第41Q Days spent with a genius
今回はいつもとは少し毛色の違う物語が展開します。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
その女子生徒の名前は名前は羽川詩音。中学時代からバスケをやっており、スポーツ推薦で園宮女学院高等部に入学した。もちろん推薦であるため高校生になってもバスケ部に入部した。
「よし!今日から頑張るわよ!!」
スポーツ推薦というものはやはり自分には推薦してくれるだけの力があると思ってしまうものである。そんな気持ちで入ったバスケ部には自分と同レベルの人間は山ほど在籍しており、そこでレギュラーの座を勝ち取るのは容易ではなかったらしい。
「くっそ。悔しい……」
羽川さんは何度も悔しい思いをしたと言う。
スポーツ推薦はレベルの高さで心が折れてしまう人も少なくなく、辞めていく人も大勢いたようであった。
「どうして辞めちゃうのよ!」
「だって無理そうじゃん。私地元の中学では一番上手かったのに、ここじゃ全然通じないんだもん。詩音、アンタは頑張りなさいよ」
「待ちなさいよ!」
しかし、羽川さんは負けず嫌いだったようで、辞めていった友達のためにも絶対にレギュラーを勝ち取ると決めてからは練習が終わっても1人居残り練習を繰り返し、2年生になる頃にはベンチ入りを果たし、試合にも出場できるようになっていた。出場した試合では必ず結果を残すようにした。
「詩音ナイッシュー!」
「いえーい!」
試合に出場できるようになっても羽川さんは一度たりとも慢心せず、居残り練習を続けた。
「詩音帰んないの?」
「うん。残って練習するわ。こんな部活だもの。いつ誰にレギュラー奪われてもおかしくないもんね」
そう言って自主練に励んだ。
そんなある日のことだった。1人のいかにも体の弱そうな女の子がバスケ部にやってきた。
「お、新道!病気はもう大丈夫なのか?」
「はい!今日から頑張りますねっ!」
監督もそんな女の子だからなのか、とても気を遣って接していたという。
羽川さんは見た目のわりに活発な女の子だなという印象を受けたらしい。
無理をしない程度に練習にも参加する新道と呼ばれる女の子。しかし、病気で全く練習していなかったとは思えない程の実力を練習で発揮したという。
「す、すごい……」
「ま、アタシは天才だからねっ!」
その実力に羽川さんは度肝を抜かれた。だが、新道さんに負けたくないという負けず嫌いがいい方に働き、羽川さんはより居残り練習に精を出すようになった。
1人、誰もいない体育館で練習をしていると、もう1人居残り練習をしている人間がいることに気づいた。
「あれ?あなたいつから!?」
「あ、ごめんね!脅かすつもりはなかったんだけど!」
「新道さんだっけ?」
「うん!新道姫乃!よろしくねっ!」
「私は羽川詩音。よろしく」
2人は握手した。
その時、羽川さんは初めて知ることとなった。天才と言う彼女は本当に天才ではあるのだが、それは決して楽して手に入れた力ではなく、常に人には見せない努力によって作り上げた天才であるということを。
「あと新道さんって堅苦しいから姫ちゃんって呼んでよ!」
「えー、いきなり馴れ馴れしくない?」
「そんなことないよ!ね?呼んでよ」
「そこまで言うなら……姫ちゃん」
すると、新道さんは満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、羽川さんのことは詩音って呼んでもいい?」
「うん!いいよ!」
2人は居残り練習の中で意気投合していった。しかし、新道さんは体が弱く練習に来ない日はざらにあったと言う。
「今日も休みか……。つまんないの……」
それでも練習に来た日は夜遅くまで練習に明け暮れた。
「はぁ、はぁ……姫ちゃん強すぎ……」
「詩音もいい線いってたけど、この天才にはまだ及ばないわねっ!にっしっしっ」
そう言って新道さんは人差し指で鼻の下を擦る。
そしていつしか羽川さんはスターティングメンバーとして、新道さんはシックスマンとして試合にも出場するようになっていた。
羽川詩音 12番 SG 165cm
新道姫乃 7番 SF 159cm
新道さんの得意とするプレーは女性では珍しいワンハンドのスリーポイントと高速のドライブであった。特にドライブにおいては負け無しとされており、そのドライブを止めた人間を羽川さんは見たことがないと言う。
ちなみに羽川さんもスリーポイントを得意としており、園宮女学院にはスリーポイントの名手が2人いると地元では有名だったらしい。
「いやー姫ちゃんのドライブ、ホント凄いよね!どうやってやってんの?」
「うーん。何だろう。人は上下左右の動きは目で対応できるけど、斜めには対応しづらいらしいの。だから、そこを突いて切り込むって感じなんだけど」
「へぇーそうなんだ。私も今度やってみよっと!」
「えー!パクらないでよー!」
それから日を増すごとに2人の絆はより強固なものとなり、2人だからできる連携プレーを試合でも連発していた。
そしてついにインターハイ決勝まで上り詰めたと言う。
「詩音!」
羽川さんが新道さんにパスを出す。新道さんはドライブで相手を全く反応させずに抜き去る。
「速っ!?」
これには相手もビックリであった。そしてこんな人も―――
「うおぉ!すげぇなぁ!あんな凄いドライブ初めて見たぜぇ」
相手がヘルプで詰め寄る。新道さんはそんなことに構わずシュートを放ったが、相手は何故かブロックに跳ばなかった。いや、跳べなかったという。
「あんなシュートを打つのか。これは是非ともうちに欲しいな」
スカウトマンたちも目を光らせるほどであった。しかし、これはまだ彼女たちが高校2年生の時のお話。彼女たちの高校バスケはまだ続いたという。
今回はとある2人の女性にスポットを当てたストーリーを書いてみました。これが後々重要になるので忘れちゃダメですよ!
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




