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あやし百話  作者: くろたえ


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76話 魂の抜ける場所 そして、黒不浄

魂が抜けた時のレクチャーを受けた。


それが役に立つのか、そうではないのか、いつまでも判らない方が良い。

魂の抜け方にも場所があるそうだ。

やっぱりアンテナが強力な友人から教えてもらった。


蝉の脱皮の様に背中から上に体を離れるのは、天に召されようとしている。

上からの意思が無ければまずムリだ。

諦めろ。


仰向けに寝ていて起き上がるようなのは、爪先がつながっているから、運がよければ戻れる。頑張れ!



深夜、外を歩いていると幽体離脱している人に会うが、足先が細く伸びている。

体とつながっているんだと思う。


その人が通った後には細い筋がついているそうだ。



なら、遠くから来た幽体離脱は下半身が伸びきっちゃって、上半身しかないとか?

と聞いたら、毛糸のヌイグルミじゃないんだからと笑われた。



「一度だけ気持ちの悪い物を見たことがある」と少しの沈黙の後話し出した。


遠い親戚の男性が病院で亡くなる時、親戚と言っても結婚式と葬式くらいしか見たことのない男性だったが、その時の自分は大学生で一番、体の自由が利いて車も持っていたから、病院への家族の送り迎えや、荷物や洗濯物の届けなどに駆り出されていた。


ある病気で男は始終痛みに苦しみ、何度も「殺してくれ」と叫んでいた。

医者も首をかしげるほどだった。

痛みが始まった初期の段階から麻酔も、ちゃんと打ってはいるのだが、ずっと苦しんでいる。

親しくはない親戚ではあったが、苦しみ続ける男性を憐れんで、背後霊にこの人の苦しみを終わらせることは出来ないだろうか。とコンタクトを取ってみた。


コンタクトを取ろうと目を瞑った瞬間に、大きな白い両の手の平が彼を突き飛ばした。

実際、椅子から転げ落ちるほどの衝撃だった。


そして、病気の男が死ぬまで彼の霊感は奪われてしまった。


男が死ぬ瞬間、霊感が戻った。

そして嫌なものを見せつけられる。


ドアや窓の隙間や、隙間もない天井や床、壁から黒いモノがにじみ出て、大きな黒い塊になって待っていた。

そんで、死んで自由になって浮き上がり魂の姿の男が安堵の表情を浮かべた時に、バクンと飲み込んだ。男は驚愕の表情をしながら黒い塊と共に床に沈み込んで消えた。

男の死に顔は穏やかだったが、実際の魂は多分地獄へ直行しただろう。


男は、当時は珍しかった密葬で静かに家族だけで送られた。


家族は(奥さんと小さい子供が二人いたようだ)、親戚に何も言わずに引っ越したらしい。


「その親戚男性は何をしたの?」


「判らない。豪邸住んでいた。持ち物も、高級ブランドばかりだった。

奥さんも俺の中古の車じゃなくて、何でタクシー使わないんだろうって思っていた。

もしかしたら、病室に1人で行くのが怖かったのかもな。親に聞いても、奴のやっていることは判らん。

でも、金持ちだからと言って、何かを貰ったりするな。とは言われていたよ」


「亡くなってからは、何の音沙汰なし?」


「亡くなってから10日後くらいに、奥さんから二か月間、週に一、二回、病院へ運んでいた俺へのお礼ってことで、現金百万円と形見の腕時計を貰ったよ」


「すごいね。大金じゃん」


「でもさ、家に帰って親父に言ったら、その金は、そのまんま神社に寄付しろ。

腕時計は売っぱらえ。その金は自由にしていいって。

神社の神主さんはびっくりしていたけれど、訳を話したら、厄払いにお金を落として拾った方に厄が憑く。というのがあるので、それを心配したんじゃないかって。

厄除けのお祓いして、腕時計は120万で売れた。

ビジネス英会話教室の学費払って、と友達たくさん呼んで、「宝くじ30万当たった」って焼肉パーティーして使い切った。

多分、物としちゃ残しちゃいけないような気がした」


「神社で厄払いできたんだ?亡くなってすぐってことは、黒不浄じゃん」

(神社では死を穢れ(黒不浄)として、境内に入るのも嫌がられる。なので、鳥居をくぐらない。などの作法がある)


「忌中で駄目なのは、3親等までの続柄だけれど、死期に近づきすぎたから、神社でもいろいろ電話とかして確認していたよ。そんで、念入りにやってもらった」


「もし、その百万円、持っていたらどうなったのかなぁ?」


「さあ?持っていることを家族に心配されたり、不安に思うよりかは寄付して良かったよ。友達の間でも器のデカい奴ってウケが良かったし。十分いい思いはさせてもらった」


そう晴れやかに笑った。


そして、少し真面目な顔になり


「もし、そのお金を持っていたらね、種銭たねせんになって、他にもお金を呼んだかな。

それも、誰かが不幸になって自分にお金が回るような増え方。多分、地獄から迎えが来るような、酷い人間になったかもね」



彼の今の言葉と、男が死んだときの説明で、映画「ゴースト ニューヨークの幻」の悪者が死んだときにトゲトゲした黒い何かに魂が連れ去られるのを思い出した。



そうか、地獄というのは、死者にも、生者にも寄ってくるものなんだな。


と妙に納得した。



「黒不浄」とは忌中の事です。

けがれを嫌う神聖な場所が神社なので、良く受け入れてもらったな。と思いました。


お寺なら死を穢れとはしないので、ガッシガシに加持とか祈祷を受けられたのではと思うが、彼の家が神道系だったのかもな。

と思い直した。

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― 新着の感想 ―
[一言] あーあの映画!となり思い出しました が、怖いですね…… でも納得できる気もします。 怖いけれど因果応報と言いますか、なにか理由があるのかもしれませんね。 その理由もなんだか怖そうです。
[良い点] 怖いといえば怖いんですが、それだけでなく、何かすごい深みがあるお話で、何度も拝読してしまいました。 [一言] お友達の霊感が奪われたくだり…… 背後霊でさえ、その親戚の方を見捨てていたとい…
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