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籠球クインテット♪  作者: 千園参
第2章 Deathfight with Amanoboshi!!!
25/58

第25Q Red man

これがアニメだったら多分昨日あたりからオープニング変わるんだろうな、なんて妄想しながら書いています。まぁアニメ化どころか書籍化もしないんですけどね(笑)

それではそんな今作をお楽しみください!よろしくお願いします!!

 俺はいつもよりもかなり早く家に帰ってきた。


「あら、おかえり。いつもより早いのね」


「うーん。なんか調子出なくってさ」


「それは大変っ。じゃあ、この私が元気が出る料理を作って進ぜよう」


 そう言って叔母さんは気合いを入れて料理に取り掛かった。その間に俺はお風呂に入った。湯船に浸かりながら、試合後に仲本さんに言われたことを思い出していた。


「はっきり言ってお前らの強さはビギナーズラックなんだよ。もう一度、吉満と闘ったら勝てるか怪しいレベルだぜお前ら」


「くそー!!悔しい!!」


 声に出して叫んでしまった。


「何か言った?」


 叔母さんが話しかけられたと思って、話しかけてくる。


「ごめん、何でもない!」


 きっとこの悪夢や心のモヤモヤを消す方法は一つしかないのだろう。練習して今よりも強くなること、それ以外に考えられない。


「よし!明日から頑張るぞ!!」


「さっきからなんか言ってない??」


 叔母さんがまたしても声をかけてくる。


「だから、何でもないって!」


 お風呂から上がり、晩御飯の準備ができたらしいので、テーブルにつく。


「叔母さんが元気が出る料理を作ったわよ!今日はハンバーグ!!さっ!食べよ食べよっ!何、辛気臭い顔してんのよ!何があったか知らないけど、勝つためには食べる!!食べれば次は勝てる!!わかったか青少年?わかったなら食べる!!」


「「いただきます!!」」


 ハンバーグを頬張りながら決意を新たにした。誰にもまぐれなんて言わせない。必ず成旬を倒してやる。


「叔母さん、ありがとう」


「いいってことよ!」


 叔母さんは満面の笑みでハンバーグを食べていた。

 俺がお家でほっこりしている間、赤髪の男は築村を探し回っていた。


「マジデミツカンナイジャン。ドウシヨウ……テカ、ココドコダヨ……。カンゼンニマイゴジャン」


 赤髪の男が公園で途方に暮れていると、たまたま公園にやってきた築村と鉢合わせることになった。


「お前は………」


「オ!ミナトチャーン!アイタカッタヨー!!」


 赤髪の男は涙を流しながら築村に抱きつこうとする。


「寄るな!気持ち悪い!」


 築村はそれを避けた。


「ナンダヨー!セッカクカンドウノサイカイダッテノニ!」


「感動も何もねぇよ。あとその変な喋り方止めろ。気持ち悪いんだよ」


「んだか。相変わらず釣れないねぇお前さんは。帰国子女っぽくて気に入ってくれるかなと思っただのに」


「いつこっちに帰って来たんだ」


「この春からだべ。春から日本の学校に通うんだよ」


「まさか賀晴に!?」


 築村がそう言うと、赤髪の男は笑いながら言う。


「溱ちゃんこそ冗談キツかっぺよ。オレちゃんとお前が仲良く同じチームでやってけるわけないべよ。オレちゃんは天ノ星の入ったべ」


「天ノ星だと!?」


「んだんだ。驚いたべか?」


 天ノ星(あまのぼし)学園―――俺たちが住まう県内最強と名高いチーム。部員数は100を超えると言われ、県大会で敗れたという経歴はなく、常にインターハイ本戦に出場し続けている。あの成旬ですらも天ノ星には勝てないのだという。俺たちが県大会を制覇し、インターハイやウィンターカップの本戦に出場するにはこの天ノ星との戦闘は避けて倒れないのである。しかし、ハンバーグを食べていた俺は成旬に手一杯で、天ノ星の存在など知りもしないのであった。


