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籠球クインテット♪  作者: 千園参
第1章 Gahare and the beginning of everything.
23/58

第23Q Versus Yoshimitsu Part 6

吉満戦クライマックス!!

どっちが勝つのかその目で見届けてください!!

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 塩山さんが冷静にスリーを決めた。


「第4Qいきなりスリー!!」


 俺たちも負けじと攻撃を繰り出していく。相田が塩山さんにスクリーンをかける。


「なっ!スクリーンだ!!」


 俺もスリーを決め返した。


「なんだよこの試合!!マジで点取り合戦だ!!」


 次々と生まれるゴールシーンに観客たちは大興奮であった。

 そんな中、遅れて柳さんが会場にやってきた。


「(お、あのおバカさんは一丁前にダブルチームなんて組まれてんのか。チームの勝利はなんだかんだでエースが握ってるもんだ。お前がしっかりしないと勝てないぞ)」


 柳さんは変なおっさんとは違い、心の中でそう言った。変なおっさんはくしゃみをした。


「はくしょん!いよいよ、ラストピリオドか。頑張れよ」


 変なおっさんまわりにはとうとう誰もいなくなってしまった。

 馬場さんにボールが渡る。ボールを構えたところを俺がボールをはたき落とす。


「なんだと!?」


「よし!速攻だ!!」


 俺は築村にボールを渡すが、ダブルチームで突破するのは難しそうに見えた。そして手こずっている間にディフェンスが自陣に戻ってきてしまった。

 築村は玉置先生の言葉を思い出していた。


「(俺がエース。なら、こんなとこで足止めされてる訳にはいかねぇよな!!)」


 なんと築村はダブルチームを強引に突破した。


「マジかよ!」


 榎本さんもこれには驚きが隠せない。松田さんが無理矢理、シュートを放とうとしている築村に食らいつこうとする。


「松田!無理すんな!」


 すると、審判が笛を鳴らす。


「黄色7番、プッシング!ツースロー!」


 築村はフリースローを2本とも決めた。


「ここに来てまた流れが……」


 第4Qということもあり、一つのミスでも負けに繋がりかねないだけに、塩山さんの表情からは焦りの色が隠せなくなっていた。


「守るぞ!!」


 築村が珍しく俺たちに声をかける。


「築村………。カッコつけんなよ」


「うるせぇな!今そんなこと言う流れじゃなかっただろ!………勝つぞ」


「当然!」


 山谷さんが松田さんにパスを出す。松田さんは少々強引に木山さんを抜きにかかる。大滝がヘルプに出るが、馬場さんにパスを出され、ダンクを決められてしまった。

 今度は相田が大滝にパスを出す。大滝は馬場さんを押し込み、シュート決めた。

 やられたらやり返すの点取り合戦は思いの他、体力を消耗していた。

 審判が笛を吹く。


「タイムアウト!白!」


 玉置先生がタイムアウトを取ったようであった。特に作戦があるわけでもなく、ただ交代なしで闘う俺たちを少しでも休憩させるためにであった。


「よしぃ!行ってこいぃ!」


 相田が木山さんにパスを出す。そこから大滝にパスを出し、再びセンター対決となった。しかし、今回は馬場さんが大滝のシュートをブロックした。弾かれたボールを俺が拾う。


「まだ終わってない!築村!!」


 俺はシュートを放つように高くアーチを描くようにボールを投げた。すると、築村はダブルチームを振り切り、ボールの軌道に合わせてジャンプし、そのボールをそのままダンクした。


「うおおおおお!!!アリウープ!!!!!まさか地区大会でそんな技が見られるなんて!!!!」


 俺と築村のアリウープで会場は最高潮に達していた。

 アリウープとは今のようにボールをリング近くに高く投げて、それを空中でキャッチし、そのまま着地せずにダンクシュートを決める技のことである。これをやると会場は盛り上がること間違いなし!君もやってみよう!ちなみに間違えてそのままゴールが決まってしまうこともあるから注意しよう。


「ったく人使いの荒いチビだぜ」


 悪態をつきながら、ディフェンスに戻る。しかし、その顔はどこか笑っているように見えた。


「もう時間ないよ!負けないで!幸助!!!」


 植木さんが必死に叫ぶ。


「わかってるよ!」


 塩山さんはそう言って、木山さんと相田を抜き、シュートを確実に決めてきた。

 相田もすぐにボールを入れ、反撃を開始する。相田から大滝へとボールが渡る。タイマーは分刻みから秒刻みへと変わり、時間を見るに恐らくこれがラストプレーになるのだろう。全ては大滝に託されることとなった。大滝はパワードリブルで馬場さんを押し出そうとするが、馬場さんも最後の力を振り絞って弾かれまいと堪える。


