77話 お寺で卒塔婆が大活躍
子供のイタズラというのは、知的好奇心であり悪意はないものだ。
なので、バチ大当たりな事をしたかも知れないが、本人は至って真面目にお墓に「いただきます」と礼をして集めたので、実は未だに死者への冒涜とかは思っていないのだ。
幼稚園は寺の敷地にあり、我は酷い悪戯小僧で墓を荒らしまくっていた。(と思われていた)
卒塔婆は秘密基地の小屋の制作にうってつけで、100本単位で抜いて、ビニールシートや壊れた傘の布の部分を使って、雨が降っても水が入らない高床式の小さな三角の小屋を作った。
そこでは気持ちよく寝れた。
幼稚園が終わってから小屋に行く分には良かったのだろうが、昼寝の時間に抜け出して、そこで寝ていたから大騒ぎになった。
捜索され、小屋が見付かり急遽に護摩壇が出来て焼きつくされてしまった。
小屋の中は細波のような小さなたくさんの話声が温かく、それに包まれて寝るのがとても好きだった。
その寺の幼稚園には足の悪い子がいて、いつも階段で躓いていた。
転ぶたびに先生に怒られているので緊張して、どんどんギクシャクした歩き方で転ぶのが多くなった。
たった5段ほどの小さな階段だったが、確かに大きな石で一段一段が高く幼児には大変な高さだった。
その日も転んで先生に怒られていた。
「なんで、毎日毎日同じ失敗をするの?!」
と怒鳴る先生に
「お坊さんが、足を引っ張るの」
と言って泣いていた。
そんな嘘ばかり言ってと、また怒り出していたが。
それを見ていた子が
「私も見たことがある」
と言った。
「階段の横にお坊さんが座っているの。嫌なお顔で笑っているの」
しかし、我等はそれを先生に言う勇気もなく、居た堪れない思いでその場にいた。
その後、その子と階段に卒塔婆でスロープを作ったが、さっさと壊され大目玉をくらった。
子供心に思った。
「解せぬ」
卒塔婆で作られた小屋の中は、小さなサワサワとした声たちに包まれて、とても安らかに眠りにつけた。
霊感があったなら、別の意見を聞いたかもしれないが、霊感も恐れもない子供の我には、とても居心地のいい空間だった。




