83話 友人が居たからね ④
この時期は、濃密だった。
仕事も学業も恋愛も友情も、諦めていた幼い心だったそれ以前を、補うかのような大変だけれど充実した日々だった。
血の縁から離れられたのも大きかったのだろう。
そんな毎日忙しくしている時でさえ、「不思議」は身近にやってきた。
学生時代、その彼女が泊まりにきた時だ。
その頃、仕事をしながら学生をしていて、いつだって眠かった。
夜も遅かった。
話していてうつらうつらとしていたら、横に傾いだ顔のコメカミの辺りだろうか、豆粒くらいの小さな物が当たる感触と
「△×○※Π!!」
何を言っているか分からない、小さな早口の、でも怒鳴るような声が耳元に聞こえた。
ビクッ!
と飛び起きる。
そんな我を見て彼女は笑って言った。
「今ね、本棚の上から小人が○○ちゃんの耳元に飛び降りてね、「おい!起きろ!」って言ってたんだよ~」
そんな事を日常的に言う人だった。
昔、プラスチックのひも状のものを爪でこすりながら引っ張ると、音の出るオモチャ?があったのを知っているだろうか。
それを素早く引っぱった感じと言えば分かる人がいるだろうか。




