42話 竹林での忘却
母屋と離れの間は、手入れのされた竹林があった。
竹林の中に、不思議とタケノコの生えてこない円形の隙間があった。
フェアリーサークルというのが存在して、キノコの菌糸が丸く広がって、
そのなかの植物を枯らすという。
きっとそれだったのだろう。
高校生の頃、祖父母の家に法事で行く。
所在無く、昔自分が住んでた離れを見に行った。
母屋と離れの間に竹林があり、ぼんやりとソコを眺めながら
「ああ。もう、ここには居ないんだな」
と確信し、次の瞬間
「何が居ないの?」
と思ったが、その「何」かは分からず。
そして24歳のとき、あのときの「何」を思い出す。
夜、湯船に浸かっていた時に。
仕事が久しぶりに早く終わり、湯船に入った。
身体をうーーんと伸ばし、湯船の縁に後頭部を置き、ほげ~と全身の力を抜いていた。
その時だった。
思い出したのは。
それは、小学の4年生の秋の夕方だった。
赤い夕日が差し込む中、竹林の少し開けた場所で60センチくらいの茶褐色のナニかが5匹(人?)輪になってゆらゆら踊っていた。
二足歩行。
長い手足で裸。
蟻を擬人化したような姿で色が違えば宇宙人のリトルグレイ。
マジです。
ただ目も含めた、肌質(?)は硬そうで木か石のよう。
なので蟻っぽいのかな?
その前後は思い出せない。
どのように見つけたのか、それから、どう帰ったのかは分からない。
我の立っていた場所は母屋から離れの小道で竹林はそのすぐ脇。
ナニかが踊っていた場所からは5メートルほど。
その前も、その後も、ナゼかその開けた場所に目がいくが、思い出すことも、他に不思議な出来事にあうこともなかった。
妖精とか妖怪とかそんなモノだったのだろうか。
大人になった理性では、竹林の不毛の円の正体は菌類によるものだとは思っている。
しかし、その反対の可能性も思い続けている。
それは無意識にではあるが、常に行き来に小道を通るたびに、そこの円を確認せずにはいられなかったからである。




