第38Q Versus Amanoboshi Part 5
いよいよ天ノ星戦クライマックス!多分誰も予測できない展開に酔いしれてください!
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
「おい!バスケ部が今、ヤバいらしいぞ!」
「ヤバいってなんだよ?」
「なんか練習試合でスゲェ盛り上がってるんだって!俺たちも見に行こうぜ!!」
今日は土曜日だが、他の部活の練習や勉強などをしていた生徒たちが次々と噂を聞きつけ、体育館へと集まってきていた。そしてそこには川端さんの姿もあった。
「ごめんなさい。ちょっと通してね。あ、いた。藤崎くん」
川端さんは胸に手を当て、俺たちの試合を見守ってくれていた。
そんな中、俺にパスが回ってきた。そして冷静にスリーを決めた。
「よし!」
俺はガッツポーズした。
「すごい!あんな遠くから!」
生徒たちは俺のスリーを見て驚いてくれていた。逆に気がつけば集まっていたギャラリーに俺たちも驚いていた。
「なんかすごい観客増えてないっスか?」
「本当ね。いつの間に集まってきたのかしら」
相田と木山さんに対して築村は―――
「集中しろ。一瞬でも気を抜いたら恥かくだけじゃ済まねぇぞ」
「わかってるわよ」
応援とは不思議なもので、特別な力があるわけではない。にも関わらず、俺たちに天ノ星と戦えるだけの力をもらえる気がするのである。
原口さんが放ったシュートがゴールリングに弾かれる。
「リバウンド!」
大滝が速水を抑え込み、リバウンドを制した。
「出せ!」
築村が走りながら大滝に向かって叫ぶ。大滝は築村にパスを出す。レイアップに向かうと中村さんがブロックに入った。
「残念だったな」
「それはどうかな」
築村はダブルクラッチで躱し、レイバックの状態でバックボードに当ててゴールを決めた。
「きゃーー!!あの7番誰!?ねー!あの7番誰!!」
「3組の築村くんだよ!」
「カッコいい!」
体育館の外から見ていた女子達が築村にメロメロになっていた。
俺はシュートを決めた築村の元へ駆け寄り―――
「おい、築村」
「なんだ?」
ハイタッチと見せかけて―――
「あんま調子乗んなよ」
「はあ?今そんなこと言う流れじゃなかっただろうが!!」
俺たちが言い合いをしていると、原口さんがドリブルで接近してきていた。
「こんなことやってる場合じゃないだろ!」
「お前が言い始めたんだろうが!とにかくディフェンスだ!」
原口さんが神田さんにパスを出そうとしたところを相田がカットする。
「さっきからエースにボールを集めすぎなんスよね。そろそろ読めるっスよ」
それに合わせて俺が敵陣に猛ダッシュで駆け上がる。相田は俺の姿を確認して野球のボールを投げるかのように俺にパスを出した。俺はそれをしっかりとキャッチし、レイアップを決めた。その直後にブザーが鳴った。
「白、タイムアウトです」
「おいおい、お前ら何やってんだよ。みっともねえな。そんな試合をするぐらいならやらない方がマシだ。3年生は冬にはいなくなるんだぞ?お前ら1、2年で戦えるってところを俺に見せてみろよ!」
菊川さんが熱い想いを選手たちにぶつけた。すると、梅西が頭に置いていたタオルを取り、監督の元へと歩き出した。
「あ?どうした?」
「監督………。オレを出せよ」
そう言う梅西の目は前半で途中交代した時までのふざけたものではなく、真剣そのものであった。
「まったく……。ようやくか。お前はいつも遅いんだよ。西田、梅西と交代だ」
西田 → 梅西
タイムアウトが終了し、選手たちがコートに戻る。
「隼……」
「待たせたな。本気の本気だぜ」
早速、原口さんが梅西にボールを回す。梅西がドリブルをついたと思った時には築村は既に抜かれていた。そして気がつくとボールはゴールネットをくぐり抜け地面に落ちてバウンドしていた。
「(今なにが起きた!?)」
あまりに一瞬の出来事で俺は呆気に取られていた。
梅西は首をコキコキと鳴らしながら、ディフェンスへと戻っていった。
「(これだこれ。梅西がどれだけ不真面目な奴でも、それでもシックスマンとして俺が使い続ける理由。それはアイツには絶対的な才能があるからだ。それは努力でどうこうできるようなものじゃない。神が与えた才能だ!!)」
梅西の本気に菊川さんは興奮が隠しきれないようであった。
相田が木山さんにパスを出したところを梅西がカットした。
「いけ!梅干し!速攻!!」
梅西は高速ドライブで一気に攻め上がってきた。それを阻止するために俺と築村がダブルチームでゴールを守る。すると、梅西はボールをゴール付近に放った。俺たちはそのボールを目で追う。その隙に梅西は俺たち2人を避け、ジャンプしてボールをキャッチし、ダンクでゴールに叩き込んだ。
「1人アリウープ!?」
俺は梅西の驚異的な身体能力に後退りしてしまった。
「溱。これがオレとお前の差だ」
梅西が築村の肩に手を置きながら、言い放った。ドンマイ築村。冗談はさておき、梅西が戻ったことで試合の流れが一気に変わってしまった。
「どうにかしないと」
俺はそんな気持ちでオフェンスにのぞむが、勢い付いたディフェンスで思うように動けなくなってしまっていた。そして神田さんが隙をついて、俺のボールをカットした。
「しまった!?」
ドライブで駆け上がり、前を走る梅西にパスを出した。梅西の前に大滝が立ち塞がる。
「これ以上はやらせない!」
梅西は関係なくジャンプしてダンクに向かう。大滝もブロックするために跳んだ。大滝の手が梅西のボールに触れるが、梅西の力は大滝を上回り、大滝を吹き飛ばしてダンクを決めた。吹き飛んだ大滝は背中から落下し、勢いで後頭部を強打した。大滝はピクリとも動かなくなってしまった。
「大滝ぃいい!!」
俺と相田が大滝の元へ駆け寄るが、全く反応がない。
「待ってろぉ!今救急車を呼んだぁ!!あとお前らぁ!見せもんじゃねぇぞぉ!!」
玉置先生も大慌てで救急車を手配した。そして体育館の外で群がる生徒たちを解散させた。
それから十数分で救急車が到着した。大滝を担架に乗せ、救急車へと運ばれていった。玉置先生も救急車に同行し、大滝の様子を見ることになった。
「お前らぁ、俺はこのまま病院に行くぅ。菊川ぁ!!あとは任せたぞぉ!!!」
そう言って救急車は病院へと発進していった。
「顧問もいない、メンバーもいない……か。あとは任せると言ってもどうするかな?君たちどうする?」
菊川さんが残された俺たち4人に尋ねる。黙り込む俺たちに菊川さんがある提案を持ちかけてきた。
「もし君たちにまだその気があるなら、ここからは4対4で試合を続行しないか?」
俺たちは互いに顔を見合わせ、覚悟を決めた。
「望むところです……」
「よし!じゃあ、再開だ!」
大滝と玉置先生を欠いたバスケット同好会はラストピリオドに挑むことになるのだった。
大滝が離脱するというまさかの展開を挟んでみました。大滝はこのまま退場となってしまうのでしょうか。それは次回のお楽しみです!
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




