第39Q Versus Amanoboshi Part 6 ''A soul burned by a star"
日頃より今作を楽しんでくださっている読者の皆様、改めて御礼申し上げます。おかげさまで10万文字も達成することができました。ありがとうございます!
しかし、今回は少し残念なお知らせ?でもないのかもしれませんが、報告があります。
それは今回を持ちまして、今作の毎日投稿をやめさせていただきたいというものです。今、コアなファンな方々も増え、波に乗ってきたかな?というところではありましたが、毎日投稿に向けて2500文字を提供するのが困難になってきましたので、より良いものを作るため投稿頻度を落とさせてください。また次回は少し休んでから投稿したいと思います。ご理解の程、よろしくお願いします。
それでは!楽しんでいってください!
「おぉ、目が覚めたかぁ」
ホッとしたように玉置先生が目覚めた大滝に声をかける。
「ここはどこですか?俺はどうしてこんなところに……」
病院のベッドで目を覚ました大滝は困惑していた。
「お前は試合中に頭を打って気を失ったんだぁ。検査の結果ぁ、ただの脳震盪だったそうだぁ。特に問題はないみたいでよかったなぁ」
玉置先生が優しく言うと―――
「みんなは?試合はどうなったんですか!?」
大滝は飛び起きて玉置先生に試合のことを聞いた。すると、玉置先生は時計を指差し―――
「お前が倒れたのは今から2時間も前だぁ。試合はとっくに終わってるよぉ」
「そんな……。俺はどうしてこんなに役立たずなんですか………」
大滝はベッドのシーツを握り締めながら、自分の無力さを呪った。
「確かに今のお前は弱いぃ。おそらくチームの中でも1番なぁ。だからぁ、これから目一杯練習してぇ、今度はお前がチームを助けてやるんだぁ」
「…………」
大滝は涙で何も答えられなかった。
時は少し戻り、2時間前の賀晴高校体育館では4対4で試合が再開されていた。天ノ星は速水を抜き、神田さん、中村さん、梅西、原口さんの4人で戦っていた。
試合は一方的なものとなっており、体育館の外で試合を観戦していた川端さんはあまりの試合展開に顔を手で覆い隠していた。
「藤崎くん……」
「神田先輩ヤバすぎだろ………。10本連続スリー………」
神田さんの本気に同じ天ノ星のベンチも引いていた。ふと得点板が目に入った。そこには115-61というとんでもない数字が刻まれていた。
「クソ………」
築村や相田、木山さんも疲弊しきっており、気がつけば俺たちは点を取れなくなってしまっていた。
「ここまでか」
菊川さんも俺たちの様子と点差を見て、試合の終わりを確信した。やがてタイマーは秒刻みとなり、俺たちは何もできないまま第4Qが幕を閉じることとなった。
「129-61で天ノ星の勝ち。礼」
「ありがとう……ございました」
整列が終わっても俺たちはコートに立ち尽くしていた。負けたことへの悔しさと、大滝への心配、監督の不在、あらゆるものが重なり、俺たちは放心状態となっていた。そんな中、築村は荷物をまとめて、1人体育館を後にした。
「おい、築村」
俺たちには目も暮れず、去っていってしまった。
「お前たちも苦労はしているようだが、まだ足りない」
菊川さんが放心状態の俺に声をかけてくれた。
「はい……」
「まぁそう落ち込むな。まだ出来て数ヶ月なんだって?それでうちのレギュラー3人を含めたチームとここまで戦えたことは評価できる。だが、それだけだ。それじゃあ先はねえよ」
菊川さんはハッキリと言い切ってしまった。
「そうですか……。じゃあ、どうすれば?」
「それを俺に聞いてどうする?」
「え」
「え、じゃねえよ。どうするかはお前らが自分で考えるんだよ!誰かから答えをもらってばっかりじゃ、強くはなれないぞ。自分で考えて実践して初めて身につくってもんだ。最短でとは言わない。全国大会で待つ。俺たちのところまで駆け上がってこい」
「はい」
そう言い残して菊川さんと天ノ星の選手たちは体育館を去っていった。
「げっ、雨降ってんじゃねぇか」
中村さんがそんなことを言っている声が外から聞こえてきた。
その後、体育館の片付けを済ませ、俺たちもすぐに体育館を出た。下を向きながら重い足取りで歩いていると、目の前に川端さんが立っていることに気づいた。
「あ、藤崎くん」
「ごめん、ダメだったよ……」
その言葉を口にした時、後の言葉が続かなかったのと、目の前が歪んで見えた。これは本当に歪んだわけではないし、雨のせいでもない。涙が流れ出ていたのだ。すると、川端さんは俺を優しく抱きしめてくれた。
「よしよし。いいんだよ、泣きたい時は思いっきり泣けば……。私たちの夢は思ったよりも遠いね」
「………うん」
彼女の優しさに涙が止まらなかった。それからしばらくして落ち着くことができた。
「ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
ここでもう一度彼女に誓おう。ここからスタートを切るんだ。そして次は必ず勝つ。上仙にも天ノ星にも。
「俺もっと強くなるよ。もっと練習して必ず全国大会に出る。その時が来たらもう一度観てもらいたいんだ。今度はあんなカッコ悪い姿は見せないから」
「わかった。楽しみにしてるねっ」
川端さんは優しく微笑んだ。彼女の笑顔に重なるように雨は止み、眩しいほどの日の光が差し込んできた。
「お、晴れてきたっぺ」
梅西が空を見上げる。
「この晴れはまずいかもしれないなー」
菊川さんがそんなことを呟く。それに対して中村さんは―――
「どうしてですか?」
「うん?ああ、賀晴ってことなんだろうなと思ってよ」
「言ってる意味がわかんねぇよ」
神田さんが口を挟む。
「お前は普段は俺のこと無視するくせに、口を開いたと思ったら口悪いよな!」
菊川さんが神田さんに向かって話しかけるが、神田さんは無視して歩き出した。
「藤崎綾二……。今度は俺の手でアイツを倒す」
「ん?舞兎、今なんか言ったか?」
速水が明智に尋ねる。
「いや、なんでもない」
「さ、次はインターハイ本戦だ!お前ら気合い入れていけよ!さて、あの夕日に向かって走るか!!」
菊川さんは昼の太陽に向かって走っていった。一体いつの時代なのだろうか。
第2部 完
天ノ星編は意外といえば意外な結末を迎えることになりました。個人的には、晴れからの菊川の「賀晴ってことなんだろうな」という台詞は意味は不明ですが、気に入っています。
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回がいつになるかはわかりませんが、そう長くは待たせません!!お楽しみに!!