「何でお前が天ノ星に」


 戸惑いながら赤髪の男に尋ねる。


「親の都合で帰国することが決まって、どこに入学するか迷ってた時に、変なおっさんにスカウトされたんだべ」


「天ノ星の変なおっさん………」


 築村は吉満との試合の後のことを思い出していた。試合を終え、とっとと家に帰ろうとしていた時、後ろから肩を叩かれたのだった。


「誰だ」


「君が築村溱君だね?」


「おっさん誰だよ」


「ああ!紹介が遅れたね。俺は菊川欽司ってんだ。よろしくな。君すごい活躍だったね!俺も長いこと監督やってるけど、驚いちゃったよ」


「何が言いたい?」


 菊川さんは不気味に笑いこう言った。


「君がどうして賀晴に入ったのかは知らないが、この3年間で凄いセンスを腐らせてしまうのが勿体無いよ」


 我に返った築村は―――


「あのおっさんか!?」


「うん、どのおっさんかわかんねぇが、多分そのおっさんで合ってるべ。友人に挨拶も済ませたし、ずらかるとすっぺよ」


 そう言って赤髪の男は公園から立ち去ろうとした。


「おい待てよ。お前の用事は済んだみたいだが、今度は俺がお前用事ができた」


「ん?なに企んでんだ?」


「1on1だ」


「おいおい、やめた方がいいべ。オレちゃんとお前じゃもうレベル違うべ」


「んだと?」


「まぁ逃げたなんて言いがかりされてもやだし、一回だけだべ?あとおっさんに力を安売りするなって言われてるから、オレちゃんとやったことは内緒で頼むべ」


「ふざけやがって」


 赤髪の男はカバンからボールを取り出した。


「オレちゃんの実力を知りたいなら、オレちゃんがオフェンスの方がいいべな。いくべ」


 さっきまでのふざけたような顔から一変して、その顔は真剣そのものとなった。


「おっさんにはやめろって言われてるけど、友人だからとっておきを見せてやるべ。名付けてゴッドドライブ」


「なに!?」


 それはほんの数秒の出来事だった。赤髪の男のドリブルスピードは尋常ではなく、レッグスルーやフロントチェンジ(目の前でボールの持ち手を変えて切り返すドリブルの一種)などのドリブル技を連続で繰り出し、築村に右で抜くと思わせることで築村の体の重心を片方に寄せたタイミングでさらに切り返し、左で抜いた。それに対応しようとするが、足が追いつかず築村は転んでしまった。

 そして赤髪の男はくるっと回転して後ろ向きでダンクシュートを決めた。


「どんなもんだべ?オレちゃんのゴッドドライブ!おっさんには内緒で頼むべ!んだらまたなー」


 そう言って赤髪の男は嵐が去るかのように帰っていった。

 ちなみに赤髪の男がやって見せた技はゴッドドライブなどという特別な必殺技ではなく、アンクルブレイクという本当にあるドリブル技である。

 これはドリブラーがディフェンスに対して、切り返しを行い左右にディフェンスを振る。それが速く大きくなればなるほど、ディフェンスは頭でわかっていても足が追いつかなくなり、やがて足がもつれて転んでしまう。これをアンクルブレイクと呼ぶ。この技は言葉で話すと簡単そうに聞こえるが、相当なドリブル技術がないと成功しないある意味で必殺技と言えるものである。


「………」


 赤髪の男のアンクルブレイクに築村は言葉を失ってしまった。


「(俺とアイツにこんなに差が開いてるってのかよ!クソが!!)」


 築村は地面を殴りつけた。


新キャラの登場と第2章のタイトルである天ノ星の名前が登場する回でした。上仙に勝てない賀晴は天ノ星に勝てるのだろうか。それは今後のお楽しみ!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!!次回をお楽しみに!!

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