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長くなってしまった出会い

 高校2年生、夏がもう終わろうとしている。

「あ〜あ、夏休みも後1週間で終わりか・・・」


 僕は部屋の壁にかけられた大きめなカレンダーを見て項垂れる。机の上には夏休みの宿題が積み上げられ、1ヶ月半、手をつけなかった代償がまざまざと未来の自分へのしかかる。


 そんな地獄を横目にスマホを見てしまうのは、現代の若者が抱える病気に近いものかもしれない。何かするわけでも無くただスマホを取ってしまい、なんとなく写真フォルダを開いた。最近撮った写真は、学校の友人に連れられ夏のコミケに行った時のだ。

「あんときは、暑くて死にそうだった〜」

思い出に浸ることで現実逃避に成功している。、、、という客観視している時点で、宿題をやっていない罪悪感は現実逃避では拭えないことも、、、承知している。


 写真を見ていると最初は、会場の外の光景が珍しくて撮ったものから、会場の中の様子を撮ったものになり、唐突にコスプレイヤーの写真に切り替わる。元々アニメや漫画はそれなりに見てるし知ってるが、友人の知識量には勝てない。なので大抵の写真は可愛いなとか、かっこいいな、なんだそれと思うネタ的なものまで、目についたもの全てを撮ったような気がする。


 しかし、見ているとやはり男だ、原作は知らないが可愛い人のコスプレ写真が、なんか多い気がすることも否めない。


 十分に現実逃避したところで、目の前に広がる地獄は変わっていない。少しは手をつけて減らしておけば、未来の自分が感謝するだろうという気持ちで、宿題を始める。

たらら〜ん

「うお、びっくりしたー」

22時のアラームが鳴った。昔からの習慣でこの時間に携帯のアラームをかけて、ずっとそのままになっている。そろそろ寝るか。


・・・

ここは、、、海岸沿いの道、、、防波堤に人が立ってる、、、

「「君、見過ぎ」」

銀髪、、、珍しい、、、海外の人かな

「「髪は元からだし、目もそんなに言われると恥ずかしい」」

「「そんなこと、、、言って」」

「「「ない。」じゃあね」」

「「多分、、、また会えるよ。」」

え、、、ちょっと、、、君は

視界が廻る

・・・


 バン!!

「いってーー」

ベットから落ちた。そんなの漫画だけの話かと思っていたが、本当に落ちた。

「なんだったんだ、さっきの夢」


 昔の記憶にあったような、でも顔がはっきり思い出せない。髪が銀色だったのは印象的だったけど、名前も年齢も知らない。そもそも実在する人なのかも怪しい。


 コンコン

「すごい音したけど、大丈夫?」母さんだ。

「大丈夫、大丈夫、ベット端の方で寝ちゃってたみたい」

夢に踊らされたとか、話すとややこしいので、それっぽいことを言った。

「怪我してないならいいけど。朝ごはんできてるわよ」

「オーケー、用意してから行くよ」


 それから、1週間はあっという間に過ぎ、今日が休み明け最初の登校日になった。ちなみに宿題はギリギリで終わらせた。


 夏休み明けの登校日、学校が近づくにつれて、久しぶりに会う友達同士、挨拶している光景をあちこちで見る。これから毎朝起きて、学校に行く生活がまた始まるのかと想像するともう嫌になる。


 教室に着くとすでにアイツは席に座っている。いつも通りお早い登校である。

志麻場しまば先生、おはよう!久しぶり!」そう言いながら、前の席に後ろ向きで座る。

「おはよう、嘉島かしま。その先生呼びやめろって言ってるだろ」


 メガネを直しながらそう言われても、説得力がない。雰囲気が先生を醸し出している。

「それに、厳密に言えば久しぶりでもない。コミケで会ってるからな」

「いやー、その説は、どうもお世話になりました」

実は、コミケに誘ってくれたのは志麻場なので2、3週間前に会っている。

「それに、いいんだよ、周りのみんなは、そこらじゅうで「久しぶりー」って言ってんだから、それに合わせとけば」

「ふ、周りに合わせるか、お前のスタンスは知ってるからな、何も言わないことにする」

「それはそれは、ありがたいことでー」


 いつもの様に一悶着やった後で、座り直そうとしたとき、志麻場は読んでいたラノベを机に伏せて、一定のリズムで言った。

「そうだ、今日、転校生が来るらしい」

「え!まじか。いや、そういう時って、もっと何か感情を込めて言うんじゃないのか」

「いや別に、そうとも限らんだろ」

「で、どんな奴なんだ、俺に言うってことは、なんか情報があるんだろ」

「それが、全然情報がないんだ。みんなが唯一分かっているのが、海外から来てるって事ぐらいで、男なのか女なのかすら分かっていない」

「まじか、トップシークレットってやつだな」

「だが、俺の独自情報で言えるのは、海外はほぼ当たりで、女子だと言うこと。そしてもう一つ、分かっている事は、このクラスに来るって事ぐらいだ」

「え、このクラスに、」


 チャイムが鳴った。みんなが一斉に自分の席に座り、担任の先生が教室に入って来た。

「朝のホームルームを始める。日直挨拶」

「はい、起立、気をつけ、礼」

「「「おはようございます」」」

「着席」

「みんな、おはよう。夏休み明けで感覚がズレている人が多いと思う。でもな、受験とか就職とか考え始める時期でもある。緩んだネジ締め直して残りの学校生活送るように。」


 クラスメイトの1人が手を挙げる。

「はい先生、転校生は本当に来るんですか」いきなり放り込まれた発言でクラスはざわつきはじめる。「私男子でイケメンがいい」「可愛い子、可愛い子」祈ってるやつもいる。


 先生は驚きつつも冷静に返答する。

「はいはい、静かに。情報が漏れているのはなんとなく知っていた。確かに今日このクラスに転校生が来る。自己紹介してもらうから、一旦落ち着けーー」


 しばらくの間ざわつきは収まらず、知っていた僕は特に興味もわかず窓の外を見ていた。どうせ、転校生とは挨拶ぐらいで、何も無く卒業するのがオチだ。波風や劇的なことなど起きない、それが僕の人生であり経験だ。

「入ってきていいぞ」先生の合図で扉が開く。


 扉が開く音、、閉まる音、、そして足音がやけにはっきりと聞こえる。どうしたものかと教卓の方へ視線を送ると、1人の女生徒が歩いていた。


 そして思わず、つぶやいてしまった。

 「夢で観たあの人だ」

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