37話 了解を得らないといけないモノ
その場所は、決して治安が良い場所ではなかったし、前の住人はインド人で、その後は何年も空室だった。
しかし、駅から近い立地の良い場所だった。
汚い部屋だった。
暗い部屋だった。
しかし、我らはそこに住むしかなかった。
以前の業種では引っ越しが多く、時折、幽かなものが共存か自分の居場所を守るためか、存在を示したことがあった。
引っ越し数日後、我は自室の本が入らずに部屋ができてないので、リビングにお布団を敷いて寝ていた。
当時の同棲していた男性は、既に部屋が出来ていてソチラで寝ている。
新居で寝始めて4日目からのこと。
寝ていると、男性の部屋の奥の引き戸が開く音が聞こえ、ギシギシと人が来てドアの開く気配がする。
彼氏か?と思うが眠くて動けない。
その人は我の枕元に積み上げられている、コンテナ超しにこちらを見ている気配がする。
何で何も言わないのかしら?
なんで見ているのだろう?
眠くて動けない。眠くて動けない。
さて、本当に眠いからだけかな?
考えても動けない。
ああ、金縛りなのかしら?
直後、夢に引き込まれた。
その部屋に我だけ住んでいる。
猫を飼っている。
(飼いたい)メインクーン種(毛長でがっちり体型)の黒っぽい猫。
名前は決まっていてメトセラ。飼ったらつけたいと思っている候補の一つ。
そこに、玄関に一匹の白い猫が現れ(コレもメイクーン)飼う事にする。
「お前は白いから「白檀」だよ~」
と名前をつけた。
そして言った。言いたくないし、この猫は好きじゃないなぁと思いつつ夢は意思を無視し進行する。
口は勝手に動く。
「これから一緒に住むんだよ。ここで一緒に居るんだよ」
白い猫は、にんまり笑ったようで嫌だった。
ってな夢を2、3日おきに猫から子供やドードー鳥、犬、フェレットに姿を変えた。
ちなみに、彼氏の部屋の奥には引き戸はない。
毎夜、ソレは彼氏の部屋から出てくるが、あるはずのない部屋の奥の扉を開けてくる。
我の行動は決まっていて、使う言葉も同じだ。
黒いモノを最初に飼っていて、その後白いモノを自分の行動で引き入れる。
名前のセンスは微妙に自分に近く、それがまた、我自身が侵食されてきているのかと、恐怖を感じる。
「一緒に住むんだよ。一緒に居るんだよ」
何度か見ていると、見ているときも「夢」と気づく。
それなりに「何か」の意思を感じ焦る。
勝手に夢が進む中で思った。
焦っても、やはり体は勝手に今までと同じ夢をなぞる。
(この家には何かがいる~~!!!)
(…あ。大昔、そんな歌があったなぁ~。あ、90年代ディスコ音楽のデッドアライブのサムシングインマイハウスだ!)
ぷぷっ。
思わず吹き出す。
うぷぷぷっっ~!!!
想像したら笑っちゃって、初めて夢の括りから出れた。
はっ!
身体が動く!
がばっと飛び起き、
「お前など、いらないっ!出て行け!」
夜中に大声で叫ぶ。
叫んだ次の瞬間、スッキリして寝た。
以来、夢は見ていない。
その前にもあったのだが、昔、引越したばかりの時に、前の部屋で廊下に佇む女を夢に何度か見た。
何事も馴染むまでは時間がかかるのだろう。
しばらく人の住んでいなかった部屋である。
人が引っ越してきて、「何か」は自分の存在する場所を守ろうとしたのか。
しかし人が環境に馴染んでしまえば、そのような幽かな存在は、押されて出されるしか、ないのだろうな。
人の同意を必要とする、妖の様な物が居るのだろうか。
何度も何度も夢で我を操り、「一緒に住むんだよ」と言わせたモノ。
今から思うと、物入の小さな場所くらいなら貸してやっても良かったが、最初から我を取り込んで、言質を取り続けたのが気持ち悪い。
夢の世界では、あれだけ強固に自由を奪ってくれたのに、あの拒絶の一言で消えてしまった。
あの変幻自在の何かは、本当の姿はどんなだったのだろうと思うこともあるが、あまり考えないようにしている。
どこにいて、どこから入ってくる変わらないからな。




