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籠球クインテット♪  作者: 千園参
第1章 Gahare and the beginning of everything.
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第12Q Versus Seisyun Part 6

今回も成旬高校との試合が続きます。コアなファンの方々としては、1試合の話数が長い方が読み応えがあっていいのか、長いと飽きてきてしまうのか、わからないまま書いているので、不安ではありますが、今回は私の目安で書いてみます。何かご意見等ありましたら、よろしくお願いします!

それでは楽しんでいってください。

 仲本さんは圧倒的なドライブで築村を抜き去る。


「くそ!」


「遅えんだよ」


 そしてそのまま飛び上がり、レイアップシュートの体勢になった。


「止める」


 大滝が手を伸ばし、仲本さんの手のひらを叩くようにジャンプした。シュートブロックしたかに思われたその瞬間、仲本さんはシュートの手を一度下に下げ、大滝の手を躱わすようボールを持ち替えてもう一度腕を上げてシュートを決めた。


「ダブルクラッチ……」


 ダブルクラッチとはシュート技の一つで、空中でシュートを放つ際にディフェンスを避けるために、シュートを一度下げて、持ち手を変えてもう一度シュートを放つというもので、その全てを一瞬でしかも空中で行う必要があるため、高等テクニックと言える。それならボールを持ったまま一度着地してもう一度打てばいいではないかと思ったそこのあなた。いいところに気づくね。バスケのルールの中にトラベリングと呼ばれるルール違反が存在する。これはボールを持った状態で3歩以上歩いてはならないというルールである。そのためシュートを放つ際はいつも1、2で飛ぶ必要があるのだ。3歩目となる足を上げた時点で違反を取られてしまうので、注意が必要なのだが、これと何の関係があるのかというと、ボールを持った状態でジャンプし、何もせずボールを持ったまま着地するとトラベリングに該当してしまうのである。そのため、ボールを持ってシュートを放つために飛んだら、ボールはパス、シュート何でもいいので、手放さなければならないのだ。


「すげぇええ!!仲本先輩、ブザービーターの次はダブルクラッチだ!カッコ良すぎたろ!!」


 成旬ベンチの歓声と圧倒的な力の差で体育館は成旬高校一色になってしまっていた。


「試合展開だけじゃなくて、この雰囲気も疲れるっスね……」


「だな」


 相田と大滝も弱音を吐かずにはいられないようであった。やはり流れを変えられるプレーが必要だ。そのためには仲本さんを抑えないといけない。きっとこの試合の勝敗を分けるのは仲本さんをいかに抑えられるかなんだ。

 俺は仲本さんにスクリーンをかける。


「なに!?スクリーンかよ。松本!カバー頼む!!」


「任せよ」


 そして築村をフリーにし、相田から築村へとボールが渡る。築村と松本の1on1となった。しかし、うちの築村もやはりその実力は本物であり、鉄壁のディフェンスを誇っていた松本をいとも簡単に抜き去ってしまった。


「なんと!?」


「お返しだ!!」


 築村がジャンプし、ダンクの体勢に入る。若林さんが止まるために飛んだが、そのディフェンスをものともせず、叩き込んだ。


「どうだ!!」


「あの築村とかいう子、なんで賀晴高校なんかにいるんだろうね。元々あったポテンシャルが仲本とのマッチアップの中で覚醒しつつある。松本のディフェンスは全国に通じるレベルだと自負している。それをあっさりと抜いてしまうなんて。あの実力は磨けば全国レベルになりかねないね」


