第11Q Versus Seisyun Part 5
バーサス成旬高校、もう少し続きます。
ただ自分の中で大体1試合に使う話数が定まった気がします。果たして綾二たち賀晴は成旬を倒せるのか。
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
相田が木山さんにパスを出して試合が始まった。相変わらず俺は松本くんを振り切れないでいた。
「(全く振り切れない!どんなフェイクを入れても、すぐについてくる)」
スクリーンでのディフェンス外しも試みたが、松本くんにはそれも躱されてしまう。
選手が交代したことでマッチアップが変更となっていた。木山さんをマークするのは若林さんになっていた。いくらなんでも体格差がありすぎる。木山さんは築村にパスを出す。そして築村には仲本さんがついていた。
「さっきのプレー見てたぜ?お前がエースなんだろ?さぁこいよ」
「ちっ!ベラベラうるせぇよ!」
築村は一気に抜きにかかる。多分、さっきまでなら抜けていたのだろう。しかし、仲本さんの技量はその先にあり、築村のドライブを封じた。
「おいおい、その程度か?もっとこいよ」
「ふざけやがって!」
仲本さんはドリブルの一瞬の隙をついて、スティールした。
「はっ!止まって見えるぜ!速攻だ!!」
仲本さんのフルドライブで一気に攻め込まれ、そのままレイアップシュートを決められてしまった。
「仲本さん……やっぱり強いな。(完全に流れを持っていかれた。早くこのディフェンスを振り切って流れを呼び戻さないと!)」
「こっちだ!」
築村がもう一度、仲本さんとの1対1に挑む。
「(この野郎、次はブチ抜いてやる!)」
「(オラオラ、かかってきなさいよ!!)」
2人が睨み合う。
「(うちのポイントゲッターを完全に封じてきたのかぁ。東堂のジジイめぇ。相変わらず汚ねぇことしてくるぜぇ)」
俺と築村の様子を見ながら、玉置先生は思った。
「築村!こっちだ!」
大滝がパスを要求する。築村がワンバウンドで大滝にパスを出す。
「おお!センター対決!!」
成旬ベンチがまたしても盛り上がる。
「うおぉお!!」
大滝がパワードリブルで上野を押し込もうとするが、上野はビクともしない。
「(コイツ!堅い!全然押し込めない!!)」
「(藤崎にはあのディフェンスぅ、木山には体格差のあるマッチアップぅ、築村には向こうのエースがぁ、そして大滝には頑丈なセンター。勝ち筋を絶たれたかぁ。)」
「大滝くん!こっちに戻すっス!!」
相田がパスをもらい、シュートを決めた。
「(4人が苦しんでる今、僕が頑張らないと!)」
しかし、その後、攻め手を欠いている俺たちはどんどん点差を離されていった。これが県大会常連校の本当の実力だと言わんばかりのオフェンスとディフェンスに俺たちは完全に飲まれてしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
第2Qも残り3分、先生が俺にくれた時間は第2Q一杯。それまでに打開できなかったら、どうなるんだ?負けるってことなのか?51-29という点差、ここからひっくり返すには難しいのかもしれない。でも、負けたくない。勝ちたい。
「これで賀晴も終わりだね」
東堂さんが一息つくかのように水を飲んだ。
「まだ、終わってたまるか!!」
俺は相田目掛けて走り出す。そして相田の後ろを通る。その一瞬、相田が俺にボールを手渡す。松本くんとのディフェンスがほんの一瞬だけズレが生じている。だが、すぐに追いつかれるのだろう。だけど、スリーを打つなら問題ないはずだ。そして相田がそのままスクリーンの体勢で松本のズレの時間を稼ぐ。
「いくぞ!」
俺はスリーを放った。少し体勢は崩れてしまったシュートはリングに弾かれる。
「リバウンド!」
「うおおお!!!」
リバウンドを大滝が空中で掴む。
「(ここで決めなきゃ俺は足を引っ張ってるただのデカブツじゃないか!ここで決める!!)」
大滝はリバウンドをそのままダンクで押し込んだ。
「戻れ戻れ!!」
大滝が叫びながら駆け抜ける。
本当なら自分の力で松本くんをどうにかしたいが、きっと今の実力差でそれは難しいのだろう。なら、今は仲間の力を使ってこの状況を突破するんだ。俺は仲間たちとこの試合に勝つ。
「(点差はある。落ち着いて攻めていこう)一本!」
谷村さんが指を立てる。
「谷村さん!こっちだ!」
仲本さんがボールを要求する。
「はてさて、俺様に勝てるかな?」
仲本さんが築村を挑発する。
「本当によく喋るやつだなお前。そんなに喋ってるとそのうち舌噛むぜ!」
仲本さんのドリブルをスティールした。
「速攻だ!お前らささっとこい!!」
