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籠球クインテット♪  作者: 千園参
第2章 Deathfight with Amanoboshi!!!
29/58

第29Q Seisyun Versus Amanoboshi Part 4

まだまだ続く死闘。果たしてどちらが勝つのでしょうか。こんなに主人公が活躍しない回を書きまくってるのも初めてかもしれませんね(笑)

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

「行かせん!」


 成旬は若林さんと松本でダブルチームを組んで、神田さんを止めにかかる。神田さんはドライブをやめ、3Pラインの遥か手前からシュートを打った。


「(おい、ちょっと待てどこから打ってんだよ!!)」


 仲本さんが焦る。

 そしてそのシュートはまるでゴールが呼び寄せているのではないかと思うほど綺麗に吸い込まれていった。


「強すぎる……」


 神田さんが出場してから、あの成旬が54-32という試合展開をされていた。


「全く菊川くん……。あえてエースを後出しで投入して心を折りに来ているのね……。性格悪いよ……」


 東堂さんが頭を抱える。


「ごめんね茂さん。ぷぷっ」


 菊川さんはほくそ笑んでいた。

 神田さんがパスをもらう。


「(スリーか?いや、貼り付きすぎるとドライブで中に切り込まれる。どっちだ、どっちで来る?)」


 仲本さんはスリーとドライブを警戒してなかなか上手く立ち回れない。すると、神田さんは一瞬の隙を見逃さず、容赦なくスリーを打った。


「また決まった!?今日、何本目だよ!!」


 神田さんの圧倒的な力に観客は釘付けになっていた。


「神田の強さは頭の良さにある。自分が何を求められていて、どういう立ち回りをすればいいのか。何をするべきなのかを頭でしっかりと理解している。それはバスケに限ったことじゃない。失敗する人間は何となくで理解しているつもりや理解していないから上手くいかない。だが、神田は違う。だから強いのさ」


 菊川さんが語る。


「(スリーを取られるのは痛いな……。なら、詰める!)」


 仲本さんが強めにディフェンスにつくと、あっさりとドライブで抜かれてしまう。そのままインサイドに切り込んでいく。


「(ジャンプシュートか!)」


 若林さんも強めにつくと、今度はパスを出した。


「ナイスパス」


 そう言って中村さんはダンクを決めた。成旬は1人の男によって完全に翻弄されていた。スウィングマンの脅威とはSGのミドルと3Pシュートの精度の高さとSFのドライブによる突破力にインサイドでの決定力を併せ持っているため、近づけば抜かれる危険性があり、離れればシュートを打たれる可能性があるため、ディフェンスはとても難しい相手である。

 現状を打破することはできないまま、秒カウントとなり、ボールは再び神田さんに渡る。そして華麗にディフェンスを躱し、スリーを放った。ゴールが第2Q終了のブザーを鳴らした。


「ブザービーターを返した……」


 観客はまさかのブザービーター返しに言葉が出ない。


「よくやった」


 菊川さんは落ち着いて言った。



「あの成旬が手も足も出ないなんて……」


 木山さんも衝撃的な展開に何と話したらいいのかわからなくなっていた。

 ハーフタイムに入ってもその余韻は会場全体を包んでいた。


 ベンチで座り込む成旬の選手たちは皆、下を向いたまま動かない。若林さんはそんな中立ち上がり、口を開いた。


「俺がこの部に入った時、俺には何の才能も、実力も、その全てが俺にはなかった。それでもいつか成旬のユニフォームを着て試合に出たい。その想いで毎日遅くまで居残りで練習をしたもんだ。声を出して走るそんな当たり前なことを馬鹿みたいに毎日やってたら、いつの間にか俺の後ろを付いて来る馬鹿者たちがこんなに集まってくれた。俺のことを部長と呼ばず、オッサンと読んでみたり、舐め腐った連中ばかりだが、そんな馬鹿者たちはいつしか俺に夢を見せてくれるようになった。全国への夢だ。そんな夢は見れないと思ってた。なのに、お前たちが俺をそこまで連れて来てくれた」


「オッサン!話長いし、何が言いたいかいまいちわかんねぇよ!」


 仲本さんが水を差す。


「そうだな……。俺はお前たちを信じてる!だから、まだ俺に夢を見せてくれ!」


「んだよそれ。そんなの言われなくても見せてやるってんだよ」


 仲本さんの言葉に皆頷いた。


「ほら、いくぜ!もうすぐ第3Qだ。だとその前に……」


 仲本さんは両手両足に付いていたリストバンドを外した。それを放り投げると、ゴドン!!凄い音を立てて落ちた。


「そろそろこっちも本気でいくぜ」


 音を聞きつけて、天ノ星にも少しだけ緊張が走る。


「パワーリストってやつか。そんなの外したぐらいで変わるもんかね」


 佐藤さんが言う。


「…………」


 神田さんは無言で仲本さんを見ていた。

 ハーフタイムが終わり、第3Qが始まった。開始早々、仲本さんと神田さんのマッチアップとなった。


「どうしたオラ、かかってこいよ」


「…………。さっきまで瀕死だった奴が偉そうに………」


 神田さんは口を開いた。そして抜こうとすると、その一瞬を見て、スティールした。


「なに!?」


「神田がスティールされただと!?」


 佐藤さんと吾妻さんが速攻封じに立ち塞がる。


「いいのか?そんな薄っぺらい壁で」


 ディフェンスを2枚抜きし、ダンクを決めた。


「よっしゃ!」


 仲本さんはガッツポーズした。

 その直後、反撃として神田さんがスリーを決めた。


「ドンマイだ!取り返せるぞ!」


 澤木さんが仲本さんにパスを出す。ダブルチームで仲本さんを抑えに来たが―――


「いいのか?俺様に気を取られてて」


 今度はパスを出して、若林さんがダンクを決めた。


「成旬の真骨頂はチームプレーにある。仲本は最強の囮だよ。仲本が強ければ強いほど、その存在を無視できず、詰め寄る。そこでまわりの4人で点を取る。だが、仲本自身もその突破力で点を取る。固い絆で結ばれた彼らだからこそ、その強さを顕現できるんだね」


 東堂さんは嬉しそうに成旬の選手を見守る。


「今度はどうすると思う?」


 ボールを持った仲本さんが神田さんに尋ねる。


「ちっ!」


「おいおい、舌打ちすんなよ!お前にやり返しすんだよ!」


 仲本さんが神田さんを抜き去る。


「止めるぞ!」


 中村さんと佐藤さんがヘルプで詰め寄る。それを狙って上野にパスを出す。


「決めろ上野!」


「はい!」


 豪快なダンクを決めた。勢いを取り戻した成旬は猛追で、遂に1点差にまで漕ぎ着けることができた。


「77-76……。凄い試合だ」


 俺は先の読めない試合展開にドキドキしていた。


「まだまだいくぞ!!」


 若林さんが声を張り上げた。


「「「「おー!!」」」」


 成旬の5人の心は優勝に向けて一つとなった。

仲本が覚醒する回でした。次回は作者が最も好きな回となっていますのでお楽しみに!!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!!

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