表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

恵莉(えり)・ティターニア

 教室が一瞬にして静かになった。誰の号令も口裏を合わせたわけでも無く、ただ目の前を歩くセーラー服を来た銀色の髪の毛の美少女を見て、男子も女子も喋ることを忘れて見惚れていた。

「じゃあ、教卓の上に来て自己紹介をお願いします。あと、黒板に名前を書いてくれると助かる。すまないが先生も最初、聞いた時は頭に入らなかったから。ごめんな」

先生は片手で謝るポーズをとってから、近くのチョークを渡した。

「大丈夫です」

小声で目線はやや下を向けたまま、渡されたチョークを受け取り、黒板に名前を書き始めた。


 名前が書かれる間、黒板にチョークが当たる音だけが教室に響き渡り、誰1人としてヤジを入れることなく、その少女の一挙手一投足を全員が見守っていた。


「初めまして、今日から転校してきました。恵莉・ティターニア(えり・ティターニア)です。よろしくお願いします」


 深めのお辞儀をして、顔が見えた瞬間、

「「「うおーー、美少女きたー」」」クラスの男子生徒が合図もなく、揃って叫んだ。

「「「キャー、可愛いいいい」」」女子生徒は、口々に友達の手を握って、叫んでいる。


カオスだ。 俺は振り返り、志麻場の顔を見る。


「おい、志麻場、女子予想当たったな」

「まあな、これくらい普通だろ」

メガネの中央を押して、少し得意げな表情をした。


「おいおい、落ち着けーー。男子! 座れー、女子! 静かにー」


 しばらく、このカオスは治らなかったが、先生も予想していたのだろう。やれやれという表情で落ち着くように何度も声かけをして、徐々に静かになってきた。

「みんな、落ち着いたな。ティターニアさんは、スコットランドと日本のミックスで、名前も日本式で言うと逆の「ティターニア恵莉えり」さんになる。今日から転校ってことで、まだ分からないことばかりで、大変だと思うので、みんな仲良くするように」

先生の言葉に続くようにお辞儀をする。


「ってことで、席はーー、嘉島の隣が空いてるな」

「え、まじか、そうだった」

 中間テスト後に、くじ引きで席替えをして、奇跡的に誰も隣にいないポジションになれた。転校生といえばそういう場所に来るのが定番だ。

「なんだ、嫌か。嫌ついでに、学校の案内も後でしてやれ」

「なんでですかー、学級委員長がいるじゃないですか」

「いつも、授業中外ばかり見てる罰だ、受け入れろ」


 授業中外見るのは、確かにそうだが、知ってることを授業されてもつまらないだろ。

「はーい、わかりましたー」

「ティターニアさん、あいつの横の席へどうぞ」

「はい」小さく頷きこちらへ向かって歩き出す。

当然、全員の視線が彼女を追う、男子はその先の僕に睨みを効かせる。


 彼女を見ていて、気づいたのだが、なぜずっと伏せ目がちなのか。ただ恥ずかしいとかシャイなだけなのか、ちょっと気になった。

「失礼します」そう呟いて席に座る。

「そうそう、嘉島、ティターニアさん教科書とか持ってないから、見せてやれ。授業時間はとうに始まってるからな、1時間目はこのまま国語の授業を始める」


 僕は机を動かしくっつける、教科書を出して真ん中に置き、授業を聞くふりをする。

「ありがとう」小さい声で言った。そして「どちらも不正解」と言った気がした。


 僕は不意に放たれた言葉に彼女を見たが、何事もなかったように、授業に集中していた。

 聞き間違いだったのか・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