第27Q Seisyun Versus Amanoboshi Part 2
ついに成旬と天ノ星の試合が幕を開けます。実は連休の間に試合終了までは書き切っているのですが、この試合は個人的に一番好きな試合になるかもしれません。それぐらい私は自信があるのですが、なんせ主人公が活躍しない回が続くので、気に入ってもらえないかもしれないので、不安ですね。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
ジャンプボールに入ったのは上野と中村さんだった。190cmあるその身長は、俺から見るとまさに巨人と言えるものであった。
審判によってボールが上に投げられる。ボールを叩き、主導権を握ったのは天ノ星だった。
「よし。まずは先攻だ。確実に取って流れを掴もう」
無良さんは右手でドリブルをつきながら、左手で人差し指を天に向けて立てた。すぐさま澤木さんがディフェンスにつく。
「(どう来る?あの長身の10番を使ったインサイドプレーで確実に取りに来るのか?)」
澤木さんが思考を張り巡らせて、一度だけ瞬きをした。ボールに目を向けようとすると、無良さんは既にボールを持っていなかった。
「え?」
「これで先制点だな!」
ボールは既に佐藤さんの元へと渡っており、パワードリブルで力自慢の若林さんをいとも簡単に押し出し、ダンクを決めた。
「…………」
ほんの数秒の間に起きた攻撃はさっきまで賑やかだった会場を一瞬で凍り付かせた。俺たちもその様子を息をするのを忘れて見ていた。
「今何が起こったの?」
しばらくして木山さんが俺に尋ねる。俺は木山さんの方を向かずに答えた。
「さ、さぁ……」
「落ち着け!まだ試合は始まったばかりだ!取り返すぞ!!」
若林さんが4人の士気を高める。
澤木さんがボールを運ぶ。そして仲本さんにパスを出す。
「さっきはよくもやってくれたな。お返しだ!」
仲本さんはマッチアップについた吾妻さんを抜き去り、ダンクを決め返した。
「うおおおお!!いきなりダンクの応酬!!成旬頑張れ!!負けんな!!」
仲本さんのダンクで観客が賑わいを取り戻した。すると、今度は仁田さんがボールを入れ、無良さんがボールをゆっくりと運ぶ。
それに合わせて、中村さんが上野を簡単に背中で押し出し、正面でパスをもらった。そのままターンしてフックシュートを決めた。
フックシュートとはセンターなどの長身のプレーヤーが使用することが多く、ゴールと相手に対して体を真横に向け、片手でシュートを放つことであり、その時の手の形がフックに見えることからそういう言われるようになったらしい。ちなみにもう片方の手は相手に近づかれないように張っておく。
「やっぱあの10番デケェ!!」
「お前1年か?」
中村さんが上野に声をかける。
「はい。そうですけど」
「だと思った。まだまだだな」
そう言い残して自陣に戻っていった。
「くそ!」
上野は怒りを必死に堪えて、攻めに転じる。
澤木さんが若林さんにパスを出す。
「甘いんだよ!」
そのパスを佐藤さんがスティールした。
「速攻来るぞ!急いで戻れ!!」
仲本さんがチームに指示を出す。佐藤さんはドライブでハーフラインまでボールを運ぶと、前を走る中村さんにパスを出した。ゴールが揺れ動くほどのダンクを決めた。
その後も天ノ星の猛攻は続いた。
「すごい……。これが天ノ星………」
俺たちは成旬ですらも倒せないというのに、それを簡単に圧倒してしまう天ノ星は化け物に思えて仕方がなかった。
「こっちだ!」
仲本さんがパスをもらい、天ノ星のディフェンスを突破し、シュートを決めた。俺はどんな相手でもプレースタイルを変えることなく、果敢に攻める仲本さんを心から凄いと思った。きっとどんな時でもチームを勝利へ導き、それを疑わせない。これがエースということなのだろう。
「あの緑の10番、全然負けてねぇ!まだ諦めんな!!」
観客が必死になって成旬を応援する。
「いやー。あの10番厄介だな。どうするかな。そろそろこっちもエース投入を検討した方がいいかな?どう思う神田」
「………」
菊川さんがベンチで神田さんに話しかけるも、神田さんは無視した。
「なんか言えよ」
「…………」
それでも神田さんは何も言わない。
天ノ星ベンチでそんなやり取りをしている間にも、成旬はどんどん追い詰められていた。
澤木さんは上野にパスを出し、インサイドプレーでの突破を試みるが、中は190cmの中村さんが鉄壁の守りで固めていた。
「そんなんじゃ無理だって」
上野が中村さんに気を取られている間に、横から佐藤さんがボールを奪う。
「そう何度もやられてたまるかってんだよ!」
仲本さんは佐藤さんが速攻で出したパスをカットし返した。
「オッサン!!」
「俺はオッサンじゃねぇ!!」
仲本さんがボールを高く上げ、それを若林さんがアリウープで決めた。
「オッサン!!!」
「いい加減、部長って呼べ!!!」
2人はハイタッチした。
成旬のアリウープに会場も大盛り上がりを見せた。
「アンタたちも吉満の時はできたのに、なんで上仙ではできなかったのよ」
木山さんが言う。ごもっともである。俺と築村は吉満戦でアリウープをやって見せたが、上仙との試合や、その前のアップでも試しに実践したが成功することは一度もなかったのだ。逆になぜ吉満戦において、ぶっつけ本番でアリウープが成功したのか疑問である。
「うおぉお、アリウープなんて物凄いの決めてくれるな」
中村さんが感心していると―――
「感心してる場合か!」
佐藤さんが中村さんの頭をこづく。
「やられたなら、俺たちも決まればいいだけのことだ」
無良さんはそう言ってボールを高く上げた。それに反応して佐藤さんがアリウープで返した。
「アリウープをアリウープで返した………」
まだ第1Qだと言うのに、凄技の連発で観ているこちらも疲れてくる程であった。
得点は24-16とその点差は確実に広がりつつあった。
「もう時間ない!決めてくれ!!」
成旬ベンチが叫ぶ。第1Qが秒カウントに切り替わり、少しでも点差を縮めておきたい成旬だった。
松本さんが仲本さんのディフェンスにスクリーンをかけ、仲本さんをフリーにした。フリーの状態でパスをもらい、スリーを放った。
次の瞬間は熱狂の渦に包まれた。
「成旬のブザービーターだ!!かっけぇ!!」
「そう簡単に離されてたまるかよ」
仲本さんは第2Qへと望みを繋げた。
「よくやったぞ馬鹿者!」
若林さんが駆け寄って頭をわしゃわしゃと触る。
「やめろっての!」
ベンチに戻ると、東堂さんは―――
「あの局面でよく冷静に決めたね。それでこそだね」
「俺様は成旬のエースだからな!」
一方その頃、天ノ星のベンチではというと―――
「アリウープにブザービーターか。なかなか面白いことしてくれるな。どうやら茂さんもユニークなチームを引き連れてるようだな。まぁブザービーターは後で返してやれよ。メンバー交代は今のところなしでいいだろ。よし、いけ!」
菊川さんがチームに指示を出し、送り出した。
ここからは第2Q。俺たちは知ることになる天ノ星の本当の実力を。
今作が続く限り、設定を考え続けなければならないのですが、登場したキャラクターからこれから登場予定のキャラクターまで含めるとその数が50人を突破しました。ちゃんと完結できるのか不安になって来ましたね。
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




