 ウチの目の前にはテニスボール。

 すぐ横の柵の向こうには、ウチを見てなんか言ってる陽キャ男子。


 ……ウチが帰ろうとしてるときに、目の前にボールが偶然転がってくるなんてこと、ありますかね? 逆の意味でウチ、運いいわー。宝くじでも買おっかな。


 えーっと、これを取るってことは……

 しゃがんで、ボールを拾って、立ち上がって、大きく振りかぶって、柵の上を飛び越えるような弾道でボールを投げなければならないわけだ。


 想像しただけでキッツ。

 ただでさえ、しゃがんで立つだけで疲れるのに、柵を超すって……。テニス部の柵って意外と高ぇんだ。

 運動部目線ならまだしもなぁ、ウチは帰宅部なんだよ! そっち基準で考えないでくれ!


 まあ断ったら「イジメ」ネタ提供されるだろうからな。アイツボールも取ってくれなかったんだぜ!って。

 だからこの状況は、あの男子がウチに頼んでいるように見えて、ほぼ強制なんだよね。


 はぁー……はぁー……。


「……あっ、ありがとうございます!!」


 ***



「おかえりー!」


 帰ってきた……。

 あああああしんどかったああああああ!

 暑すぎ。死ね。おい太陽、もう二度と出てくんな、ボケカス。


「アオイ、暑かったでしょ。アイスあるから食べていいわよ」


 あ、神。

 普通に神。ここって本当に天国だったんだ。

 っしゃー! もうお気楽な時間だぁー!!!! いぇーーーーーい……


 ……そういえば、宿題があったような……。

 なーーーーーんで先生って生徒に宿題出すわけ? ウチ知ってるよ? 先生って忙しいんでしょ? 宿題って先生にとっても仕事量増やすだけじゃん!

 もしかして先生ってドMなの?? 自分から「イジメ」られにいってるよね!?


 普通に、お互いの生産性がウケるーって感じなんですけど。

 先生が宿題を()()とき、うちらは宿題を()()と思ってる……そんなこと考える暇があるなら、もう宿題やっちゃお……アイス食ってから。


 ていうかさ……

 宿題やるためには、また階段上らなきゃいけないじゃん!

 階段を上る前に、アイス食べないといけないわ!

 アイス食べるために、冷凍庫に向かわないと!

 冷凍庫に向かう前に、靴も脱がなきゃいけないじゃん!


 え、ダッル! もしかして、全部仕組まれてる?

 犯人は宿題を課した先生か!?

 ウチを甘い罠に誘ったマイマムか!?

 アイス欲をかき立てた、あのガキどもか!?

 いや、これ全員犯人だろ!


 「イジメ」って集団vs個になることが多いらしいな!

 今、まさにその状況になってる……つまり……



 ウチは「イジメ」られている!!!







 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 さて、「これはアオイがイジメられている物語」です。しかし、実際はどうでしょうか。

 本文にはアオイのセリフが一度も書かれていないので、そのあたりの話も交えながら少々。


 主人公の母親は、アオイの面倒を見てくれる良い母でした。一方で、アオイは心の中で母親にいろいろ言っていました。

 本文にはアオイの心情が暴言交じりに書かれています。母親に対しても、なかなかに過激な表現をしていました。

 しかし、実際にはこの二人の仲はかなり良いと見えます。もし普段から暴言吐きまくっていたら母親がこんなにも面倒をみてくれるはずがないです。

 朝起こしてくれたり、送迎してくれようとしたり、弁当もつくってくれたりしました。

 もし、アオイと母親の会話を全部書き出したらどのようになるでしょうか。


 主人公が登校時に見つけたアイスを食べる小学生たちとはどうでしょうか。

 アイスを食べているのは二人組の小学生男女です。アオイは暑くて、ついアイスに目を奪われていました。

 女の子がアオイの存在に気づいて二人はどこかへ……

 実は、女の子は一緒に歩いていた男の子のことが好きでした。登校時だけでなく、放課後まで一緒にいようとする……なかなかに肉食です。

 そんな子がアオイを避けた理由は、アオイが変質者に見えたからではありません。もちろん仲間外れにしようしたわけでもありません。この理由は後で……考察したらわかるはずです。

 あっ、ジャリジャリ君とは、この世界に存在するアイスです。オリジナルです。


 ここからは学校です。

 ここでは、生徒たちがアオイを見て笑ったり、避けたりしていました。


 学校に入るまでの道でアオイの周囲からさまざまな声が聞こえてきます。

 一組目は、昨日見たドラマ。二組目は、宿題。では三組目はなんでしょう。

 これがもし、アオイをバカにして言っているとしたら最悪ですね。


 校内に入りました。

 アオイの教室はなんと四階にあるらしく、階段を上らなければなりません。

 そして、なぜか階段を歩いていたら、生徒も先生もアオイを避けました。背後からはヒソヒソしてる声がきこえてきました。

 アオイが気にしていたカメムシはもちろんいません。途中から忘れてるくらいなので。

 では、なぜみんなアオイを避けたのでしょうか?

 イジメが原因? それとも……


 階段を上ったら元気に追いかけっこをしている男子と衝突してしまいました。

 かなり心の中で暴言を吐くアオイですが、実はこの男子が衝突してきたことに対する文句自体はありません。むしろ、憧れの目さえ向けています。

 ここの場面は、アオイがやったことだけを追っていくと、おもしろいかもしれないです。男子のニヤケも別の意味になるかも……


 ホームルームが始まりました。

 やはり教室のみんなはアオイのことを避けています。しかし、今日は一層避けられているような……。

 アオイは男子との衝突事件のせいで評判が下がっていると思っていますが、傍から見た生徒たちは、男子への対応を見て、クラスメイトにどのような噂を流すでしょうか。

 あっ、後半の「イジメ」が陰湿云々については現実に通じる、少し重めの内容です。


 国語の授業で当てられました。

 昨日に続いて連続です。もちろんこれは先生の意図によるものです。

 「さすが」と言われており、アオイはそれを皮肉と捉えましたが、そうではないとすると、アオイは先生の信頼に応える人物として記憶されている可能性がでてきます。

 では、周囲でコソコソしている生徒たちはアオイについて、どのような話をしていたのでしょうか。


 ここまでで、アオイがクラスメイトからどのように評価されているか、わかった方も多いかもしれません。

 そんなアオイが教室に再び戻ってきたときに、ガン見してきた生徒はどんな気持ちでアオイを見ていたのでしょうか。


 アオイは校舎を出て、テニスコートのすぐ横を通ります。

 すると目の前にテニスボールが転がってきました。

 アオイは心の中でなにかと言い訳をしますが、けっきょくはボールを投げ返しています。それを見て、陽キャ男子は意味あり気な礼をします。


 家に帰りました。

 ここでも母親は優しいです。わざわざアイスを用意してくれています。

 学生なのでもちろん宿題もあります。

 ごくごく普通の生活を家で送れるはずだったアオイは、強引に理由をつけてそれらを「イジメ」に結びつけています。


 全体を通して……

 主人公から他人に対しての直接的な暴言の有無。

 学校と家にいるときの暴言レベルの差。

 実際の会話の内容。

 主人公の容姿・偏差値・性格・他人からの評価などなど……


 感想をお待ちしてます!

 みなさんが主人公をどのような人物と捉えたのか、ぜひ教えてください!


 

 ここまでありがとうございました!!!!!

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