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第63話【精霊騎士】、卓球をする。

 温泉から上がった後。

 地元食材をふんだんに使った、見た目も鮮やかな、すごく美味しい晩ご飯を食べてから。


 俺たちは卓球と呼ばれる屋内レジャーを楽しんでいた。


「それいっ! スマッシュなのじゃ!」


 パチコン!

 俺が何とか返したピン球を、幼女魔王さまが俺の陣地に軽快に打ちこんだ。


「魔王さま、ナイススマッシュでーす! ハルト様ももう少しでとれそうでしたね、次ガンバです」


 ミスティが幼女魔王さまをバッチリ褒めつつ、しかし俺へのケアも忘れない絶妙な応援をしてくれる。


「くっそー、またやられたな。それにしても卓球が上手なんだな魔王さまは。ちょっと意外かも」


 俺は床を転がるピン球を拾い上げながら、感心したように言った。

 本当にお手上げだ。

 勝てる要素が見当たらない。


「ふふん。(わらわ)は運動能力は平々凡々――どころか下から数えたほうがはるかに早いのじゃが。卓球のように筋力があまり要らないチマチマした感じのスポーツに限っては、割と得意なのじゃよ」


 俺に褒められてまんざらでもない幼女魔王さま。

 その口ぶりには、圧倒的なまでの自信がみなぎっていた。


 もちろん精霊騎士や精霊使いは、精霊の力を借りることで様々な卓越した技能を使うことができる。


 今も卓球精霊【ミウミマ】を使えば、ここからでもなんなく逆転することは可能だろう。

 最上位の卓球精霊術【ミマパンチ】は、そう簡単には止められないはずだ。


 だけど、それはちょっと違う気がするんだよな。


 なぜなら今は勝負に勝つことが目的じゃなくて、みんなでわいわいと卓球を楽しむことが目的だから。


 だから俺は精霊術を使用せずに、自分の力だけで卓球を続けることにした。


 幼女魔王さまの鋭いスピンのかかったサーブをなんとか返し、ドライブやスマッシュ、チキータといった特殊攻撃になんとか食らいつく――つけないことがほとんどだけど、それはそれで楽しいからヨシ!


 3人で次々と相手を変えながら、時に幼女魔王さまにコツを教えて貰いながら、俺たちはちょっと疲れてしまうくらいに、卓球を楽しんだのだった。



 卓球を終え、シャワーで軽く汗を流して部屋に戻った後、俺たちは川の字に敷かれた布団に横になった。


 俺がまん中で、右にミスティ、左に幼女魔王さまというポジショニングだ。


「ハルト様、手を繋いでもいいですか?」


 小さな声でこわごわって感じで聞いてきたミスティの手が、しずしずと俺の布団の中へと入ってくる。


「構わないよ」


 ミスティの女の子らしい小さな柔らかい手を、俺は優しく握り返してあげた。


「えへへ……ハルト様の手、大きいです」


 ミスティは可愛らしくつぶやくと、そのままなぜか向こうを向いてしまった。

 どうしたんだろう、もしかして恥ずかしかったのかな?


「せっかくだし、魔王さまも手を繋ごうか?」


「いや、(わらわ)はよいのじゃよ」


「なに遠慮してるんだよ。ほら手を出して」


 俺は幼女魔王さまの布団に手を入れると、その手を軽く握ってあげた。


「まったくハルトよ、こういうのはミスティにだけしてあげるのが良いと、妾は思うのじゃがのう」


「なに言ってんだよ。ミスティも魔王さまも俺の大事なパーティの仲間――家族なんだからさ」


「ふぅむ。ま、言いたいことはなくもないのじゃが……今のところはそれでいいかの。せっかくの3人で過ごす夜に、無粋な言葉をかわすというのは、あまりに興が()めるというものじゃ」


「……?」


 幼女魔王さまの言いたいことがイマイチ分からなかったんだけど。

 その後、他愛もない話を始めた俺たちは、川の字で手を繋いだまま夜のおしゃべりに興じ――。


 いつの間にか、誰からともなく寝入ってしまったのだった。



 翌日と翌々日も温泉に入ったり、美味しいご飯を食べたり、周囲を散策したり、ビリヤードをしたりと1日中温泉宿を楽しんで、俺たちは温泉旅館を後にした。


「いやぁ、楽しかったなぁ。ゲーゲンパレスも知らないことばかりで楽しいけど、旅行に来るのはまた別の楽しみがあるよな」


「また3人で来ましょうね♪」

「うむ」


 こうして今回の温泉旅行は、3人の絆を大いに深める形で幕を閉じたのだった。


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