第44Q Amanoboshi Versus Kairan
第3章の最終回の設定が完成したのですが、もう第3章が最終回でもいいんじゃないかと思えるほど、過去一で素晴らしいものができたと自負しています。しかし、今のペースではそれを皆様の元へお届けするのは、もう少し先になりそうです(汗)
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
ある朝―――
「おはよう」
「おはよう。今日も練習?」
叔母さんが朝ごはんの支度をしながら俺に聞く。
「ううん。今日は休み」
「へぇー珍しいわね。なんか予定あるの?」
「うん。同じ同好会の子とインターハイの試合観に行くー」
「そっか。アンタも出れる側になんないとねっ」
叔母さんはイタズラっぽく言う。
「わかってるよー」
俺は朝ごはんを食べて家を出た。
インターハイ本戦。夏休み中に行われるバスケプレーヤーにとってのビッグイベント。この日、天ノ星は海蘭高校とベスト4をかけた準々決勝が行われることになっていた。俺と木山さんはいつものように試合観戦にやってきた。何故いつも俺は木山さんと試合観戦をしているのだろうかと疑問に思ってはいたが、細かいことは気にしないことにした。
俺たちが会場に入った頃には、もうすぐ試合が開始されるというタイミングであった。
「なんとか間に合ったな」
俺たちは今回も2階席で試合の様子を見守ることにした。これはあくまで個人的な意見であるが、2階席の方が全体を上から見られるため、流れをまだ追いやすい気がするのである。
そして選手たちがベンチ入りを始めた。
「おお!海蘭だ!」
試合が始まったわけでもないのに、海蘭が入ってくるだけで会場が大盛り上がりを見せた。
「すごい盛り上がり様ね」
それもそのはず。海蘭高校はインターハイ、ウィンターカップと2大大会において常に本戦に出場し、ベスト4以上の成績を収め続けている全国大会の常連校なのである。
天ノ星の選手たちも入場するが、海蘭と比べるとその人気はどうしても劣ってしまっていた。
「木山さんはどっちを応援するの?」
「ん?海蘭に決まってるじゃない」
当たり前のことを聞くなと言わんばかりの即答に思わず耳を疑ってしまう。
「え?」
「え?」
「「え………」」
こういう時はやっぱり知り合いのいる学校を応援するものではないのだろうか。俺の感覚が間違っているのだろうか。
選手たちがそれぞれ準備を済ませ、いよいよ試合が始まろうとしていた。
「相手は昨年の2位だ。どこからどう見ても格上。俺たちは挑戦を受けて立つ側が多かったが、今回は違う!俺たちが挑戦者だ!出せるもん全部出して駒を進めるぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
菊川さんも天ノ星の選手たちもいつにも増して気合いが入っていた。しかし、そんな中でも神田さんはいつも通りクールで返事をしなかった。どことなく築村に似ている気がするのは気のせいだろうか。
一方その頃、海蘭ベンチでは―――
「天ノ星か。ここ最近急激に力をつけて来ているチームだ。お前たちに伝えることは特段ない。いつも通り油断せずに行こう」
「「「「「はい」」」」」
監督の河原耕三さんが冷静に選手たちに話す。
両チームの作戦会議が終わり、選手たちがコートに入る。
選手プロフィール
天ノ星学園 ユニフォーム白と紫
無良賢成 4番 PG 175cm
佐藤基矢 5番 PF 180cm
吾妻俊希 6番 SF 176cm
神田煌 7番 スウィングマン 177cm
中村晴人 10番 C 190cm
海蘭高校 ユニフォーム青
鷹岸一誠 4番 SG 179cm
雨木史哉 5番 PG 177cm
屋沢敦弘 9番 PF 182cm
桐野航牙 7番 SF 180cm
近藤秀喜 11番 C 190cm
「これより天ノ星学園 対 海蘭高校の試合を始めます。礼!」
「お願いします」
