第8Q Versus Seisyun Part 2
今回からいよいよ試合が始まります。また解説が増えてしまって読みづらいとは思いますが、お付き合いよろしくお願いします。
それでは楽しんでいってください。
練習試合当日―――試合となる会場はうちの賀晴高校体育館となった。そこで成旬高校がやってくる前に、得点ボードやタイマーそして監督と選手が座るパイプ椅子などの準備に取り掛かっていた。
「よしぃ、あとは相手が来るだけだなぁ」
玉置先生も気合いが入っているようであった。俺たちバスケット同好会にはユニフォームがまだ存在しない。そのため、今回は体育で使うビブスをつけて試合に挑む。
すると、遂に成旬高校が体育館に入ってきた。
「こんにちはーっす!!」
「おぉ、来たかぁ。お前らぁ、くれぐれも失礼のないようになぁ」
「「「「こんちわーっす」」」」
築村は挨拶しなかった。
両チームがそれぞれ相手の監督に挨拶をしに行く。
「今日はよろしくお願いしますっス!ってなんで僕?」
「いや、それっぽいから」
こういう監督への挨拶号令は、キャプテンがするものである。しかし、このチームには明確なキャプテンが存在しないためこんなことになる。
成旬高校の監督は外見は白髪で、温厚でとても優しそうなお爺さんという感じであった。
「君たちが玉置ちゃんの教え子か、うん、うん。私は東堂茂雄です。今日はよろしくね」
挨拶が済むと、東堂さんと玉置先生が挨拶を交わす。
「いやぁ、今回は練習試合を受けていただいてありがとうございますぅ。本日はよろしくお願いしますぅ!」
「まさかもう一度君が率いるチームと戦える日が来るとは思っていなかったよ。選手たちはどうか知らないが、私はすごく楽しみにしていて、眠れなかったよ」
「またまたぁ。相変わらず口が上手いですねぇ」
「じゃあ、そろそろ始めようかね」
玉置先生と東堂さんが話している間に、俺たちと成旬の選手たちはハーフコートでそれぞれフォーミングアップをして試合に備える。試合前のファーミングアップはシュート練習などをすることが多い。
そして両チーム共、自分たちのベンチに戻り、試合に向けて準備を始めた。
「いやー緊張するっスね」
「今更緊張してどうするんだ」
築村が言う。
俺たちは普段の練習着の上からビブスを着た。これでこちらの試合の準備は万端である。
「お前ら集まれぇ。相手は知っての通り格上だぁ。だからと言ってぇ、ビビることはねぇ。普段の練習ってのはぁ、こういう試合のためにやるものだぁ。ちゃんと練習をやっていたなら決して恥じることないプレーができるはずだぁ」
「「「「はい」」」」
築村は返事しなかった。さっきから挨拶も返事もしないこの人は不良か何かなのだろうか。
「ようしぃ、行ってこいぃ!」
俺たちはコートに入る。
一方、成旬高校のベンチでは―――
「仲本と上野は一体どこで何をやっているんだ!」
怒りを露わにし、話すのは成旬高校のキャプテンを務めている若林太一さん、3年生である。
「仕方ないねー。じゃあ、メンバーを発表するよ。若林、谷村、前田、飯泉、吉井。この5人で行こう。相手は発足して数週間のチームだから、胸を貸してあげるつもりでやりなさい」
「「「「「はい」」」」」
監督の東堂さんはメンバーを発表し、成旬の5人がコートに入る。審判や得点ボード、タイマーなどは5人しかいない俺たちにはできないので、全て成旬高校のベンチメンバーが担当してくれた。
選手プロフィール
賀晴高校 ユニフォームビブス
相田侑亮 PG 171cm
大滝慎太郎 C 188cm
藤崎綾二 SG 163cm
木山玲奈 SF 166cm
築村溱 PF 177cm
成旬高校 ユニフォーム緑
若林太一 4番 PF 181cm
谷村 5番 PG 172cm
前田 6番 C 185cm
飯泉 7番 SF 175cm
吉井 8番 SG 175cm
「これより成旬高校 対 賀晴高校の試合を始めます。礼」
「お願いします」
コートにいる10人が挨拶を済ませると、ジャンプボールが始まる。