 東堂さんは大量の汗を流しながら、試合を見守る。


「(私だって!)」


 木山さんは谷村さんが出したパスを見事にカットし、そのままフルドライブで駆け上がる。ゴール前には上野くんが戻っていた。


「(どうする?パス?いや、4人の男共も結構やりたい放題やってるし、私は私のやりたいようにやるわよ!!)」


 木山は上野くんを抜き去り、レイアップシュートを決めた。


「やった!」


「木山さん、ナイッシューっス!」


 さっきの築村のダンクと木山さんのスティールからの速攻で少しずつ流れを呼び戻せてきているかもしれない。


「まだまだ!」


 俺は松本くんのドリブルをスティールする。それを見て築村が全速力で駆け上がる。俺はそれを見て、パスを出した。築村はボールをキャッチし、レイアップシュートを決めた。


「賀晴が連続ゴール……。第2Qで終わったかと思ってたのに、まだ死んでない!」


 成旬ベンチを黙らせることに成功した。


「流れはこっちに来るぅ!気を抜くなぁ!!」


 玉置先生も声を張り上げて俺たちに声をかける。


「なかなかやるなお前たち。まさかこんな厄介なチームが同じ県内で発足するとはな。これは県大会出場も楽にとはいかなくなりそうだな」


 若林さんが木山さんに声をかける。木山さんは何も言わずに、アッカンベーをした。


「ふん、じゃじゃ馬娘が。こっちだ!」


 若林さんがパスを要求する。そしてパワードリブルで木山さんを押し除け、シュートを決めた。


「よし!」


「痛ったー」


 木山さんが尻餅をついていたので、手を差し伸べた。


「大丈夫?」


「ありがとう」


「悪いけど、賀晴の穴を見つけちゃったかもね」


 東堂さんが不気味に笑う。それからは若林さんにボールが回ることが多くなり、木山さんを集中的に狙い始めた。


「卑怯だとは思うけど、これぐらいしないと勝てないかもと思わせる君たちがすごいということだよ」


 東堂さんの作戦で体格でどうしても劣ってしまう木山さんを力でこじ開ける作戦のようである。


「あのクソジジイぃ!木山を狙い始めたのかぁ!タイムアウトだぁ!」


 玉置先生はすかさず、タイムアウトをとった。


「木山が狙われすぎてるな」


 築村が言う。


「うーん、恐らく相手は木山のフィジカルには対策がないと思っているぅ。そこを逆手に取るかぁ」


 玉置先生が木山さんに耳打ちした。

 そして再び若林さんにボールが渡り、木山さん強めの当たりを見せる。すると、木山さんはさっきとは比べものにならない程、吹き飛ばされた。そして審判が笛を吹く。


「成旬高校4番、オフェンスチャージング。賀晴ボール」


 オフェンスチャージングとはオフェンスのファウルであり、オフェンスが先回りして守っているディフェンスに対して無理矢理突っ込んでしまったりすると起こるファウルの一つである。ファウルが発生した場合は近くのラインからスローインで試合が再開する。


「かなり吹っ飛んだけど、大丈夫か?」


 俺もすかさず、木山さんに駆け寄る。


「うん!このぐらいなんてことない!」


 木山さんは立ち上がり、スローインを行う。相田にパスを出して、もう一度木山さんがボールをもらう。若林さんとの1対1の形となった。しかし、木山さんは果敢に攻め込む。そしてまた吹き飛ばされたことで審判が笛を吹く。


「ディフェンス成旬高校4番、プッシング。賀晴ボール」


 続いてプッシングとはディフェンスのファウルであり、ボールを持っている相手に対して、強めに押して進行を妨げたり、動きをよろめかしたり、突き飛ばしたりすると起こるファウルで試合中に起こりやすいファウルの一つと言える。審判の見え方で押したつもりはなくても取られるということもあるので注意が必要である。

 またファウルは選手一人当たり、5回までとなっており、5回目を叩き出してしまうと、退場となってしまう。これで若林さんは2個目のファウルを取ったことになる。

 ちなみにファウルは個人的にカウントされるものと、チームファウルとしてチーム全体でカウントされるものがあり、これはチーム全体でどれだけファウルをしたかをカウントするもので、これが5回溜まると、次からファウルが発生するたびに強制的にフリースローを相手に与えてしまう。

 フリースローとはシュートを打とうとした相手を邪魔してファウルを取られると発生するもので、フリースローラインから誰にも邪魔をされずにシュートを放つチャンスを与えられるものである。サッカーでいうところのPKにあたる。基本的には2回打つことができ、3Pシュートで起こってしまった場合は3回打つことができる。つまり邪魔されて入らなかったシュートを打たせてあげるチャンスである。フリースローでシュートを決めた場合は1回につき1点となる。2回とも成功させれば2点ということになる。


「これで若林キャプテンが2(ツー)ファウルだ!」


 成旬ベンチがどんどん青ざめていく。


「(まさか!あえて木山さんをぶつけさせてオーバーリアクションでファウルを取らせているのか!あわよくば若林の退場を狙って!!)それはまずいね」


 東堂さんが玉置先生の狙いに気づいたようであった。


「やはり玉置くん、君は只者じゃないね」


「木山さんこっちだ!」


 俺はパスをもらい、スリーを放つ。そして決めた。


「よし!まだまだ勝負はこれからだ!」


 続く。

今回は木山さんの活躍回だったかもしれませんね。木山さんはカッコよく、それでいて可愛くというキャラで描いていきたいです。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回もお楽しみに!!

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