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あやし百話  作者: くろたえ


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54話 未消化な祖母の話

狐の嫁入りか、それに似た類の行列。


それを見る祖母の目は、我の想像の目となる。


祖母の幼いころの話しである。


幾つぐらいとは聞かなかったが、6歳くらいの祖母の姿を想像した。



夕方の山道は日暮れが早く、あっという間に暗くなってしまった。


祖母は自分より二つ三つ幼い近所の男の子を連れて帰る最中だった。


心細さはあっても、田舎の昔の子供である。


怖いとまでは思わずに山道を急いでいた。


T字路が近づいた時、祖母はまっすぐ行こうとしている。


横に伸びる道の突き当りは道沿いの木々の奥は緩やかな崖である。

そこの道に、静かな人の行列が来ていた。


人々は、なんとなく顔が見えず、数人おきに提灯があるが、妙に暗い光だった。


男性は羽織袴で、女性も着物のシルエットだったので、葬式か嫁入り道中のようだった。


彼らはたくさん居るにも関わらず誰も声を発さず、祖母にも気を向けず、T字路の突き当りまで進んだ。


そのまま行くと、根元で二股になっている木を跨いで、消えた。


次の人も、その次の人も、次々と静かに、木の股を女性は着物の裾を少し上げて跨いでは消えた。


10人か20人かいたかねぇ。

それが皆黙って、木を跨いでは消えていくんだよ。

女の人は、白い足袋とふくらはぎも少し見えていたよ。

狐の嫁入りとか、そんなもんだったのかねぇ。


そんな話を聞いた。


その話を聞いたのは、我が5歳くらいの頃か。

我の中で、何度もその話が頭の中を回っていたのだろうか、その映像が出た。


いつからか不明だが、その光景を我は映像に出来るくらい具体的に想像していた。

まるで、我が祖母になったかのように。

時折あった。


祖母の話がリアルに自分経験のように感じられることが。



友人に言われた言葉が残っている。


「お前はさ、お婆さんの生まれ変わりなんだよ。いや、もしかしたら、お婆さんがお前の生まれ変わりなのかもな」


我「何を言っている。生きている時間がダブっているよ」


彼には祖母の不思議な話とか全くせず、単に小さい頃は祖母の家で育ったと言っただけだった。

知り合ったばかりで、我の昔のことなど、話してもいなかった。


彼は沖縄に行ったら、帰れなくなると両親から言われているくらい霊感があるとかは聞いたことがある。

(憑りつかれて、でなく、神様の使いをするために、沖縄から出られなくなるそうだ)


霊感はあるのだとしても、生まれ変わりでカブっているのは、怖い話を好んで集めてる我でも聞いたことがなかった。


「今の時代だけじゃないんだ。いくつもの時代や世界が色んな方向に流れているんだ。

だから、そんな事もわずかではあるが起こるんだ。

お前の魂は、お婆さんのクリーニングした後の魂なんだと思うよ」


そうは言われても、何も言えなかった。


祖母はどんな人だったのだろう。

学や知識はなくても、思慮深い人だった。

厳しく、甘くない優しさのある人だった。

そして、たぶん凄く苦労をした人だ。


何も言いようがない。答えも出ない。正解が出ないからな。



友「どう思う?」


我「うーーん。

自分でわかっても、証拠を出せずに信じてもらおうとしている霊能力者は大変だな。と」


友 「いや、そうじゃないよ。俺のことじゃなくて生まれ変わりだよ」


我 「ええ~。どうも言えない。おこがましい。恐れ多い。そんな感じ」


友 「聞いて納得する感覚はないのか?」


我 「誘導されている気がするから、その感覚が信じられません」


友 「ああ、うん。なんか、お前って、そういうヤツだよね」


そういうって、どういうだよ。と思ったが、黙っていた。


別の霊感のある。というか不思議な力に翻弄されている友人も、たくさんの世界があって、力のコントロールができない時は、自分がどの世界、時代に居るのか分からなくなる。

と言っていた。


まあ、そんな力のない我には、何を言われても解りはしないのだが、6歳の祖母である我が、年下の子の手をつないで、大きな木の股を跨いでは消える人の列をぼんやりと見ているのだ。


そんな、未消化な祖母の不思議な話。


祖母は我が10歳の頃に他界してしまったが、たとえ短い期間だったとしても同じ魂が、姿を変え共に居る事は可能なのだろうか。


そんな話を聞いたことのある人は、教えてほしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人は深層ですべての人と継っていると言います 近い人であれば影響も大きいと思います おばあさんや作者殿の世界は、 半分幽世で暮らしているような感じかします ある程度混ざるのもアリだと思います。…
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