第24Q Nightmare
皆さんこんにちは。お待ちかねの(おそらく誰も待ってはいない)第2章開幕です。今回の第24話はかなり悩みに悩んで書きました。今でもこれでよかったのかなという思いがありますが、皆様が楽しめることこそが何よりですので、喜んでいただけると幸いです。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
「速攻だ!!」
俺は相田からパスをもらう。前には木山さんが走っていたが、俺は迷わずシュートを打った。しかし、戻ってきていた上仙のディフェンスの指がシュートをかすめ、ほんの少しだけ軌道が変わり、シュートは外れることとなった。シュートが外れ、床に落ちるのとほぼ同時に、試合終了のブザーが鳴り響いた。
得点板には90-69の文字が生々しく刻まれており、頭の中にその衝撃が鳴り響くのだった。
「うわぁあ!!」
目を覚ますとそこは自分の家のベッドだった。
「はぁ!はぁ!はぁ………なんだ夢か………」
第2章 Deathfight with Amanoboshi!!!
これは夢であって夢ではない。2日前の土曜日に試合が行われ、俺たちは上仙高校に負けたのだ。接戦の末に負けたわけではない。完全な実力の差というものがそこにはあり、俺たちはインターハイという言葉の重みを味わうこととなった。
試合に敗北して以来、この夢をよく見るようになった。あのシュートを決めていれば。いや、前を走っていた木山さんにパスを出していれば、また状況は変わっていたのかもしれない。何故俺はあそこで自分を信じたのだろうか。そう悔やむ心が悪夢を見せているのだろう。
「大丈夫?随分うなされてたみたいだけど」
叔母さんが朝御飯の支度をしながら俺を心配する。
「うーん。大丈夫じゃないかも」
「あんまり無理しないでね?姫ちゃん悲しむわよ?」
叔母さんの言う姫ちゃんとは藤崎姫乃、俺の母さんのことである。前にも言ったけど、叔母さんは母さんと仲が良かったらしく、高校時代からの友達なんだとか。ちなみに父さんとも知り合いのようで、友達ということではなかったらしいが、一応同じ高校の同級生だったと言う。
「あなたってどっちかと言うと姫ちゃん似だから心配だわ」
「それってどういう意味?」
「綾二はあんまり知らないだろうけど、姫ちゃんはああ見えて意外と繊細な子でね。元気に振る舞ってるわりには、傷付きやすくて、いつもどこか儚さを持った子だったから、あなたを見てるとそんな気がするのよねー」
「俺は大丈夫だよ」
「そう?ならいいけど」
「「いただきます」」
俺と叔母さんは朝御飯を食べる。これがまた叔母さんの料理は美味いのである。朝御飯を終え、家を出る。
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
俺が学校に向かう途中で川端さんが声をかけてくれた。
「藤崎君、おはよっ」
「おはよう。そうだから返さないと。ずっと借りっぱだったから」
俺が川端さんにリストバンドを渡そうとすると、彼女は―――
「まだ貸しといてあげるっ」
「いやいや、そんなのダメだよ!返すよ!」
「持ち主がいいって言ってるんだから、素直に受け取ってよね」
「君がそこまで言うなら、借りとく……」
「よろしい!」
満足げに川端さんが言う。そんな彼女を見て、俺はいつも川端さんに助けられてばかりだなと感じずにはいられなかった。
「伊沢!ナイスパス!」
伊沢さんの的確なパスによってフリーになった徳田さんがシュートを決めた。
「取られたら、取り返すわよ!」
木山さんがボールを入れ、オフェンスを開始する。相田がボールを運び、俺にパスを出す。俺はフェイクでディフェンスの田中さんを躱し、スリーを決めた。
観客席から声援が上がる。
「おチビ!今日も冴えてるな!」
安藤さんが伊沢さんにパスする。そしてそのままドリブルで攻め上がってきた。伊沢さんは一度、安藤さんにボールを回し、そのまま返してもらう。
「君に教えておいてやろう。3Pは低身長プレーヤーの専売特許でもなんでもないということを」
そう言って伊沢さんはスリーを難なく決めた。今になって思えばそんな言葉はただの揺さぶりだったのかもしれない。でも、その言葉は試合中の俺に十分過ぎるほどのダメージを与えたような気がしたのだ。
「それに君たちのセンター、ただデカイだけで何の役にも立たないな」
沼津さんが大滝を強烈なパワードリブルで吹き飛ばし、ダンクを決めた。
「7番の君、入るチームを間違えたようだね。バスケットボールというのは5人でプレーするものだ。1人だけズバ抜けて強くても意味がない」
伊沢さんは築村にそんな言葉を投げかけた。
「ちっ!」
ディフェンスによって思うようにプレーさせてもらえない築村は苛立ちを隠せない。
「我々を敗った吉満を倒したことは評価に値するが、今回闘ってみて思ったことがある。吉満を破ったのはまぐれだということだ」
伊沢さんはそう言ってまたしてもスリーを決めた。
「そ、そんな!」
目を覚ますと俺は教室の机であり、今は授業の真っ最中だった。
「藤崎どうかしたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
「そうか。じゃあ、授業に戻るぞ」
また上仙との試合の夢を見てしまった。成旬の時は夢に出てくることはなかったのに、どうしてなのだろうか。俺たちのインターハイへの道が閉じたことによるショックからだろうか。
その後、練習をしていても全く集中することができなかった。それを見兼ねた玉置先生は―――
「藤崎ぃ、お前今日は帰れぇ」
「いや、でも!」
「いいから帰れぇ。そんな状態でやってても意味はねぇ。ちゃんと切り替えてから練習に来いぃ」
「はい……。すいません………」
俺は着替えて体育館を後にした。俺が正門から学校を出ようとした時、遠くからでもわかりそうな赤い髪をした男とすれ違うことになった。あんないかにもヤバそうな生徒、うちにいただろうか。いたらわかりそうなもんだが。
「ゴメンクダサーイ!」
赤い髪の男は体育館に入っていった。
「ん?誰だい君はぁ?うちの生徒ではなさそうだなぁ」
玉置先生が声をかける。
「アァ、ウン。ココノセイトジャナイ。ミナトチャンヲサガシテテ、ココニイルッテキイタンダケド」
何故かカタコトな言葉を話すいかにも日本人な顔立ちの男は一体何者なのだろうか。
「みなとぉ、みなとぉ。あぁ、築村のことかぁ。アイツは確かに同好会の部員ではあるがぁ、基本的に練習には顔を出さないからなぁ。残念ながらここにはいないぃ」
「ソッカ!アリガト!」
「(何でカタコトなんだよぉ。それに派手な髪ぃ。築村のやつ友達は選んだ方がいいぞぉ)」
玉置先生は去っていく赤髪の男を見つめながら思うのであった。
まさかの敗北から新章がスタートするとは私も思っていませんでした。この回は「さっ!執筆するかっ!えー上仙に敗北っと」こんな感じで考えることもなく、下書きが完成しました。それ故に「え?これで本当にいいの?全然サクセスストーリーじゃないじゃん!」と悩みに悩みました。
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