ジャンプボールとは試合を始めるための儀式みたいなところがあり、コートのど真ん中の円、センターサークルで両チームの代表者がサークル内に立ち、審判がボールを真上に上げるのを触って、チームメイトにボールを渡せるようにボールを叩くことを指します。ボールは高く上げられるので、代表は基本的にチームで最も背が高いセンターが選ばれることが多い。サッカーで言うところのコイントスの役割があり、これで先攻と後攻が決まる。代表者以外のチームメイトはセンターサークル外でそれを囲うように立つのだが、たまに起きてしまう出来事の一つとして、代表がボールを叩いて、チームメイトにボールを渡すのだが、囲うように立っているため、自陣がどっちでどこに攻めるのかわからなくなり、知らぬ間に自分のゴールに向かって攻めていたということもある。
センターサークルで構えるのはうちのチームから大滝が、成旬からは前田さんが選ばれた。前田さんの身長は大滝とそれほど違いがない程度であった。緊張の瞬間が訪れる。誰もが固唾を飲み、審判のボールの動きを見守る。次の瞬間、審判がボールを上に投げる。大滝と前田さんが一斉にボールへ向かって飛ぶ。ボールを叩いたのは大滝であった。
「(うお!こいつ高い!)」
前田さんはそう思った。
しかし、叩いた場所が悪く、ボールは相手チームの谷村さんが受け取り、試合が開始となった。
説明が遅くなってしまったが、バスケの試合は4区画に分かれており、1区画のことをクォーターと呼ぶ。呼び方としては第1クォーターということになる。1クォーター10分となり、それが第4クォーターまで行われる。つまり40分となる。バスケにはこの大きなタイムとは別にいくつかの時間に関するルールがあるため、ここで説明しよう。
バスケを楽しむ上で知っておくべき時間ルールの一つに24秒ルールと呼ばれるものがある。24秒ルールとはオフェンスがボールを持ってからゴールを決める、もしくはゴールリングに当たるまでの時間を計測されており、ゴールが決まるか、ゴールが入らずとも、リングにボールが当たる、攻守が交代する以外ではリセットされない。つまり、ボールがラインの外に出て、スローインで中に入れる際も攻守に変更がなければ、時間はそのままリセットされず、続行となってしまう。オフェンスはこの時間に気をつけて攻めなければならない。24秒が経過してしまうと、自動的に相手ボールになってしまうので、サッカーでたまに使われている時間稼ぎはできないようになっている。
もう一つ覚えておいて欲しいルールは3秒ルールと呼ばれるものである。これまた少し面倒なルールであり、これもオフェンスにまつわるルールである。コートにはゴール下に四角形が引かれている。結局のところ、ゴールを決めるには3Pシュートや中距離からのジャンピングシュートもありますが、遠くから打てば外れてしまう可能性があるため、人間が考える手段としてゴールに近ければ近いほど、シュートは決まりやすいと考えるものだ。だから、ゴール下で待ち構えていれば、ゴールを決めやすいのだが、そうするとディフェンスは守りにくくなり、どうしても不利になってしまう。そこで3秒ルールを設けることで、待ち構え防止などの役目を果たすものとなるので覚えておいてもらいたい。
それでは試合に戻ろう。
谷村さんがボールを受け取り、試合がスタートした。
「よし!落ち着いて一本取りに行くぞ!!」
キャプテンの若林さんの言葉でチーム全体がまとまりを見せていた。成旬のオフェンスで試合が始まるわけだが、ディフェンスは大きく分けて2種類あり、マンツーマンディフェンスとゾーンディフェンスがある。賀晴はマンツーマンディフェンスを採用しているので、今回はそれを説明するぞ。
マンツーマンディフェンスはその名の通り、1対1の構図になるようにつくディフェンスとなる。よくマッチアップと言われるのはこのことである。つく相手は同じ体格であったり、ポジションで決めたりするが、体格同じであれば、マークした時にシュートやドライブを止めやすいので、体格の方が楽につけるのだが、俺は同じ体格がいないのでかなり不利である。
「さて、お手並み拝見だね。玉置くん」
東堂さんは不敵に笑った。
続く。
解説でほとんど終わってしまいました。次回から本当に試合が始まりますので、楽しみにしていてください!
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!