お昼休みになるといつも俺の唇を狙ってくる小悪魔JKがいる
「……みぃ~つけた!」
「……っ!」
背中から聞こえる笑いを含めた声に体全体が反応して跳ねる。恐る恐る後ろを向くと、そこには一人の女子の姿がまるで、草食動物を狙っているライオンのような眼差しでペロリ、と唇を舐めた。
「見つからないとでも思った?」
クスクス、と笑いながら俺の隣へやってきて、腕を抱きしめる女生徒。脳がものすごい勢いで警笛を鳴らし始めた。
「……な、なぜここが……」
「そりゃあ、君を見つけるために、色々と歩き回ってたからね。苦労したよ中々」
ギュッ!と腕を抱きしめる力が増す。
「……そんなに、私とお昼過ごすの嫌なの?」
「うん」
迷う価値無し。
「えー?私、ただ君と仲良くなりたいだけだよ?それに、約束したでしょ?たまたま君とお昼ご飯を一緒に食べた日。覚えてるでしょ?」
あぁ、もちろん覚えているさ。忘れるはずもないんだから。
「ダメだよ?約束はちゃんと守らないと………でしょ?」
「……君は、ただキスがしたいだけだろ?」
「キス?」
そう、キス。この女子、なんと初対面のくせして俺のファーストキスを奪っていきやがったのだ。
忘れもしない。弁当のおかずを貰ったら、「じゃあ交換」と言って、急に俺の唇を奪いやがったのだ。
「あー……ふふっ、もしかして君って、私とのお昼が嫌な訳じゃなくて、私に強要されてするキスの方が嫌なの?」
「当たり前だろ」
一体何が悲しくて女子に押し倒されて無理やりキスをされなければならんのだ。
「えー?だってほら、等価交換だよ?私が、君のために弁当をつくる。そして、私が君のキスを貰う……ほら?」
一体何がほらなのか説明して欲しい。
「……そもそも、君の場合、キスは貰うじゃなくて、奪うだろ?」
「え?………あー、そうとも言うね」
そうとしか言わないだろうが。いつもマウントポジション取ってきやがって………。
「……ふふっ、それならいつもの等価交換……始めるね」
「っ!お、おい!ちょっとまっーーー!」
腕にそのまましなだれかかってきて、俺の体が押し倒され、身動きが取れなくなる。
「んっ……んちゅ……」
「んむっ……んっ……」
為す術もなく、唇を塞がれる。まるで俺の心の警戒を溶かすように、頭の中までピンク色の何かに支配される感じに陥る。
「んっ……舌…だして……」
こうなった俺に、抵抗する手段はない。ただただ、俺は彼女に口内を蹂躙されるのであった。
「はぁ……はぁ……」
「……ごめんね?ちょっと激しすぎちゃったかな?」
申し訳なさげに俺の顔を見つめてくる。そう思うならキスやめて貰えますかね?弁当なら受け取るから。
「ほら、君の唇って柔らかくて、なんか甘い味がしちゃって夢中になるんだよね……あはは……」
いや知らんがな。わざわざ唇の味とか分かんないよ。
「はぁ……君、は…どう、してこんなことを……」
「……………へ?」
ポカン、と呆然とした顔になる彼女。
「………え?もしかして気づいてないの…?こんなに私アタックしてるのに……?」
アタック?君はバレー部ではないだろう?
「……もう、しょうがないなぁ…ニブチンな君に教えてあげる………君のことが、大好きだからだよ……どうしようもなく」
顔が近づく。
「だからさ……もう、私から逃げないでね……お願い」