近藤さんと中村さんのジャンプボールで試合が開幕した。ジャンプボールを制して最初の攻撃権を手に入れたのは天ノ星だった。
「よし!よくやった中村!」
「うっす」
佐藤さんがボールをキャッチし、無良さんにパスを出す。
「落ち着いて一本取るぞ」
無良さんは優れた洞察力と正確なパスでゲームメイクを行う。
「ナイスパス」
吾妻さんにボールが渡り、ディフェンスについていた桐野さんをドライブで抜きにかかる。しかし、桐野さんはそれに追いついた。
「抜けない!?」
「残念でした」
そう言って吾妻さんのボールをスティールし、速攻を仕掛ける。
「海蘭の速攻だ!!」
観客たちも試合開始早々、大盛り上がりを見せていた。さすが準々決勝ということなのだろう。俺たちが出ていた試合や成旬と天ノ星の試合とは比べものにならないほどである。
桐野さんがドライブで駆け上がると、佐藤さんがディフェンスに戻ってきていた。
「そう簡単に先制点は渡さねぇよ!」
桐野さんはドライブをやめ、その場でドリブルをつき、相手の様子を伺う。
「(さて、どう抜きますかね)」
その隙に他の選手たちも天ノ星ゴールへと戻ってきてしまった。
「せっかくの速攻がダメになってしまったな!」
中村さんが後ろからスティールの手を伸ばすと、桐野さんはボールを手で持ち、ビハインドパスで鷹岸さんにボールを渡した。
「(嘘だろ!?今こっち見てなかったぞ!?)」
このプレーには中村さんと佐藤さんも驚きを隠せない。
そして鷹岸さんは冷静にシュートを決めた。
「今のパス、熱量が足りなかったわよ?」
鷹岸さんが戻りながら桐野さんに言う。
「はいはい」
桐野さんは適当に受け流した。
ちなみにビハインドパスとは通常のパスとは違い、通常のパスは胸の前でボールを持ち、パスする相手の方に体を向けて両手でパスを出す。ビハインドパスは片手でボールを持ち、背面にボールを持っていき、そのままの勢いでパスを出すものである。片手でパスを出すに加えて背中にボールがあるため、コントロールが難しい難易度高めな技である。しかし、ビハインドパスは右手でボールを持つと左サイドに、左手で持つと右サイドにしかパスを出すことはできないため、難易度の割には読まれやすいパスと言える。そのため不意打ちで打つことが多いかもしれない。
ちなみにビハインドパスの祭に使わないもう片方の腕の肘にボールを当てて、ギリギリで逆サイドにパスを出すエルボーパスというものも存在し、この技を併せ持っておくことでビハインドパスがどっちに行くのかわからなくなるため真価を発揮すると言えるだろう。
「(先制点を取られるのは想定内だ。できれば先制点を取って勢い付きたいところではあったが、仕方のないことだろう。ここからが本番だ)一本だ!!」
菊川さんが声を張り上げる。
無良さんは神田さんにパスを出した。
「熱の入ったいい目ね」
ボールを持った神田さんに鷹岸さんが言った。
「知らねぇよ」
そう言って神田さんは鮮やかなドライブで鷹岸さんを抜いた。
「うおぉ!熱の入ったドライブだなこりゃ!?」
フリーになった一瞬を逃さず、ストップ&ジャンプシュートでゴールを決めた。
「これで振り出しだ」
神田さんが鷹岸さんに向かって切り出す。
「いいじゃないのー!そういうのもっと頂戴頂戴!」
「げっ気持ち悪っ」
神田さんは鷹岸さんの意外な反応にゾッとして走り去ってしまった。
もしかしなくてもこの鷹岸さんはオカマなのだろう。
「ちょっと待ちなさいよー!」
こうして両者一歩も譲らない凄まじい試合が幕を開けたのだった。
多分薄々気づいている方もいらっしゃるかと思いますが、下の名前まで考えられているキャラとそうでないキャラの違いは今後の活躍度合いとなっています。そこから考えると海蘭高校は今後も登場する大事なキャラクターたちですので、よろしくお願いします!!
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