俺は全速力でダッシュした。このダッシュのおかげで俺は打開策を少し見つけることができたかもしれない。そう松本くんでは俺のダッシュに追いつけないのだ。止まっている時は守れてもコートを全体を駆け抜けるとなるとスピードが足りないんだ。
「いかせるか!」
上野くんが立ち塞がる。
「築村!こっちだ!」
俺は松本くんをスピードで振り切り、パスを要求する。そしてパスを受け取り、俺のドライブで上野くんを抜き去った。そしてレイアップシュートを決める。
「俺の思った通りお前らはできる奴だぁ!反撃だぁ!!(いやぁ焦った焦ったぁ。マジでこのまま第2Qでストレート負けかと思ったぜぇ。あいつら試合の中で成長し始めてるなぁ。これからが楽しみだぁ)」
玉置先生は汗を拭う。
「まずいね……。松本が攻略され始めているね。しかし、まさかスピード勝負で破ってくるとは……。なんとも強引だね。彼は」
東堂さんに再び焦りの色が見え始める。
今度は木山さんがパスカットし、速攻となった。
「木山さん!こっちだ!」
俺は3Pラインでボールをもらい、シュートを放つ。そして決めた。
「またスリー!!」
成旬ベンチからも焦りの声が聞こえる。
「今の成旬の鉄壁の守りをセットオフェンスで崩すの難しいだろうぅ。破る方法は速攻によるラン&ガンだなぁ」
しかし、成旬の攻撃はやはり強力でこっちが速攻で攻めても、すぐに仲本さんや上野くん、若林さんの主力砲によって点差を広げられてしまう。
「これで第2Qは幕閉じだぜ!」
そう言って仲本くんはスリーを決めた。決まったと同時に第2Q終了のブザーが鳴った。
「仲本さんのブザービーターだ!!かっけぇ!!」
成旬ベンチが大盛り上がりのまま、第2Qが終了し、やはり流れを奪われたままとなってしまった。
ちなみにブザービーターとは終了時間がゼロになり、ブザーがなる直前にゴールを決め、まるで決まったシュートがブザーを鳴らしたかのような様からそう言われるようになったらしい。ちなみにそんなバスケドラマがあったような……。
第2Qから第3Qの間をハーフタイムと呼び、この時間は10分間の休憩となる。大会などであれば、次の試合を行うチームが練習を行なったりする時間となる。
「仲本さんかっこよかったです!」
「おお、そうだろうそうだろう!」
「お前は調子乗りすぎだ、馬鹿者!」
若林さんが仲本さんにゲンコツを入れる。
「痛ってぇな!何すんだよオッサン!!」
「オッサンじゃない!部長と呼べ!!」
成旬ベンチは依然として大盛り上がりであった。一方で俺たちのベンチは殺伐としていた。
「成旬、強すぎ……」
俺はパイプ椅子にもたれかかる。
点差は66-36と30点もの差がつけられてしまった。このまま折り返しても勝てるかはわからないけど、諦めるのだけはダメだ。
俺は立ち上がり、外のウォータークーラーへと向かった。
「あー、成旬、マジで強いな……」
俺が水を飲みながらぐったりしていると、声が聞こえてきた。
「あ、藤崎君だ!」
「え?川端さん?」
声の主は川端さんであった。
「どうしてここに?」
「今日はダンス部の練習なんだっ。すごい汗だけど、藤崎くんは?」
「今日は他校との練習試合なんだ」
試合と聞いて川端さんの目がキラキラと輝いた。一体どうしてなのだろうか。
「へぇー!試合なんだ!なんかいいねそういうの」
「どうして?」
「うーん、上手く言えないけど、青春って感じがしてかな?」
「なにそれ」
ふっと笑ってしまった。
「もうなんで笑うのよー!」
「だって意味わかんなくて」
「えー!意味わかんなくないよー!」
そんな感じで川端さんと話しているとハーフタイムはあっという間に終わりを迎えようとしていた。
「俺そろそろ行かないと」
「頑張ってね!」
「おう!」
体育館に戻って、第3Qに向けて準備をする。
「お前ら集まれぇ。30点差はそう簡単にひっくり返せる数字ではねぇ。けどぉ、諦めるには勿体ない数字でもあるぅ。後半戦気張っていくぞぉ!」
「「「「おー!!」」」」
築村は黙ったまま頭を掻いていた。
そしてコートに戻り、試合を再開させる。第3Qは成旬のオフェンスから幕を開ける。先生の言った通り、諦めるのはまだ早い。
「ディフェンス、一本!」
俺は声を張り上げた。
続く。
私が選手だった頃、監督は素人でやったこともない人が監督だったので、この人は何をしているんだろうって尊敬の念を欠いていた気がしますが、自分が大人になって思うのは監督は相手の監督や目に見えないものと闘っていたのかなと思います。くだらない話をすいません。
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!




