第31Q Seisyun Versus Amanoboshi Part 6
成旬バーサス天ノ星の戦いはいよいよクライマックスです。果たして勝利するのは圧倒的な力を持つ天ノ星か、それとも苦楽を共にし強い絆で結ばれた成旬か。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
「梅干し!足引っ張んなよ」
佐藤さんが言う。
「へーい」
観客は期待していた梅西にボールが渡ることを。そしてその期待はすぐに叶えられることになった。梅西のマッチアップは松本が行う。
「なかなかいいディフェンスだべ。でも、オレちゃんは特別だから、止められないんだよなこれが」
松本は全く反応できないまま、抜き去られてしまった。
「やっぱオレちゃんってすげぇえ」
「しまった!援護頼む!」
松本が言う。そこへ澤木がヘルプに入る。しかし、そんなヘルプはないも同然のように簡単に突破されてしまった。
「止める!!」
若林さんもディフェンスに加わる。
「(ここは出し惜しむところじゃなかっぺよな?)」
梅西はそう思いながらベンチに座っている菊川さんをチラッと見た。
「なら、見せてやっぺよ!ゴッドドライブ!!」
予測できない高速ドリブルによって若林さんはその場で体勢を崩し、尻もちをついてしまった。
「アンクルブレイクだと!?」
仲本さんが思わず声を出す。
「これで同点っと」
梅西はシュートを決めて、84-84の同点となった。
「まだあんな秘密兵器を隠していたのか!?」
予想外の展開に東堂さんも目を見開いた。
「誰もエースは1人じゃなきゃダメなんて言ってないだろ?うちは神田に梅西、2枚のエースカードがあるんだよ」
菊川さんが言う。
「落ち着こう!まだ同点だ!ここを取ればまたうちのリードだ!」
澤木さんが人差し指を立て、チームに呼びかける。
「そんな遅いドリブルついてていいんだべか?」
梅西がドリブルを弾き、速攻を仕掛ける。
「ぬわ!?」
「フリーで打たせるな!!」
若林さんが叫びながら全力で自陣に戻る。先に戻っていた仲本さんが梅西の前に立ち塞がる。
「悪いがここは通行止めだ」
「それは大変だべ。でも、オレちゃんのゴッドドライブなら!」
ドリブルの技術が高い仲本さんからしても、そのドライブは凄まじく、崩されるのはなんとか耐えたが、よろめき反応が遅れてしまった。梅西がその隙を逃すはずもなく、抜き去る。
「じゃあ、これで勝ち越しだっぺな!」
梅西は空中で一回転してダンクを決めた。
「天ノ星が逆転し返した!!あの赤髪強い!まだ1年らしいぞ!化け物だ!!」
「あのレベルで同じ1年!?」
木山さんは驚きすぎて目が飛び出しそうになっていた。
この逆転の一手によって均衡は崩れ、前半の時と同じように天ノ星の一方的な試合が展開された。
「スリー!!」
神田さんはアウトサイドから全く外れる気配のないシュートを放ち、インサイドでは高身長にパワーもある中村さんと佐藤さんが、そして破壊的な力を持った梅西の予測不能のプレー。それらを束ねる無良さん。これこそ天ノ星最強の布陣。
中村さんが上野に言う。
「久しぶりに楽しめたいい試合だったよ。だけど、最強はうちだ」
「あらよっと!」
梅西はディフェンスを次々と躱し、シュートを決める。その様子を見て築村は―――
「隼………」
「最後まで諦めんな!!」
「わかってるよ!!」
若林さんと仲本さんはコートを走り抜ける。
「寄越せ」
神田さんがパスを要求する。仲本さんをまるで芸術のようなドライブからの勢いを殺したストップで、仲本さんをアンクルブレイクした。
「マジかよ……」
「梅干しごときが調子に乗るな。アンクルブレイクなんて誰でもできるんだよ」
そう言ってスリーを決めた。
「(ふざけんな!そんな簡単に!)」
尻もちをついた仲本さんは圧倒的な差に絶望した。
そして試合終了を告げるブザーの音が体育館を走り抜けた。
「負けた………くそ!くそ!」
仲本さんは床に座ったまま、俯いていた。
「手を貸そう」
そう言って手を差し伸べたのは若林さんだった。若林さんに肩を貸されながら、仲本さんは―――
「ぐすんっ、ひっく……オッサン……俺…………」
涙を流しながら仲本さんは必死に言葉を発しようとする。
「何も言うな。俺はまだ引退しないぞ」
「え………」
「こんなんで俺の高校バスケ生活終われると思うか?俺は冬、必ず天ノ星を倒す。きっとここから地獄への片道切符ではあるが、お前も付き合え」
「ぐすっ、今更そんなこと言われなくたって地獄だろうが何だろうが一緒に決まってんだろ!」
「その言葉が聞けてよかったよ……。さっ整列だ」
「119-98で天ノ星の勝ち。礼!」
「ありがとうございました!」
審判の号令で試合は幕を閉じた。
仲本さんが荷物を持ってベンチから出ようとすると、目の前に神田さんが待ち構えていた。
「なんか用か?」
「お前なら、もっと強いチームに入れたはずだ。なぜ成旬に入った?」
「単純にスカウトされただけだよ」
「その実力があれば、他の学校からだってスカウトは来ていたはずだ」
「うるせぇな。成旬に惹かれたんだからいいだろ別に」
「何故だ?何故そこまで成旬にこだわる」
「じいさんに言われたんだ。成旬にはお前必要だ。お前じゃなきゃダメなんだってさ。そんなこと言われたら誰だってときめくだろ普通。だから、俺様は迷わずに成旬を選んだ。その選択に後悔はねぇよ。だって俺には最高の仲間がいるからな。次は確実に勝てる。お前らなんて倒せない相手じゃないんだよ。じゃあな」
そう言って仲本さんは体育館を後にした。
試合を最後まで見届けて俺と木山さんも会場を出た。すると、見覚えのある人たちが立っていた。
「君たちは、賀晴の12番と10番か。久しぶりだね」
そう言って声をかけて来たのは、地区大会で戦った吉満の塩山さんとマネージャーの植木さんだった。
「あ、どうも」
俺の言葉に合わせて、木山さんも会釈した。
「それにしても凄い試合だったね。俺たちとは別次元だった」
塩山さんは言う。
「そうですかね?勝てない相手じゃないでしょ。同じ人間なんだし」
俺は何気なく答えた。
「ふふ、君はやはり斬新で面白いな。じゃあ、冬は競走だ。どっちが先に天ノ星を倒すかの」
「望むところです」
そう言って2人と分かれた。気付かれないようにチラッと振り返ると、2人はイチャイチャしていた。それを背に俺と木山さんは帰るのであった。
俺たちがそんなことしている一方では―――
「おお、見に来てくれてたのか」
築村は菊川さんと会っていた。
「隼とは古い知り合いでな。見に来た」
「ほうそうか。お前と梅西、戦ったらどっちが強いかな」
「隼の方が強いだろうよ。今はな」
「負けを認めるのか。お前らしくないな」
「今はと言った。次やる時までには勝つ」
「それは楽しみだ」
天ノ星。それはこの県で高校バスケをする以上、避けて通ることのできない絶対的な壁。それを誰が倒すのか。その競争は今この時から既に始まっていた。
梅西が目立つような演出になってしまいましたね。それと神田がアンクルブレイクを急に使うのは手を抜いていたという描写になっています。本気を出せば神田は梅西よりも強い設定になっていますので、神田ファンは諦めずに応援してあげてください。
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




