閉ざした言葉
※この短編にあわせて作ったインスト曲があります。
よければ [閉ざした言葉](https://youtu.be/ilC4XaeALnA) を流しながらどうぞ。
夜の街角で、彼と別れた。
「また明日」――その一言を残して、背中は暗がりの向こうへ遠ざかっていく。
返事をしようとしたけれど、声は出なかった。
ほんの些細な言葉のすれ違い。
ちょっとした喧嘩だ
気にする必要はない
彼の足音が遠ざかっていく。
振り返れば、まだ間に合うかもしれない。
けれど、勇気は出なかった。
普段ならここで手を振って別れる道。
けれど今夜だけは、その先も一緒に歩きたかった。
それなのに、その一言が言えなかった。
歩き出してからも、喉に言葉が残っていた。
立ち止まって振り返る。
「いっしょ・・に・・・」
唇が震えただけで、音は夜に吸い込まれた
彼の姿はもう見えない。
街灯の下に伸びる影は、一人分だけ。
ひとり残された道に、閉ざした言葉だけが響いていた。
───
※この短編にあわせて制作したインスト曲をYouTubeで公開しています。
ご希望の方はこちらからどうぞ:
[閉ざした言葉](https://youtu.be/ilC4XaeALnA)