「シュートを打て!!」


 築村がタイマーを見て、叫ぶ。

 それを聞いた大滝はゴールに背を向けた状態から体を無理矢理反転させて、ゴールを狙いにいく。放たれたシュートはゴールリングの上でくるくると回り、渦を描く。そして外れた。ボールはゆっくりと地面へと向かって落ちる。


「リバウンド!!!!」


 会場にいた誰もが叫んだ。


 俺はインサイドに入り、リバウンドをタップシュートで押し込んだ。その瞬間、全ての時間が止まったように静かになった。誰もが俺の意外なゴールに唖然としたからである。

 吉満がボールを入れるが、すぐに試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。そのブザーを聞いたと同時に会場が再び活気を取り戻した。


「すごい試合だったぞ!!!最後のシュート見たかよ!!?12番のチビがタップシュートで決めやがった!!!」


 俺はタップシュートを放った際に着地に失敗して、尻もちをついていた。

 タップシュートとはリングやボードから跳ね返ってきたボールを空中でキャッチし、そのままシュートを決めることを言う。

 尻もちをついた俺に塩山さんが手を差し伸べてくれた。


「やられたよ。まさか最後の最後で君がインサイドに切り込んでくるなんて考えてなかったよ」


「何においても、予想を超えた方が勝つもんでしょ?」


「ふふっ、それもそうだな。なら予想を超えられなかった俺たちは完敗だな」


 塩山さんは悔しそうにもしていたが、その顔はどこか清々しいようにも見えた。


「88-86で賀晴高校の勝ち。礼!」


「ありがとうございました!」


 俺たちは挨拶を済ませ、ベンチへと戻った。


「よしぃ、喜ぶのは後だぁ。次の試合があるからとりあえず荷物まとめてベンチ空けるぞぉ」


 玉置先生はそう言って、俺たちをベンチ外へと誘導した。そして外で一言―――


「お前らよく勝てたなぁ!これがバスケット同好会記念すべき第1勝目だなぁ!今日は大いに喜べぇ!だがぁ、喜ぶのは今日だけだぁ。次の相手は上仙高校だぁ。明日からはそれに向けて練習だぁ!!解散!!!!」


 玉置先生は嬉しそうに言って、帰っていった。きっとこの後、お酒を飲んだりするんだろうな。その姿を見て俺もジワジワと嬉しさが遅れてやってきた。


「やったー!勝った!勝ったよ川端さん……」


 俺はリストバンドを握りしめた。それを見て木山さんはまたしてもムッとした顔を見せた。何故なのだろうか。

 とりあえず、疲れたのでしばらく休んでから会場を後にすることにした。しかし、築村の姿は既になく、その日はもう会うことはなかった。


「どこ行ったんスかね?」


「まぁ自由人だから仕方ないだろ」


 休憩を終えて解散した俺はスマホがあるご時世に、また道がわからない言う木山さんと一緒に帰ろうとしていると、塩山さんと植木さんの姿を見つけることとなった。とっさに俺たちは物陰に隠れる。これではさっきと同じではないか。


「ごめんな……。負けちゃって………」


「うんん。最後まで諦めなかった幸助くんカッコよかったよ。それにウィンターカップがあるんだし、そこでリベンジしよ?」


「ありがとう。次こそは必ず!」


 塩山さんは植木さんを抱きしめた。そして再び唇を重ねた。さっきから俺たちは一体何を見せられているのだろうか。この後、俺と木山さんは何故かドキドキしながら家に帰ることになったのであった。


 一方、上仙高校はというと―――


「吉満を倒しちまったぜ……」


 徳田さんが驚きを隠せないでいると、伊沢さんが振り抜き、歩き出して言う。


「次の相手は賀晴だ。今の試合の情報を洗い直せ」


「はい!」


 仲本さんと上野くんは―――


「上野ー。帰るぞー」


「はい」


「ここの地区代表は上仙で決まりだな」


「え?なんでですか?」


「なんでもクソもあるかよ。吉満程度の相手に接戦でかろうじて勝ったとかやってるようじゃ、お先真っ暗なんだよ」


 仲本さんは冗談を言っているような感じもなく、真剣な眼差しで見解を語った。


 変なおっさんはどうなったかというと―――


「とりあえず、賀晴の7番に声かけるとすっか。これから楽しくなるぞ」


 そう言って席を立ち上がったのだった。


 第1章 完

これで第1章完結となります。ここまでのご愛読ありがとうございました。次回から第2章が始まりますので、それまでに第1章を読み直していただけるとより楽しめると思いますので、よろしくお願いします!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!!次回をお楽しみに!!

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