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籠球クインテット♪  作者: 千園参
第3章 The love of two mothers and the last magic.
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第40Q Summer vacation

皆さんこんにちは、今日から新章です。私個人としてはこの章が最も力の入った章になるのかなと思っています。

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 天ノ星との死闘を終えてから数週間、ミンミンミーンという鳴き声とあちこちで横たわる蝉たちが暑さを際立てる季節となっていた。


「いいかぁ?夏休みだからってハメをはずしすぎるなよぉ!わかったかぁ?」


 玉置先生は自分が担当しているクラスの生徒たちにテンプレートのような台詞を投げかけ、1学期が幕を閉じた。そしてその日の練習で、夏休みの練習予定が発表された。


「俺たちが目指すのはウィンターカップだぁ。予選が始まるのは10月ぅ、そこまでお前らを徹底的に鍛え上げるためのスケジュールを組んできてやったぞぉ」


 そう言って玉置先生はスケジュールの書かれたプリントを俺たちに手渡した。


「や、休みないっスね〜」


「当たり前だぁ!大会で勝つにはどこもこんなもんだよぉ!」


 玉置先生はいつにも増して気合いが入っていた。何かいいことでもあったのだろうか。そして夏休み終盤には―――


「先生、この合宿ってなんですか?」


 俺はプリントに書かれた1週間の合宿という文字が気になり、玉置先生に尋ねることにした。


「何って合宿は合宿だよぉ。まぁ合宿は金もかかるしぃ、親御さんとよく相談してくれぇ」


 合宿。俺の人生始まって以来、合宿なるものは初めてであるため、家に帰って叔母さんに相談してみることにした。


「叔母さん、今度バスケ同好会で合宿があるんだけど」


「え?行かせないわよ?」


 叔母さんはとぼけた顔をして即答した。


「なんで!?」


 あまりの即答に驚きを隠せない。


「合宿なんてしんどいだけだし、お金だってかかるし、割りにそんなに後悔ないし!」


 何故だろう。叔母さんの言葉から無性に説得力を感じた。


「えー行きたいよー」


 子供のように駄々をこねてはみるものの―――


「ダメー」


 の一点張りであった。


「ケチー!」


「ダメなものはダメよ。バスケの合宿でしょ?」


「うん」


「だったら、私が教えてあげるわよ」


 叔母さんは腕を組んで仁王立ちした。


「叔母さんってバスケできるの?」


 俺は素朴な疑問を叔母さんに尋ねた。


「ふっふっふ。何を隠そう園宮女学院高等部、バスケ部部長とは私のことよ」


 叔母さんは自慢げに話し始めた。


「いやーあれは今思い出してもいい思い出だったわね」


「それ本当なの?」


 叔母さんは懐かしそうに話すものの、どこか疑わしい。


「本当よ」


 そう言って叔母さんは押し入れに向かい、何かを探し始めた。


「確かこの辺にあったはず……」


「何探してんの?」


「お、あったあった!」


 叔母さんは押し入れから一枚の写真を取り出した。そこには驚くべきことに同じユニフォームを来た母さんと叔母さんが写っていた。そして叔母さんはキャプテンの証とも言える4番を身につけていた。


「マジか……」


「ね?言ったでしょ?バスケなら私に任せなさいっ!」


「でも、それならなんで今まで黙ってたのさ」


「うーん、特別言うほどのことでもないかなと思っただけよ」


 叔母さんはどこか含みのある言い方をした。


「ま、友達が合宿に行っている間は私が面倒を見てあげるわよっ!」


 私に任せなさいと言わんばかりに胸を叩いた。


「あ、ありがとう」


 こうして俺の人生初の合宿は絶たれてしまった。しかし、そんなショックよりもユニフォームを着た若き日の母さんのことが今は気になって仕方がなかった。


「若い頃の母さんってどんな感じだったの?」


「うーん、そうねー。口癖は『アタシは天才なのよ』だったわね」


「そうなの?」


「うん。でも、姫ちゃんは口だけじゃなくて本当に天才でね。シュートもドライブも姫ちゃんが止められてるのを見たことないわ。それは高校時代も日本代表になってからも」


 そう語る叔母さんはどこか辛そうであった。


「そ、そうなんだ」


 辛そうな叔母さんの姿を見て、俺も返事を詰まらせた。


「また教えてよ母さんのこと」


「ええ、また今度ね。さっ!晩御飯にしよっか!」


 そう言って叔母さんはオムライスをテーブルの上に並べた。本当はもっと母さんのことを聞きたい。でも、何故か直感的に聞いてはいけないような気がしたのだった。


「「いただきます」」


 晩御飯を済ませ、俺は自分の部屋に入り、ベッドへダイブした。


「母さん……会いたいよ……」


 俺の独り言を扉越しに叔母さんが聞いていた。


「姫ちゃん。綾二にはやっぱり本当の母親が、アンタが必要なのよ……」


 ベッドにダイブしたまま俺は疲れて眠ってしまっていた。目を覚ますと外は日が登り始めていた。


「あのまま寝ちゃったのか。そっか今日から夏休みなんだっけ。もう少し寝るか」


 俺は二度寝することにした。


「綾二。綾二」


「母さん?」


「綾二、綾二!」


 名前を呼ばれて目を覚ますと叔母さんが俺の名前を呼んでいた。


「やっと起きたわね。そろそろ起きないと練習遅刻するわよ」


「あ、うん。ありがと」


 起き上がり、リビングへと足を運ぶ。朝食を済ませて俺は練習に向かう。


「いってきます」


「いってらっしゃい。気をつけてね」


 叔母さんはどこか不安げに俺を見送った。


「どんどん似てきてるのよね。姫ちゃんと綾二が……」


 俺を見送った後、叔母さんは仏壇の母さんに手を合わせた。


「私はあの子の母親になれてるのかな……」



第3章 The love of two mothers and the last magic.



 一方、俺は夏休み初日の練習にのそんでいた。


「よしぃ!じゃあぁ、練習始めるぞぉ!」


 打倒、天ノ星。俺たちはウィンターカップで天ノ星を倒すため夏休みの練習に打ち込むのであった。しかし、この時の俺たちはまだ知らない。上には上がいるということを。

章タイトル通りメインキャラクターとして綾二の母である姫乃と育ての親である叔母さん(まだ名前非公表)が活躍します。2人の母の活躍を見逃さないでください!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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