28話 練る
たとえば、思春期の女の子たちが集まり、集団ヒステリーを起こすとする。
その中に、居て、自分もまた多感な思春期の真っただ中で、彼女たちの言う像が形をもって見えてくる。
高校の頃、バイトで忙しかったが、少しだけ合気道部に所属していた。
その日は顧問も来ない日で、なんとなく皆でウダウダとしていた。
そのうちナゼか、コックリさん(ソレに類似したもの)をしようと誰かが言い出した。
3人で鉛筆を持って始め、我と数人は周りで見ていた。
他愛もない質問をしてから、しばらく経つと、
「遊ぼう」
とか
「家に行っても良い?」
など答えではなく欲求になってきて、その場がパニックになってきた。
こんな時、複数人が居る方が騒ぎやパニくる度合いが、大きくなる気がする。
泣く子などが出てくる中、なんとかコックリさんに帰ってもらう。
しかし、その場の恐怖心は消えてなかったのだろうか、部室の角に男の子の幽霊がいると言い出す子が出た。
部室内は悲鳴があがる。
そして、我以外の全員が、男の子を確認した。
最初は何も見えなかった。
そこで面白い物を見れた。
1人が指を指した時、その場所に陽炎のような、空気の歪み?を感じた。
そして、見えると言う人が、出るたびに空気は濃くなり、暗く澱んだ。
次第に小さな人影になる。
何人かは、具体的な像をあげる。
血が出ているよ。
交通事故で死んだって、言ってたじゃん。
そして出来上がる。
9歳くらいの怪我して血を流している男の子。
ほう。これは幽霊である。
上手く言えないのだが、人の言葉に誘導された念が形をとり、その場の望む姿になり、幽霊騒ぎになる。
そんな感じではないだろうか?
大体、コックリさんは何も起こらないと知りつつ、何か起これば面白いと思うものである。
そして自分の意思ではないと思いつつ、欲しい答えを無意識で、するのもではないだろうか?
鉛筆を握った、誰かが思ったのではないか?
コックリさんが、子供だったら怖いな。
子供だったら何て言うだろう?
そうして交通事故で死んだ少年像が浮き上がり、その場の全員に浸透する。
恐怖は伝染して加速して膨れ上がる。
出口を求める。
少年の姿はある意味、カタルシス未満。
正しい昇華は霊に対するものでなく、彼女達の納得。
なら、と持ってきた杖を(習っていた合気道では短刀や杖道も習っていた)影の上から打ち下ろす。
ターーーン!!!
うん。良い音♪
「帰ろ~」
で、終結。
なのに、1人が言った。
「大丈夫?○○(私の名)、足怪我とかしちゃうんじゃない?」
ああ、コレは足を怪我すれば良いと思っている。
そうなれば面白いと思っている。
「親戚がこういうの強い人だから、成仏できないか相談するよ」(大嘘)
丸く収まり皆帰る。
この時言ってはいけない言葉
「気をつけてね」
言ってしまうと、インプットされ「チョットした事」が起こりやすくなる。
帰り道何も無い所で転んだ、足を挫いた、包丁で指を切った。トカね。
連想すると思ったとおりになり、関連付けては、もうその人の中では「霊障」になってしまう。
その後は何事も無く済んだが、しばらく部室の空気が重かった。
さて、コレをどう取るか?
我だけ0感だった。コレが一番分かりやすい。
でも、確認が出来ないが考えてしまうのだ。
集団ヒステリーのような場面での幽霊の出現は、その場に居た人たちの念のような物が、一つに向かい練られて姿を現すのではないか?
彼女達には間違いなく心霊体験だったとしても、本当に男の子の幽霊がいたのでは無いのではないか?
「本当」の「幽霊」
まあ、だいたい、「幽霊」の話しで「本当」と、相反する言葉を使うのだから、考えても意味の無い事だよね。




