第32Q Two people reaching for the stars
皆さんこんにちは!
今回は試合が終わりインターバル的なお話になっております。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
天ノ星学園バスケ部―――先日、圧倒的な力で成旬高校を敗り、県大会優勝を果たした県内最強のチーム。何度も言うがその部員数は100を超えるとされ、その中の15人、試合に出場する5人になるには、日々過酷なトレーニングをこなし、100人以上のライバルを蹴落とす必要がある。チームメイトであってチームメイトではない、それが天ノ星学園バスケ部である。
「今年で無良、佐藤、吾妻、仁田が終わりか。新しい最強を探さないとな」
菊川さんは次の新人戦や来年のチーム構成に頭を悩ませていた。
驚くとべきことがある。それは天ノ星はインターハイやウィンターカップでまだ優勝していないということ。それはつまりこんな化け物集団を倒すチームが存在するということを意味する。全国大会で優勝するチームとは一体どんなチームなのだろうか。
「よし!次はインターバル走だ!手を抜いてる奴が1人でもいたら一生終わんねぇから覚悟しろよ」
100を超える部員がいるため、やはり2軍と3軍存在する。しかし、基礎トレーニングは合同で行われている。その理由は菊川さんがいつ何時に誰が覚醒するかわからない以上、自分の目で確かめたいということらしい。
「し、死ぬ………。もうダメだ………」
毎日の地獄の練習に速水は死にかけていた。
「おい、しっかりしろ」
中村さんが声をかける。
この無茶で変人なおっさんが監督として認められているのはこの観察力と監督としての責任感を部員が認めているからである。
「うーん。よし決めたぞ!全員集合だ!」
「はい!!」
菊川さんが全員に集合をかけた。
「今度練習試合をすることにした。2軍でな。ただ2軍だけだと不安だから、中村、神田、梅西、お前らも同行しろ。対戦相手と日時が決まったらまた連絡する。解散」
「はい」
「………」
「待ってました!」
その後、コーチと菊川さんが話し合う。
「2軍がどこまでやれるかを試合形式で確認するにはいい機会ですが、どこと対戦するんですか?」
「相手は大体決まってるんだけどな」
「どこですか?」
「賀晴って知ってるか?」
「賀晴?聞いたことないですね。どこですか?」
「だよな。無名校だから知らなくて当然だ。だが、今のうちに見ておきたいチームなんだよな」
「菊川さんがそこまで言うチームなんて珍しいですね」
「ああ、あのチームにはこれからどうなるかわかんねぇ奴らがいっぱいいるんだよな」
県大会も終了し、季節はいよいよ夏になろうとしていた。そして俺たちはそんな中、今日もグラウンドを駆け抜ける。
「暑いっスね……」
「し、死ぬ………」
相田と大滝は今にも干からびそうな声で言う。
「まだまだ!」
俺は先日の成旬と天ノ星の試合を見て、力が漲っていた。あんな熱い試合を見せられて燃えないバスケットマンなんてこの世にいるはずがない。
「よしぃ。体育館が空いたから中に入るぞぉ」
体育館に入り、ボールを持つと燃え上がるような気持ちがより一層強くなるのを感じた。やっぱりバスケは楽しいスポーツなのだ。
「玉置先生。玉置先生。職員室へお願いします」
校内放送で玉置先生が呼ばれることとなった。
「おっ俺今呼ばれたよなぁ。あとはお前らで練習してぇ、片付けて解散してくれぇ」
そう言って玉置先生は走って職員室に向かった。
それからも少し練習を再開し、解散した。着替えを済ませ、家に帰ろうとした時―――
「あ、しまった。教室にスマホ忘れたかも」
この学校はある程度の時間になると、教室は鍵をかけられてしまうので、そうなる前に急いで取りに行くことにした。
今は夕方というよりも夜に近い時間。生徒なんているはずもないのだが、キュッ、キュッっと靴が床に擦れた時に鳴る音がどこかから聞こえてきた。
「ん?誰かいるのか?」
音がする方へと俺は足を運ぶ。音はドンドン近付いていき、ついに―――
「この教室だな……」
さすがに扉を開けて入っていく勇気はないので、教室の扉についている窓ガラスで覗いてみることにした。
「あれは!?」
教室にいたのはマイクを片手に踊る1人の少女、川端真央の姿だった。しかし、変である。ダンス部の活動にしては人がいない。彼女は一体何をしているのだろうか。彼女の様子をしばらく観察していると、その姿はダンサーではなく、むしろ。
「誰!?」
川端さんが俺の気配に気づき、振り向いた。隠れても仕方ないので、扉を開けて中に入ることにした。
「藤崎くん!?」
「ごめん……。覗くつもりはなかったんだけど、つい」
「ダンスは見られるものだし、怒ってないよっ」
彼女は笑顔で言った。そこで気になることを川端さんに聞いてみることにした。
「川端さんって本当にダンス部なの?」
「どうして?」
「川端さんの動きはそのなんて言うか……。ダンサーというより、そのアイドルみたいだなって」
今度こそ怒られると覚悟を決めた時、川端さんの顔を見ると、その顔は赤く染まり、なんとも言い難い表情になっていた。
「ば、バレちゃったか………」
「へ?」
「今から言うことはぜーーーったい!内緒にできる?」
「できる!」
「わかった。じゃあ、言うね」
川端さんもまた何かの覚悟を決め、こう続けた。
「私ね。アイドルになりたいの。私ね。子供頃からテレビで観るアイドルに憧れてたの。いつも笑顔で、フリフリの可愛い衣装に身を包んで、歌を歌いながら可愛いダンスをする。その人たちが頑張っていると、不思議とみんなが笑顔になるんだよね。笑顔を与えてるって言うのかな?そんなアイドルに私もなりたいなって。だから、ダンス部って嘘をついて教室で練習してたの」
「へぇーそうだったんですかー」
何故か敬語になってしまった。
「ふふっ何その反応」
「いや、だって話がもう追い付いてないよ」
「そうだよね。変……だよね……」
「変じゃない!!全然変じゃない!!」
俺は真っ直ぐ彼女を見た。
「俺応援するよ!!アイドルになったらCDだって全部買うし、ライブにだって行く!!」
「もー何それ藤崎くんってアイドルオタク??」
「ち、ちがーう!!」
「じゃあ、私の追っかけ?」
「そうだよ。夢を追う者同士、応援し合うのはダメなことじゃないだろ?」
「そうだね。ありがとう」
「俺はバスケで全国の頂点に行く!」
「私はみんなに笑顔を与えられるアイドルになる!」
俺は川端さんと握手した。
「お互い頑張ろう!」
「うん!もし夢が叶ったら……」
「叶ったら?」
「ううん、なんでもない!それじゃ、帰ろっか!」
川端さんは何かを言いかけてやめた。
「もしかしてこの間言ってた大事なのってオーディションってことなの?」
「恥ずかしながらそういうこと……」
「早速、先越されそうなんだけど………」
「早くしないと、私置いていっちゃうよー」
川端さんは無邪気な笑顔を俺に向けた。
きっとどちらの夢を叶えることも険しい道のりなのだろう。彼女はオーディションという壁を、俺は天ノ星という壁を乗り越えなくてはならないのだから。でも、何故だろうか。彼女を見ていると不可能じゃないのかもしれないと、そう思えて仕方がないんだ。
今回の展開を予想できていた人がいたら、コメント欲しいです。どうやって予測したのかを聞いてみたいですね(笑)
まさか川端がアイドルになるとはっていう展開ですからね。今後、この辺の人間関係はどうなってしまうんですかね?
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




